金メッキ
金という素材は非常に貴重で高価な素材です。金の性質が必要な製品の場合、その部材すべてを金で製造することはとてもコストが掛かってしまい、実質的に不可能です。
金の見た目や性質は金メッキに任せ、中身をもっと安価で軽い物質にしておくことで、コストを抑えながら、求めたい特性は金メッキで求めることが可能です。
目次
1.1. 金とは
1.2. 金メッキとは
1.3. 金メッキの特徴
2.1. 装飾用途
2.2. 工業用途
3.1. 変色のメカニズム
3.2. 変色による影響と対策
4.1. 剥がれのメカニズム
4.2. 剥がれによる影響と対策
6.1. まとめ
6.2. 専門家へお問い合わせとご相談
1.金メッキとは
1.1.金とは
金は原子番号79、元素記号Auの元素で、人類の歴史でも古くから活用されている金属です。
言わずと知れた美しい黄金色の魅力は、時代を超えて人々を魅了し、装飾用の貴金属として歴史のさまざまな場面で登場します。
また、価値の高い金属として、古くから現在に至るまで、貨幣の代わりや投資の対象としても存在感を持った金属です。
金には工業的な価値もあります。熱伝導や電気伝導に非常に優れており、酸やアルカリなどの化学的な腐食にも強い性質があります。
このような性質から、医療やエレクトロニクスの分野では重宝されていますが、それ自体は非常に柔らかいため、ほとんどが合金として使用されています。
1.2.金メッキとは
メッキという技術は、金属の薄膜を他の金属に付着させて表面を覆う表面処理方法です。
製品によっては、表面の性質さえ満たしていれば中身の断面まではその金属である必要がないものも多く、そういった場合に用いられる技術です。
金という素材は非常に貴重で高価な素材です。金の性質が必要な製品の場合、その部材すべてを金で製造することはとてもコストが掛かってしまい、実質的に不可能です。金の見た目や性質は表面の薄膜に任せ、中身をもっと安価で軽い物質にしておくことで、大幅な経済性などの有意を得ることができるのです。
金メッキは電気を用いた電解メッキで行うことが多いですが、電極を用いずに化学の作用のみでメッキを行う無電解金メッキもあります。なお、似たような技術として、厚めの金の板を熱や圧力を用いて素材に貼り付ける金張りという方法もありますが、これは金メッキの種類には入りません。
1.3.金メッキの特徴
金メッキの基本的な特性は、金の特性と同じです。
金は化学的にとても安定で耐食性に優れ、錆びにくい物質です。
この金の性質が表面に付与され、表面で金属が錆びたりしないということで、素材の耐久性を増してくれます。
電気伝導性にも優れています。
金は銀に次いで電気をよく通す物質としても知られていますが、素材に電気的な性質を付与してくれます。
このような性質から、はんだ付け性やワイヤボンディング性といった特性も合わせ持っています。
また、熱伝導性にも優れた特性を示し、色々な優れた特性を持った金属ですが、金はとても柔らかく、表面の硬度や耐摩耗性には優れていません。
機械の摺動部のような他の部材と接する箇所への適用には向いておらず、そのような場合、硬質金メッキという硬度を持った金メッキを選択することになります。硬質金メッキとは、金の他にニッケルなどの添加物を用いて硬度を高めた皮膜です。
2.金メッキの用途
2.1.装飾用途
金メッキの用途には、大きく分けて装飾用途と工業用途があります。
装飾用途とは、金の見た目の美しさを利用した用途です。多くのパターンで、装飾用途というものの、その耐食性の高さも製品の耐久性に一役買っています。古くは刀剣や馬具、仏具などにも金メッキが使われていました。東大寺の大仏などは金メッキの代表的な例です。
現代でも、時計やアクセサリーなどはよく知られており、宝飾店などでも見かけることが多いかと思います。
ただし、宝飾店などで見かける金色の製品は、製品自体が金製のものに加え、厚手の金張りで表面処理しているものもあり、厳密に言うと金メッキでないものもあります。
2.2.工業用途
金メッキは単に装飾用途で見た目を良くするためだけに行われるものではありません。
装飾品の耐久性自体も向上するように、金メッキの役割として耐食性は大きなポイントです。
このような耐食性を活かし、ピンやネジ、機械部品など部品同士が接するような摺動部の場合、硬質金メッキを行うことが多いです。
また、他の活用法として、金は電気伝導性も高いので、プリント回路基板やコネクタなどに金メッキが活用されている例も少なくありません。
3.金メッキの変色
見た目も美しく、工業的価値も高い金メッキですが、時として不具合を生じることもあります。
金メッキの代表的な不具合は変色と剥がれです。
装飾用途で用いる金メッキがあまり変色してしまうのは困りものですが、残念ながら金メッキも変色する可能性はあります。
メッキの変色の原因の多くは、酸化もしくは硫化です。
