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【メッキ技能士直伝】メッキと環境問題の関係を理解する:RoHS・REACH規制への対応と最新の代替技術

  • 執筆者の写真: コネクション
    コネクション
  • 21 時間前
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人類は長い歴史の中で技術を発展させ、生活を豊かにしてきました。しかしその裏側では、環境負荷の増大や資源枯渇、有害物質による健康被害といった課題も同時に生まれています。


そのため世界各国では、地球環境を守りつつ持続可能な社会を実現するために、さまざまな環境規制が整備されてきました。代表的なものが RoHS指令 や REACH規則 です。


メッキ業界においても、これらの規制に対応した代替技術の開発や管理体制の強化が進んでいます。本記事では、主要な環境規制物質の特徴や毒性、そしてメッキ業界がどのように対応しているのかを解説します。


■INDEX■


2.1. RoHS指令

2.2. REACH規則

2.3. 日本における環境規制

3.1. 水銀

3.2. 六価クロム

3.3. 鉛

3.4. カドミウム

3.5. その他の物質

5.1. 水銀とメッキ

5.2. 六価クロムとメッキ

5.3. 鉛とメッキ

5.4. カドミウムとメッキ

5.5. その他の物質とメッキ



1. 技術と環境問題

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人類の歴史は、常に技術の発展とともに歩んできました。技術はあらゆる分野で人々の生活を支え、豊かにし、その後も飛躍的な発展を遂げてきました。


しかしその一方で、技術の進歩は地球環境に負の影響を与える側面も抱えています。例えば、化石燃料の消費に伴って二酸化炭素などの温室効果ガスが発生し、地球温暖化を引き起こしている CO₂問題 は代表的な環境課題です。また、多様な資源を大量に利用することで 資源枯渇のリスク を高め、さらに 廃棄物処理の問題 も深刻化しています。


さらに、一部の技術では人体や生態系に影響を及ぼし得る物質が使用されており、それが環境破壊や公害の原因となっている事例も少なくありません。本来、生活を豊かにするための技術が、結果として私たちの暮らす地球を住みにくくしてしまっては本末転倒です。


こうした問題を解決し、持続可能な地球環境を実現することは、今や人類共通の重要な使命と考えられています。そのため、世界中でさまざまな取り組みが進められており、技術革新によって環境負荷を軽減するための材料開発や、代替エネルギーの導入も活発化しています。新たな技術が、これまでの環境問題を解決する手段として活用されつつあるのです。


2. 世界および日本の主な環境規制

2.1. RoHS指令

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さまざまな環境問題に対処するため、世界各国では有害物質の使用を制限する環境規制が地球規模で制定されています。その代表的な規制のひとつが、EU(欧州連合)が電気・電子機器に含まれる特定有害物質を制限する RoHS指令 です。

RoHS指令は2006年に施行され、当初の規制対象物質は 水銀、六価クロム、鉛、カドミウム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE) の6物質でした。その後2011年の改正によりさらに規制が強化され、現在では フタル酸エステル類4物質(DEHP、BBP、DBP、DIBP) が追加され、合計10物質が規制対象となっています。

本記事でも、後ほどこれらの主要な規制物質について詳しく解説します。

RoHS指令に適合していない製品はEU域内で販売・流通させることができません。そのため、特にグローバル展開を行う企業にとっては、RoHS指令への対応は欠かせない重要事項となっています。


2.2. REACH規則

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RoHS指令が電気・電子機器における特定有害物質を対象とした規制であるのに対し、同じくEU(欧州連合)で制定された 化学物質の包括的な管理制度 が REACH規則 です。


RoHS指令が「電気・電子機器」という特定の製品カテゴリーと、規制対象として定められた限られた物質に対する“指令”であるのに対し、REACH規則は あらゆる製品 を対象とし、さらに ほぼすべての化学物質 を網羅する極めて広範囲な規制です。このため、REACH規則では化学物質の製造者や輸入者に対して、より強い責任が課されています。


たとえば、製造者や輸入者は取り扱う化学物質の特性や安全性に関する情報を収集し、欧州化学品庁(ECHA)に提出して登録する必要があります。また、特定の用途や濃度に対して制限が設けられている物質については、その条件を満たさない場合、EU域内での製造・販売・使用が認められません。


2.3. 日本における環境規制

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このような環境規制の動きは、EUだけの話ではなく、地球規模で取り組むべき課題 です。そのため、日本にとっても決して対岸の火事ではありません。


日本国内にも、RoHS指令やREACH規則と同じように、化学物質の使用や管理を規制する法律が複数存在します。


まず、RoHS指令に相当する国内法として 資源有効利用促進法(J-MOSS) があります。J-MOSSではテレビ、エアコン、冷蔵庫などの電気・電子製品において、RoHS指令と同様の6物質(水銀、六価クロム、鉛、カドミウム、ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテル)の含有情報を表示する制度が導入されています。


