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無電解ニッケルめっき

​無電解ニッケルメッキ

 

無電解ニッケルメッキは、電気を使用せずに化学的還元作用を利用して金属表面にニッケル層を形成する加工技術です。このメッキ方法は、電気メッキと異なり、電流を流す必要がないため、非導体であるプラスチックやセラミックなどの素材にも均一な厚さでメッキを施すことが可能です。無電解ニッケルメッキは、耐摩耗性、耐食性、耐薬品性などの特性を持ち、自動車産業、電子工業、医療用品など幅広い分野で利用されています。

​目次

1.無電解ニッケルメッキの原理と化学反応式

2.無電解ニッケルメッキの歴史と発展

3.無電解ニッケルメッキの特徴

 3.1.色と光沢

 3.2.硬度と硬さ

4.無電解ニッケルメッキ液の成分と組成
 

5.無電解ニッケルメッキの用途

6.無電解ニッケルメッキの工程と品質管理

 6.1.メッキ工程及びベーキング処理

 6.2.品質管理

7.無電解ニッケルメッキの問題点と解決策

 7.1.錆びる、変色、剥がれの原因

 7.2.環境への配慮

 7.3.無電解ニッケルメッキの経済的側面

1. 無電解ニッケルメッキの原理と化学反応式

無電解ニッケルメッキの原理は、メッキ液内に含まれるニッケルイオンが化学反応によって還元され、金属表面にニッケルの層を形成することにあります。基本的な化学反応式は以下の通りです。

Ni2+ + 2H2PO2- + 4OH- → Ni + 2H2PO3- + 2H2O

ニッケル塩と還元剤が反応し、ニッケルイオンが金属ニッケルに還元される過程を示します。この反応は、特定の触媒の存在下で進行し、均一なメッキ膜を生成します

2. 無電解ニッケルメッキの歴史と発展

無電解ニッケルメッキの歴史は、1946年にBrennerとRiddellによって発表された研究に始まります。彼らは、軍用大砲の内部メッキ研究中に偶然触媒反応を発見し、これが無電解ニッケルメッキ現象の発見につながりました1914。日本では、その発表から11年後の1957年に無電解ニッケルメッキの工業化が進められ、今日に至るまで技術が発展してきました。

 

3. 無電解ニッケルメッキの特徴

無電解ニッケルメッキにおいて、膜厚はメッキの性能を決定する重要な要素です。適切な膜厚は、耐食性、耐摩耗性、そして耐薬品性を保証するために必要です。一般的に、無電解ニッケルメッキの標準膜厚は5μmから25μmの範囲内で設定されますが、用途に応じてこれより厚い膜厚が求められる場合もあります。例えば、極めて高い耐摩耗性が求められる部品では、より厚いメッキ層が必要とされます。

 

無電解ニッケルメッキの膜厚を測定する方法には、蛍光X線検査やデジタルマイクロメータによる実寸の測定、質量計測による方法などがあります。これらの方法は、メッキ膜の均一性を確認し、必要な膜厚が達成されているかを正確に評価するために用いられます。特に、蛍光X線検査は非破壊で膜厚を測定できるため、精密部品の検査に適しています。これらの測定方法は、高い精度を持ち、膜厚の管理において重要な役割を果たします

 

無電解ニッケルメッキでは、膜厚のばらつきを最小限に抑えることが品質管理上非常に重要です。膜厚の均一性は、メッキされる部品の機能性や耐久性に直接影響を与えるため、厳密な管理が求められます。膜厚のばらつきを管理するためには、メッキ液のpHや温度を一定に保つこと、そしてメッキ時間を正確に制御することが重要です。また、ダミーを利用してメッキ時間を算出する方法や、ダミーと一緒にメッキを行う方法も、膜厚の均一性を保証するために有効です。これらの管理方法により、無電解ニッケルメッキの品質を一定に保つことができます。

3.1 色と光沢

無電解ニッケルメッキの色と光沢は、メッキの美観だけでなく、その品質を示す重要な指標です。無電解ニッケルメッキの皮膜は通常、黄色味がかった銀色を呈しますが、色目が変化することがあります。色目の変化の原因として、酸化が原因となることがほとんどです。例えば熱処理を行った場合、300℃付近から酸化による変色が発生します。また、水の中で使用される場合なども酸化による変色が発生し、茶色から黒色に変化します。

