ニッケルメッキ
ニッケルメッキ(電解ニッケルメッキ・電気ニッケルメッキ)とは、金属の表面にニッケルを電解析出させてメッキする電気メッキです。装飾性と機能性を兼ね備えたメッキとして、様々な分野で広く利用されています。
目次
2.1. 耐食性
2.2. 装飾性
2.3. 磁性
2.4. 硬度
3.1.膜厚のバラツキ
3.2.二次加工性
4.1. 鉄鋼
4.2. アルミニウム
4.3. 樹脂素材
6.1. 蛍光X線膜厚測定装置
6.2. デジタルマイクロメータ
1. ニッケルメッキの歴史
電気ニッケルメッキは、19世紀半ばにイギリスで発明されました。当初は装飾目的で使用されていましたが、20世紀に入ってからは耐食性や耐摩耗性などの機能性が評価されるようになり、自動車や航空機などの工業製品にも広く用いられるようになりました。
2. ニッケルメッキの利点
2.1 耐食性
ニッケルは錆びにくいため、電気ニッケルメッキは被メッキ物の腐食を防ぐ効果があります。特に、酸やアルカリなどの腐食性環境にさらされる製品には効果的です。
2.2 装飾性
電気ニッケルメッキは、光沢のある美しい仕上がりになります。そのため、装飾目的としても広く用いられています。
2.3 磁性
ニッケルは磁性体であるため、電気ニッケルメッキは被メッキ物に磁性を与えることができます。磁気記録媒体や磁石などの用途に用いられます。
ニッケルは硬い金属であるため、電気ニッケルメッキは被メッキ物の硬度を向上させることができます。工具や機械部品などの用途に用いられます
3. ニッケルメッキの欠点
3.1 膜厚のバラツキ
電気ニッケルメッキは、被メッキ物の形状や電流密度などの影響で、膜厚にばらつきが生じる場合があります。特に、複雑な形状の被メッキ物では、膜厚のばらつきが大きくなります。膜厚バラツキは、耐食性や耐摩耗性などの性能に影響を与える可能性があります。
3.2 二次加工性
電気ニッケルメッキは、硬い膜を形成するため、二次加工が難しい場合があります。例えば、曲げ加工や溶接加工を行うと、メッキ層が割れてしまう可能性があります。二次加工性を向上させるためには、メッキ後の熱処理などの対策が必要となる場合があります。
4. ニッケルメッキの工程
4.1 鉄鋼
脱脂→電解脱脂→酸中和→ニッケルメッキ
4.2 アルミニウム
脱脂→エッチング→スマット除去→亜鉛置換→亜鉛置換剥離→亜鉛置換→無電解ニッケル→ニッケルメッキ
4.3 樹脂材料
脱脂→エッチング→触媒付与→無電解ニッケル→ニッケルメッキ
5. ニッケルメッキの種類
5.1 無光沢ニッケルメッキ
無光沢ニッケルメッキは、光沢を抑えた落ち着いた仕上がりになる電気ニッケルメッキです。反射光を抑えるため、高級感を演出したり、光沢が目立つことを避けたい場合に使用されます。光沢ニッケルメッキよりも耐食性に優れています。
無光沢ニッケルめっき皮膜硬度HV200〜250程度
5.2 光沢ニッケルメッキ
光沢ニッケルメッキは、光沢のある美しい仕上がりになる電気ニッケルメッキです。装飾品や高級家電などに使用されます。耐食性は無光沢ニッケルメッキに比べ劣りますが、皮膜硬度が無光沢ニッケルに比べ硬い皮膜になります。
光沢ニッケルめっき皮膜硬度HV400〜500程度
5.3 黒色ニッケルメッキ
黒色ニッケルメッキは、外観性を目的とした電気ニッケルメッキです。
黒色の外観が得られ装飾性に優れています。
5.4 サテンニッケルメッキ
サテンニッケルメッキは、光沢と無光沢の中間の仕上がりになる電気ニッケルメッキです。落ち着いた光沢と高級感を演出したい場合に使用されます。
6. ニッケルメッキの膜厚測定
電気ニッケルメッキの膜厚は、メッキの品質を評価する上で重要な要素です。膜厚は用途によって異なりますが、一般的には数μm~数十μmが一般的な膜厚です。
膜厚は、電流密度やメッキ時間によって調整することができます。
電気ニッケルメッキの膜厚測定には、以下のような方法があります。
6.1 蛍光X線式膜厚測定装置
蛍光X線式厚さ試験方法とは、物質にX線を照射するとその物質中に含まれる元素に固有のX線が放射され、ニッケルメッキの膜厚を既知の試料との蛍光X線量を比較することによってニッケルメッキの膜厚を測定できる試験方法です。
金属、非金属上の比較的薄いニッケルメッキの膜厚測定に利用されます。
6.2 デジタルマイクロメーター
デジタルマイクロメーターによる試験方法とは、外径、内径などの寸法を測定できる精密測定機器で、ニッケルメッキ前・後の寸法の差を測定することでニッケルメッキの膜厚を測定する方法です。
板厚であれば表裏両面ニッケルメッキ分厚くなるため、片側のニッケルメッキの膜厚はトータル膜厚÷2で片側のニッケルメッキの膜厚を算出します。
7. JIS規格
JIS H8626は、鉄鋼及び非鉄金属素地上に工業用の目的で行ったニッケルめっき及び電鋳ニッケルの有効面について規定する。
注)耐食性、耐摩耗性、肉盛りなどに用いることを目的としたもの。ただし、耐食性を目的としためっきにおいても、そのめっき最小厚さがJIS H8617に規定する値の範囲内である場合には、その規格による。
注)この規格では電鋳ニッケル自体の品質についてだけ規定し、形状、寸法、精度、母型の材質、離型処理、離型性、転写性などの電鋳操作及び使用目的に関した特性については規定しない。