亜鉛めっき
亜鉛は電気化学的に鉄よりも卑な金属であるため、亜鉛メッキ製品では亜鉛が腐食の犠牲となり、鉄を守る働きをします。この性質により、亜鉛メッキは耐食性に優れ、鉄の腐食を防ぐ役割を果たします。
クロメート処理は亜鉛メッキ後の表面処理であり、さまざまな色合いを持ちます。一般的な色合いとしては黒や白、黄色などがあり、これらの色調は製品の外観や用途に合わせて選択されます。クロメート処理によって耐食性が向上し、美観も向上することから、装飾的な要素も考慮されます。
目次
1.1. 電気亜鉛メッキ
1.2. 溶融亜鉛メッキ
1.3. 亜鉛ーニッケル合金メッキ
2.1. 6価クロメート
2.2. 3価クロメート
3.1. 一般的な膜厚
3.2. 膜厚測定
1. 亜鉛メッキの種類
亜鉛メッキは、鋼板を錆から守るために有効な表面処理技術です。電気亜鉛メッキと溶融亜鉛メッキの2種類があり、それぞれメリットとデメリットがあります。用途や目的に合わせて、最適な方法を選択することが重要です。
1.1 電気亜鉛メッキ
亜鉛メッキ液にメッキを施したい製品を浸漬し、電流を流すことで亜鉛皮膜を形成する電気メッキです。メッキの膜厚は5~25μm程度と比較的薄く、滑らかな仕上がりになります。
寸法交差が厳しい製品に対し、交差範囲内に調整可能
電気亜鉛メッキの利点の一つは、めっき膜厚の精密なコントロールが可能であることです。これにより、寸法公差が厳しい製品に対しても、交差範囲内での調整が可能となります。
自己犠牲防食による防食性
犠牲防食作用により、製品の耐食性を向上させます。亜鉛は鉄よりも腐食しやすいため、傷がついた場合でも、亜鉛が先に腐食し、母材を保護します。この自己犠牲防食皮膜は、製品の寿命を延ばす重要な役割を果たします。
製品の変形が起きにくい
電気亜鉛メッキは、比較的低温で行われるため、処理中に製品が変形するリスクが低いです。これは、溶融亜鉛メッキと比較して大きな利点であり、特に熱に敏感な材料や薄い板材の処理に適しています。
溶融亜鉛メッキと耐食性を比較
電気亜鉛メッキの膜厚は溶融亜鉛メッキに比べて薄いため、長期間の耐食性においては劣る場合があります。特に、厳しい環境条件下や長期にわたる保護が必要な場合、溶融亜鉛メッキの方が適していることがあります。しかし、クロメート処理や3価クロム化成処理を施すことで、耐食性を向上させることが可能です。
穴の中にはメッキが付き周りにくい
電気亜鉛メッキは、電流の分布によってめっき膜の厚さが異なるため、穴の内側や隠れた部分にメッキが付きにくいという特性があります。これは、特に複雑な形状をした製品や内部に空洞がある製品の処理において、注意が必要です。
1.2 溶融亜鉛メッキ
溶融亜鉛メッキ(俗称:ドブメッキ、ドブ付け)は、鋼材を高温の溶融亜鉛に浸漬することで、亜鉛皮膜を形成する表面処理技術です。優れた防食性能と耐久性を持つことで知られており、様々な分野で広く使用されています。
亜鉛が代わりに腐食することで、素材を腐食から守ります。
溶融亜鉛メッキは、耐食性が優れており、鉄表面に亜鉛の皮膜を作り、空気や水分との接触を防ぐことによって、鉄を守る技術です。この溶融亜鉛メッキには、亜鉛皮膜の防食機能があり、コンクリート中でも通常の腐食環境と同様確実な効果を発揮することができます。
優れた密着性
溶融亜鉛メッキは、亜鉛と鉄の間の金属間にFe-Zn合金層が形成される事により、優れた密着性が得られます。
処理温度が高いため、製品の歪みに注意する必要があります。
熱による歪みが生じる可能性があります。これは、高温で溶かした亜鉛に鋼材を浸すため、加工物の重量や大きさに制限があります。また、熱による歪みが生じる場合があります
めっき膜厚測定から付着量を計算する。
溶融亜鉛めっきの付着量計算式 A=7.2×t
A:めっきの付着量(g/㎡)
7.2=めっき皮膜の密度(g/㎤)
t=めっき膜厚(μm)
めっき付着量より膜厚を計算する。