また、REACH規則のように化学物質そのものを管理・制限する仕組みとして、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律) や 化管法(化学物質排出把握管理促進法) が定められています。これらの法律により、環境や健康への影響が懸念される化学物質の製造・輸入・使用が厳格に管理されています。


さらに、職場における労働者の安全を確保するため、労働安全衛生法 では有害性の高い化学物質に対して管理基準が設けられています。加えて、極めて危険性の高い物質については 毒物及び劇物取締法 により厳重な取り扱いが義務付けられています。



3. メッキで関係する主な規制物質と毒性

3.1. 水銀

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RoHS指令をはじめとする環境規制で対象となっている物質には、人体や環境に重大な影響を及ぼすさまざまな毒性があります。ここでは、主要な規制物質(特に重金属類)について、その毒性と背景を解説します。


まずは 水銀 です。

水銀は 神経毒性が非常に高い 物質で、とくに有機水銀は体内に蓄積しやすく、いったん摂取すると排出されにくい特徴があります。体内に取り込まれると中枢神経系に障害を引き起こし、日本では水俣病の原因物質として広く知られています。


その危険性の高さから、RoHS指令だけでなく、国際的には 水俣条約 によって製造・使用・輸出入が厳格に規制されています。


3.2. 六価クロム

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六価クロム は非常に強い酸化力を持つ物質で、体内に取り込まれると DNAを損傷 することで細胞に深刻な影響を及ぼします。そのため、強い 発がん性 があることが知られており、現在では世界的に厳重な規制が行われています。


なお、名称は似ていますが、同じクロム化合物でも 三価クロム は毒性が低く、人体への影響も比較的少ないため、RoHS指令などでの規制対象とはなっていません。表面処理(めっき・アルマイト封孔など)でも三価クロムは広く使用されていますが、六価クロムとは性質が大きく異なります。


3.3. 鉛

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 は代表的な重金属の一つで、神経系や血液に深刻な影響を与える物質として知られています。体内に摂取されると、骨や血液中に蓄積 し、貧血、腎機能障害、消化器系の障害などを引き起こすことがあります。


特に子どもに対しては影響が深刻で、神経発達の遅れや知能低下、行動障害 を引き起こす可能性があります。そのため、鉛を含む製品や廃棄物の管理には厳重な注意が求められています。


3.4. カドミウム

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カドミウム は体内に蓄積されやすく、特に腎臓に蓄積して 腎機能障害 を引き起こす性質があります。さらに、骨のカルシウムを奪うため、骨軟化症や骨粗鬆症 の原因にもなります。


長期的に摂取すると、肺気腫や発がんリスク も高まるとされており、代表的な公害病である イタイイタイ病 の原因物質としても知られています。


3.5. その他の物質

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RoHS指令で規制されているその他の物質には、以下のようなものがあります。

  • ポリ臭化ビフェニル(PBB) や ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)プラスチック製品の難燃剤として使用されますが、ホルモン攪乱作用 や 神経毒性肝障害 などの健康影響が報告されています。


  • フタル酸エステル類塩化ビニル製品の可塑剤として使用されます。生殖毒性 があり、さらに 肝臓や腎臓への影響 も確認されています。


  • シアン化合物メッキなどで使用され、摂取すると 細胞が酸素を利用できなくなり、細胞内窒息状態 を引き起こす強い毒性を持っています。このため、シアン化合物は 毒物及び劇物取締法 により厳格に管理されています。



4. メッキと環境規制の関係

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メッキは、製品の表面に金属の皮膜を付着させる技術です。


この技術により、製品の耐食性を高めて寿命を延ばしたり、柔らかい素材の表面の硬度を向上させたり、素材に新たな機能を追加したり、見た目を美しくしたりと、さまざまな目的で活用されています。現代社会で流通している多くの製品にもメッキ技術が応用されており、現代の製造には欠かせない技術と言えます。


一方で、メッキ技術には化学的な作用を利用するものも多く、かつてはRoHS指令などで規制される重金属が使用されていた事例もありました。


現在では、メッキに関わるさまざまな技術や物質にも国内外で同様の規制が適用されています。また、地球環境を守りつつ技術を発展させたいという思いは、メッキ業界全体で共有されています。


そのため、現在のメッキ業者のほとんどは、規制物質に対して代替技術を活用するなどの対応を行っています。次の章では、代表的な取り組みについて詳しくご紹介します。



5. メッキ業界の主な環境対応と代替技術

5.1. 水銀とメッキ

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かつて、水銀は金や銀を溶解する性質(アマルガム)を利用してメッキに活用されていました。


