複合材料の発展は航空・宇宙関係をはじめ多くの産業分野に大きな貢献をしています。
メッキの分野でも、分散皮膜の研究が進められ、種々の特性を有するめっき皮膜が開発され、大きな成果を収めています。
複合(分散)メッキは分散材とマトリックスであるメッキ金属を選定し、種々の機能性表面を創製することが可能なことから、各国で活発な研究開発が行われています。
分散メッキ
分散メッキのマトリックスとしては種々のメッキ金属が研究されていますが、耐摩耗性を
目的としたものでは、ニッケルやコバルト及びそれらの合金が多い。
分散材にはダイヤモンドをはじめ炭化珪素、アルミナ、窒化ほう素等の硬質微粒子やPTFEのような潤滑性粒子が用いられています。
スルファミン酸浴から得られたNi-SiCの分散メッキではHV550前後の皮膜が得られます。
この分散メッキの引張強度はニッケルメッキに比べて約40%、降伏強度が70%増大し、伸び率はかなり低下します。
このNi-SiC分散メッキは自動車のエンジンシリンダーの内面メッキに利用され、硬質クロムより耐摩耗性に優れていると云われております。
マトリックスにコバルトを用いたケースでは、分散材にCr2O3を用いた例が報告されており、このものは高温(300~700℃)での耐摩耗性に優れており、航空機のエンジン部品に利用されております。
この皮膜は300℃以上で潤滑性のある酸化コバルト層が生成することと、Coが耐熱性のCo-Cr合金に変わるためと考えられます。
硬質のNi-W合金メッキ、そして分散材に炭化珪素を用いた、Ni-W-SiC複合メッキが航空機用のクロムメッキの代替メッキとして開発され、現在実機テストに入っています。
この皮膜の硬さは、メッキのままで皮膜硬度HV850前後ですが、600℃1時間の熱処理でHV1500に硬化し、各種摩耗試験の結果も硬質クロムメッキを上回る性能を示しています。
この他、クロムメッキをマトリックスとした分散メッキや油をマイクロカプセル化して分散材とした自己潤滑性分散メッキ等、さまざまな試みがなされており、今後、新しい応用例が増えて行くものと期待されます。
無電解ニッケルメッキ(Ni-P)をマトリックスとした分散メッキは、分散材に炭化珪素やダイヤモンド、テフロン(PTFE)を用いたものが実用化されており、研究室的には炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化タングステン等を分散したものが検討されています。
無電解ニッケルメッキの分散メッキ皮膜はNi-P皮膜の10倍以上の耐摩耗性を得ることができ、硬質クロムメッキと同等またはそれ以上の特性を有するものもあります。
このうち、テフロンを無電解ニッケルメッキに分散させたテフロン無電解複合メッキは自動車やエレクトロニクス、製紙関係部品の無潤滑のところに用いられて成果を上げており、ダイヤモンド分散メッキは切削工具や織物機械部品などに活用されています。
今後の動向
湿式による硬質メッキは硬質クロムメッキを中心として発展してきました。
最近の各産業分野における技術の進歩は、より性能に優れたメッキ皮膜を要求しています。このため耐摩耗性皮膜としてNi-SiC分散メッキが登場し、滑り性の改善として自己潤滑性メッキが実用化されました。
このように従来のクロムメッキに代わるメッキ皮膜が開発され、新しいメッキの分野を切り開き、新素材の出現によって失われためっきのシェアーを取り戻していくものと思われます。
また、クロムメッキは三価クロム浴への転換や皮膜特性の改善などによって、新しい発展が期待されています。
一方、ドライプロセスの分野ではTiCやTiN、ダイヤモンド、BNなどの超硬質皮膜が一般化されています。
これらの皮膜と湿式によるものでは、コスト的または装置的な制約から適用できる品物に制限があり、両者はそれなりに使い分けられています。
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