溶融亜鉛めっきの膜厚計算式 t=A÷7.2
t=めっき膜厚(μm)
A:めっきの付着量(g/㎡)
7.2=めっき皮膜の密度(g/㎤)
計算例;HDZ55 付着量550以上 t=550÷7.2≒76.38 膜厚76μm以上となります。
溶融亜鉛メッキの品質や試験方法はJIS H8641にて細かく決められております。
1.3 亜鉛ーニッケル合金メッキ
亜鉛ーニッケル合金メッキは、亜鉛とニッケルの合金メッキです。電気亜鉛メッキよりも高い耐食性と耐摩耗性に優れています。
2. 亜鉛メッキの後処理
亜鉛メッキは金属部品を保護するために広く使用されるプロセスであり、その後処理はメッキの耐久性や外観を向上させる重要な工程です。後処理は主に6価のクロメート処理および3価クロメート処理の処理方法に分類されます。以下ではそれぞれの後処理方法について詳細に説明します。
2.1 クロメート(6価)
クロメート処理は、亜鉛メッキ部品の耐食性を向上させるために広く使用されています。この処理は六価クロムイオンを含む溶液で行われ、部品表面に保護皮膜を形成します。この皮膜は耐食性を向上させるだけでなく、塗装の密着性も向上させます。
クロメートの種類としてはユニクロ、クロメート、黒色クロメート、緑色クロメートなどがあります。
2.2 クロメート(3価)
3価のクロメート処理は、環境への配慮から開発された方法であり、6価クロムを使用しない環境に優しい後処理方法です。
この処理は3価クロムイオンを含む溶液中で行われ、部品表面に皮膜を形成し、耐食性や外観を向上させます。
3価クロメートの種類としてはユニクロ、クロメート、黒色クロメートがあります。
呼び名は3価でも同じ呼び名ですが、クロメート色の色目が6価と3価で比べた場合に大きく異なります。
6価は黄色味の色目に対し、3価クロメートはユニクロに近い色目になりますので注意が必要です。
当社では6価クロムのクロメート処理(RoHS非対応)、3価クロムのクロメート処理(RoHS対応)どちらも選択頂くことが可能です。
6価クロムのクロメート処理の方が3価クロムのクロメート処理に比べ耐食性に優れております。
3. 亜鉛メッキの膜厚
亜鉛めっきの膜厚は、製品が使用される環境や条件によって異なります。
例えば、屋外で使用される製品は、屋内で使用される製品よりも厚い膜厚が必要です。
また、海水に浸される製品は、塩水に浸される製品よりも厚い膜厚が必要です。
JIS H8610やJIS H8641では、膜厚を平均膜厚と最小膜厚で規定しています。平均膜厚は、めっき皮膜全体の厚さを平均した値です。最小膜厚は、めっき皮膜の最も薄い部分の厚さです。
3.1 一般的な膜厚
亜鉛めっきの一般的な膜厚は、用途や製品の耐久性要求によって大きく異なります。例えば、建築材料や自動車部品など、長期間にわたって高い耐腐食性が求められる製品では、比較的厚い膜厚が要求されます。一方で、電子部品などの小さな部品や、短期間の使用が前提の製品では、薄い膜厚で十分な場合があります。
一般的な亜鉛めっきの膜厚は以下の通りです。
-
溶融亜鉛めっき: 50~85μm
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電気亜鉛めっき: 5~20μm
溶融亜鉛めっきは、電気亜鉛めっきよりも厚い膜厚を形成することができます。そのため、より過酷な環境で使用される製品に適しています。
3.2 膜厚の測定方法
亜鉛めっきの膜厚は、以下の方法で測定することができます。
磁気膜厚計、渦電流膜厚計、X線蛍光分析これらの方法は、それぞれ測定精度や適用範囲が異なります。
亜鉛めっき皮膜硬度
HV60~120
耐食性評価
塩水噴霧試験
注 表中の数値は/の前が白色生成物、/の後が赤さびの試験時間を示す。(単位時間)
亜鉛めっきにはクロメート処理を施します。黒色クロメートはK、緑色クロメートはG、光沢クロメートはB、
有色クロメートはCをめっきの記号の末尾に付けて表します。