身につけるアクセサリーなどの場合、身体からの皮脂や汗によって金が反応してしまう場合があります。
また、高温多湿で光が当たるような環境は、変色を助長してしまいます。
長期的に見た場合、空気中の硫化水素と反応すると、黒ずんでくることがあります。
3.2.変色による影響と対策
変色することによって、即座に著しく耐食性が落ちることはありませんが、長期的に見ると多少の影響はあります。
また、電気的特性の低下を起こす可能性があります。
装飾用途では特に美しい金色が損なわれることが最大の影響と言えるかもしれません。
装飾用の金メッキ品は、身につけた後は柔らかい布で皮脂や汗を拭き取ることが大切です。
また、高温多湿や光をできるだけ避け、密封した状態で保管することもお勧めします。
段ボールなどにそのままの状態で保管しておくと、硫化が起きてしまい変色してしまいますので、注意が必要です。
4.金メッキの剥がれ
4.1剥がれのメカニズム
もう一つ深刻な不具合は剥がれです。
メッキは元来、素材表面と強く結びついており、簡単に剥がれるものではありません。
しかし、元の素材が錆びていたり表面に油脂などが残った状態のままメッキをしてしまうと、密着不良が起きてしまい、そこから剥がれてしまうことがあります。
製品の長期間の使用に伴い、次第に剥がれてゆくことも有り得ます。
また、目の荒いもので磨いたりするとメッキを剥がしてしまう場合があります。
4.2.剥がれによる影響と対策
剥がれによって、本来メッキされているところは剥き出しの状態になるわけですから、耐食性などは著しく悪くなります。
剥がれたところを契機に、腐食が進んでしまうことも有り得ます。また、電気伝導性も剥がれたところではなくなってしまいます。
見た目においても、メッキが剥がれたところは中の素材の色が露出し、元々の美しい金色のイメージを損ねてしまいます。
剥がれを起こさないためには、メッキ前処理が重要です。
前処理とは、メッキ工程を行う前に事前に表面の脱脂を行ったり、酸洗をして不純物を取り除く工程です。
これを十分に行うことで、密着性が向上し、剥がれる心配はほとんどなくなります。
5.不具合が起きたときの注意点
変色や剥がれなど、メッキに不具合が起きたとき、くれぐれも注意しなければならないことがあります。
それは、ご自身でその箇所を削ったり磨いたり、修正を試みないことです。
前述のとおり、メッキした箇所を磨いてしまっては、メッキ層はさらに薄くなり、剥がれを助長してしまいます。
変色などに対しても、下手に磨いたり薬品を使ってしまうと、逆効果な場合も少なくありません。
メッキの不具合は基本的にメッキの専門業者でしか修正できません。
装飾品などは大切なものなら尚更、ご自身でなんとかしようとせず、メッキ業者に任せてみてください。
専門知識を持ったメッキ業者は、強い味方となってくれるはずです。
6.まとめとお問い合わせ
6.1.まとめ
金メッキについて、その特徴や用途と変色や剥がれといった不具合について解説してきました。
以下はそのまとめです。
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金メッキは耐食性に優れ、電気伝導性や熱伝導性も持った表面処理方法である。
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金メッキの用途として、古くは刀剣や仏具、現代でも時計やアクセサリーなどの装飾用途に広く用いられている。
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装飾用途の他に、金メッキは電気的な特性やはんだ付け性などを活かし、プリント基板やコネクタなどの工業的な用途にも用いられている。
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金メッキは皮脂や汗、空気中の物質との反応によって変色することがあり、特に装飾品は保管に気を配る必要がある。
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メッキ前の前処理が不十分だと金メッキが剥がれてしまうこともあるため、十分な前処理が必要である。
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メッキに変色や剥がれなどの不具合が生じた場合、自身で磨くなど自己処理で解決するのではなく、専門のメッキ業者に相談することが大切である。
6.2.専門家へのお問い合わせや相談
金メッキのことなら株式会社コネクションへご相談ください。
アルミニウム、鉄系、チタン、樹脂材料などに対応可能です。その他の素材についてもご相談ください。
純金メッキ(24kメッキ)以外にも硬質金メッキの対応もしております。
純金めっきは最大10μmまで処理実績がございます。