
テフロン無電解複合めっき
(Ni-P-PTFEめっき)の特徴と用途
テフロン無電解複合めっき(Ni-P-PTFE複合めっき)は、無電解ニッケルめっきの中にPTFE(テフロン)微粒子を均一に分散させた複合めっきです。
「テフロン無電解」「無電解ニッケルテフロン」など様々な呼ばれ方がありますが、ニッケルリンとテフロンの複合めっきです。
ニッケルの耐食性や耐摩耗性に加え、テフロンの優れた自己潤滑性や非粘着性を同時に発揮します。複雑形状にも均一に処理できるため、幅広い産業分野で採用されています。
テフロン無電解複合めっき断面観察 断面画像

テフロン(PTFE)
ニッケルリン(Ni-P)
断面画像①の黒い粒子がPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)です。その他の部分が無電解ニッケル(Ni-P皮膜)の金属皮膜です。PTFE粒子の平均粒径は0.2μmです。
金属皮膜をベースにしているため 導電性 があり、PTFEの特性により以下のような効果を発揮します。
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摺動性:摩擦を低減
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離型性:成形金型での樹脂やゴムの付着を防止
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撥水性・防汚性:液体や汚れが付きにくい
さらに、テフロンコーティング(フッ素コーティング)に比べ 皮膜硬度が高く、摩耗が少ない ため、皮膜が削れてもPTFEが皮膜中に分散していることで、新たなPTFEが表面に現れ、特性を長期間維持可能です。
テフロン無電解複合めっきは、以下のような名称でも呼ばれることがあります:
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ニムフロン(上村工業株式会社様の薬品名)
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カニフロン(日本カニゼン株式会社様の薬品名)
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ニムテック(清水長金属工業様の商品名)
いずれも同じ「テフロン無電解複合めっき」ですが、薬品配合や特性が若干異なります。
薬品名指定での加工も可能ですので、お問い合わせの際にお知らせください。
PTFE共析量によるタイプ別特徴
テフロン無電解複合めっきでは、PTFE共析量(体積比)を 低共析・中共析・高共析 の3種類から選択できます。用途や求める性能に応じて最適なタイプをお選びください。
低共析タイプ(7〜13vol% / 約2〜4wt%)
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皮膜硬度が必要な案件や摺動性を重視する場合に有効
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シャフトなどの摺動部品で潤滑性を目的とした用途に利用
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摩耗に強く、耐久性を重視した設計に適しています
中共析タイプ(22〜28vol% / 約7〜10wt%)
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撥水性、離型性、耐摩耗性などの性能がバランス良く備わった皮膜
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摺動性と離型性の両方をバランス良く求める場合に最適
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金型や摺動部品、汎用用途で幅広く使用可能
高共析タイプ(30〜36vol% / 約10〜13wt%)
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皮膜硬度は低共析・中共析タイプに比べやや低め
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PTFE量が多く、離型性・撥水性が非常に優れる
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離型性金型、射出成形用ノズルなど、フッ素樹脂の性能を強く活かしたい場合に適用
技術データ(摩擦係数・接触角)
摩擦係数の測定条件
測定機器:新東科学株式会社製 TYPE:14FW
【測定条件】
測定子:Φ10mm(SUS304)
荷重:500g
移動速度:50mm/min
移動距離:50mm
PTFE共析量が増えるほど摩擦係数は低下し、摺動性が向上します。

接触角の測定条件
測定機器:全自動接触角計 CA-W型(協和界面科学)
【接触角測定条件】
素材:SUS304
めっき膜厚:10μm
PTFE共析量が高いほど接触角が大きくなり、撥水性・防汚性が向上します。