3.2 硬度と硬さ

硬度とは、材料が他の物体によって変形または傷つけられる抵抗力の尺度です。無電解ニッケルメッキにおいて、硬度はメッキ層の耐摩耗性や耐久性を示す重要な指標となります。硬度の記号としては、HV(ビッカース硬度)、HRB(ロックウェル硬度Bスケール)、HRC(ロックウェル硬度Cスケール)などがあります。これらの硬度は、それぞれ異なる測定方法に基づいています。例えば、ビッカース硬度はダイヤモンドのピラミッド形状の圧子を用いて試料に一定の荷重を加え、圧痕の大きさから硬度を計算します。ロックウェル硬度は、圧子の種類(球形または円錐形)と荷重の大きさによって異なり、試料に圧子を押し込んだ後の深さから硬度を求めます。

 

無電解ニッケルメッキの硬度は、熱処理によって大きく変化します。

無電解ニッケルメッキ皮膜が熱処理により硬化する理由は次のように考えられています。

析出状態では、非晶質または超微細結晶質であった無電解ニッケルメッキ皮膜が、約260℃付近から結晶質のNiとNi3Pの混合した層へとゆっくり変化します。そして、マトリックスである結晶質ニッケル中に硬いNi3Pが分散した形の複合メッキとなり、硬度が上昇するものと考えられます。

 

硬度が高い材料は、一般的に摩擦係数が低くなる傾向があります。これは、硬い表面が滑らかであるため、接触面積が小さくなり、摩擦が減少するためです。無電解ニッケルメッキの場合、硬度を高めることで、表面の滑らかさが向上し、摩擦係数が低下します。これは、無電解ニッケルメッキが耐摩耗性に優れる理由の一つです。また、低い摩擦係数は、動作部品の摩耗を減少させ、長寿命化に寄与します。したがって、無電解ニッケルメッキの硬度を適切に管理することは、製品の性能と耐久性を向上させる上で非常に重要です。

4. 無電解ニッケルメッキ液の成分と組成

無電解ニッケルメッキ液は、金属塩、還元剤、錯化剤、pH調整剤、緩衝剤から構成されています。金属塩はメッキ皮膜の主成分です。還元剤はニッケルイオンを還元して金属ニッケルを析出させる役割を果たし、錯化剤は金属イオンと結合して錯イオンを形成させます。安定剤は反応の抑制を行う事で液の安定性を保ちます。これらの成分が適切に配合されることで、安定的なメッキ処理を行うことができます。

 

リンは無電解ニッケルメッキ皮膜中で重要な役割を果たします。リンはメッキ皮膜内でニッケルと結合し、硬度や耐摩耗性を向上させる効果があります。リン含有量が増加すると、メッキ皮膜の耐食性が向上し、逆に低くなるとメッキ皮膜の硬度が向上し、耐摩耗性が増す傾向があります。

  • 低リンタイプ
    リン含有率1~4%。はんだ付性に非常に優れています。耐食性は中リンタイプ・高リンタイプに比べて劣ります。

     

  • 中リンタイプ
    リン含有率7~10%。素材への密着性も高く、汎用性の高い方法です。高い耐食性も持っています。

     

  • 高リンタイプ
    リン含有率11%~12%。耐食性、耐酸性に優れています。

5. 無電解ニッケルメッキの用途

無電解ニッケルメッキは幅広い分野で活躍しており、自動車産業や工業機械、精密機器から医療用品まで多岐にわたる用途があります。具体的には、ディスクブレーキ、シリンダ、歯車、精密機器などの部品に広く使用されています。このめっきは硬さ、耐摩耗性、焼付き防止、耐食性、精度などの特性を提供し、製品の品質向上に貢献しています。

 

無電解ニッケルメッキはアルミニウムステンレスなどの材質にも適用されます。特にアルミニウム合金ステンレス鋼などの表面処理において、耐食性や耐摩耗性を向上させるために利用されます。これにより、金属部品の寿命を延ばし、耐久性を向上させることが可能です。

 

無電解ニッケルメッキは耐久性に優れており、金型や機械部品の摩耗や変形を防ぎます。また、めっき膜の均一性から生産品の品質ブレを抑制し、製品の安全性と機能性を高めます。

6. 無電解ニッケルメッキの工程と品質管理

6.1 メッキ工程及びベーキング処理

メッキ処理の前に行われる前処理は非常に重要です。前処理では、ワーク表面から脂分や汚れを取り除き、表面を清浄化してメッキ液が均一に付着するよう準備します。前処理の適切な実施は、メッキ膜の密着性や均一性を向上させるために欠かせません。

 