具体的には、水銀に金を混ぜて塗布し、その後水銀を蒸発させて金を定着させる金アマルガム法です。この方法は、東大寺の大仏鋳造にも用いられたと言われています。


しかし、水銀はRoHS指令や水俣条約によって厳しく規制されており、現在ではこのアマルガム法はメッキ業界からほぼ姿を消しています。


現代では、金メッキや銀メッキは電気を利用する電解メッキや、化学還元を利用する無電解メッキによって行われるのが一般的です。


5.2. 六価クロムとメッキ

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メッキにおいてクロムを使用する技術には、クロムメッキクロメート処理の2種類があります。


まず、硬質クロムメッキや装飾クロムメッキなどのクロムメッキでは、処理液に六価クロムを使用する場合がありますが、最終的に製品の表面に析出するのは、毒性の低い金属クロム(ゼロ価)です。このため、製品表面自体は規制の対象にはなりません。ただし、処理液中に残留する六価クロムの管理は厳密に行う必要があります。


一方、クロメート処理は亜鉛メッキなどの後に表面に化成皮膜を形成し、耐食性を向上させる処理です。従来はこの処理で六価クロムが残留することがあり、規制の対象となっていました。


現在では、六価クロムの代わりに毒性の低い三価クロムを使用する技術が開発され、クロメート処理における代替が進んでいます。


5.3. 鉛とメッキ

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かつて、製品の耐食性やはんだ付け性を向上させる目的で、鉛メッキは広く使用されていました。しかし、現在では鉛メッキはほとんど使用されておらず、用途に応じた代替技術が開発・利用されています。


耐食性の向上には、同等の耐食性を持つニッケルメッキが代替として用いられています。


電子部品などで重要なはんだ付け性に関しては、従来主流であったスズ鉛合金(はんだ)メッキの代わりに、現在では鉛フリーの純スズメッキスズビスマス合金メッキが利用されています。ただし、純スズメッキはウィスカと呼ばれる針状の結晶が発生しやすく、電子回路の短絡を引き起こすリスクがあります。そのため、リフロー処理と呼ばれる熱処理を施す必要があります。


5.4. カドミウムとメッキ

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かつて、カドミウムメッキは高い耐食性や優れた潤滑性から、広く利用されていました。しかし現在では、亜鉛ニッケル合金メッキ無電解ニッケルメッキなど、カドミウムメッキ以上の耐食性を持つ代替技術が活用されています。


なお、カドミウムメッキは航空機部品や人命に関わる部品については規制の適用外となっている場合もあります。


5.5. その他の物質とメッキ

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ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテル、またフタル酸エステル系の4物質は、金属そのもののメッキ皮膜には含まれません。


しかし、メッキされた金属部品(コネクタや端子など)の周辺にある樹脂部品や副資材を介して、規制の対象となる場合があります。その点には注意が必要です。


一方、シアン化合物は多くのメッキ技術において、均一な電着性や密着性を実現するための錯化剤として使用されてきました。


現在では、シアンを含む廃液をアルカリ塩素法などで無毒化処理したり、シアン化合物を使用しないシアンフリーメッキを導入したりしています。


特にシアンフリーメッキは、メッキ工場の作業環境の安全性向上や排水処理コストの大幅削減に直結するため、今後も技術開発と普及が進むと考えられています。


6. まとめ

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本記事では、RoHS指令やREACH規則などの環境規制と、メッキ技術の関わりについて解説しました。ポイントは以下の通りです。

  • 技術の発展に伴い、地球環境への負荷も増加しています。現在では、RoHS指令やREACH規則などの環境規制により、有害物質の使用制限が地球規模で行われています。

  • メッキ業界もこれらの規制に対応しており、代替技術の開発と導入が進んでいます。

  • かつて、金や銀のメッキに水銀を利用するアマルガム法がありましたが、現在では使用されていません。

  • クロメート処理で使用されていた六価クロムは、毒性の低い三価クロムに置き換えられています。

  • 製品のはんだ付け性に利用されていたスズ鉛合金(はんだ)メッキもほとんど使われず、鉛フリーの純スズメッキやスズビスマス合金メッキが代替されています。

  • 高い耐食性を持つカドミウムメッキは、亜鉛ニッケル合金メッキや無電解ニッケルメッキなどに置き換えられています。

  • シアン化合物についても、廃液の無毒化処理やシアンフリーメッキの導入により、作業環境の安全性向上と排水処理コスト削減が進められています。

これらの取り組みによって、メッキ業界は環境規制に適合しつつ、安全で持続可能な技術発展を目指しています。



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1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。

30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。




 
 
 

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