めっき後の部品を高温で加熱することで硬度を向上させ、Hv900〜1000程度の高硬度を実現します。また、ベーキング処理により水素脆性が低減され、部品の耐久性や安定性が向上します。水素脆性は部品が水素を吸収し、脆くなる現象であり、ベーキング処理はこれを防ぐ役割も果たします。

アンカー 1
アンカー 2
アンカー 3
アンカー 4
アンカー 5
アンカー 6

ステンレスへの無電解ニッケルめっき加工

1

​脱脂工程

2

​電解脱脂

3

酸活性

4

ニッケルストライク

5

無電解ニッケルメッキ処理

アルミニウムへの無電解ニッケルめっき加工

1

​脱脂工程

2

​エッチング(表面粗化)工程

3

スマット除去(デスマット)

4

​ジンケート処理(亜鉛置換)

5

​ジンケート剥離

6

ジンケート処理

7

無電解ニッケルメッキ処理

アンカー 7

6.2 品質管理

無電解ニッケルメッキの品質管理において、密着性の測定は重要な要素です。密着性はメッキ層が基材にしっかりと固定されているかを示します。密着性の評価には、折り曲げ試験や熱衝撃試験が用いられます。これらの試験は、メッキ層が基材から剥がれるかどうかを確認するために行われます。

 

無電解ニッケルメッキにおける不良の一般的な原因には、素材表面の汚れや酸化被膜の形成があります。これらは、製品ごとに反応のばらつきを生じさせ、化学反応が進みにくくなることが原因です。

 

無電解ニッケルメッキの品質管理には、JIS H8645が適用されます。JIS規格では、メッキの品質を保証するための様々な試験方法や品質基準が定められています。これには、密着性試験や表面粗さ測定、さらにはめっき層の厚さや硬さの評価方法が含まれます。JIS規格に従った試験と評価を行うことで、無電解ニッケルメッキの品質を一定の基準に保つことができます。記号については、特定のJIS規格番号や試験方法を指す記号が用いられ、これにより品質評価の基準や方法が明確にされます。

7. 無電解ニッケルメッキの問題点と解決策

7.1 錆びる、変色、剥がれの原因

環境条件や処理の不備により錆びることがあります。処理の不備で腐食が発生する場合には、メッキ液のpHや温度を適切に管理し、メッキ層の均一性と適切なリン含有量を保つことが重要です。さらに、後処理としてクロメート処理を施すことで、表面の耐食性を高めることが可能です。

 

無電解ニッケルメッキの変色は、メッキ層の酸化や硫化によって生じることが多いです。特に硫化水素などの硫黄化合物が存在する環境下では、メッキ層が黒変することがあります。また、剥がれの原因としては、基材表面の脂分や汚れを取り除く工程が不十分であることや、メッキ液の組成が不適切であることが挙げられます。

ピンホールは、メッキ層に小さな穴が開いている状態を指し、これが原因で基材が腐食しやすくなります。ピンホールの原因は、メッキ前の基材表面に残留する微小な異物や気泡が原因であることが多いです。シミは、メッキ液中の不純物が原因で生じることがあり、これによりメッキ層の外観が損なわれます。ピンホールとシミの問題を解決するためには、基材の洗浄を徹底し、メッキ液を定期的にろ過することが効果的です。また、メッキ液の組成を適切に保ち、不純物の混入を防ぐことも重要です。

7.2 環境への配慮

RoHS指令は、電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限を定めたEUの指令です。無電解ニッケルメッキにおいても、この指令に従い、鉛、水銀、カドミウムなどの使用が制限されています。

 

無電解ニッケルメッキ液には、安定剤として鉛が使用されてきましたが、RoHS指令により、電子機器のメッキにおける鉛の使用が厳しく制限されるようになって以降、鉛を安定剤として使用しない無電解ニッケルメッキに切り替えが進んでおり、当社では無電解ニッケルメッキ、無電解ニッケルホウ素テフロン無電解複合メッキ黒色無電解ニッケルメッキ共に鉛フリー化が完了しております。

7.3 無電解ニッケルメッキの経済的側面

無電解ニッケルメッキは他の表面処理に比べて高価な傾向にあります。この価格の高さは、液管理の難しさと使用される薬品のコストだけの影響ではなく、無電解ニッケルメッキは化学反応を利用している関係上液の劣化が起こり、定期的にメッキ液を更新する必要があり、液の廃棄費用が追加で掛かることがコスト高の起因となります。

 

また、厚いメッキ層は耐久性を向上させますが、材料費が増加するため、用途に応じた最適なメッキ厚の選定が経済性に影響を与えます。

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