
硬質クロムメッキ
硬質クロムメッキの特徴
最高の硬度を誇る硬質クロムメッキ
硬質クロムメッキは、電気めっきの中で最も高い皮膜硬度を持つ表面処理技術です。
特に耐摩耗性が求められる部品に適用され、部品の寿命を伸ばし、メンテナンスコストの削減に繋がります。
冶金学的に作製された金属クロムの硬さは200~350kg/mm²ですが、メッキ皮膜としてクロム金属を成膜すると地金の2倍以上の700~1000kg/mm²の硬さに達します。
クロム金属よりもメッキ皮膜で生成したクロムメッキの方が硬くなる要因として、析出金属の結晶粒子の微細化、吸蔵水素、格子歪などが挙げられます。
耐食性とその防錆効果
クロム金属の優れた耐食性と、クロムメッキ表面に形成される酸化膜によって優れた耐食性が得られます。
腐食しやすい環境で使用される部品に適用されることで、錆や腐食による機能低下を防ぎ、製品の寿命を延ばすことができます。
摺動性向上とエネルギー効率化
低い摩擦係数を持つ硬質クロムメッキは、優れた摺動性(滑り性)を発揮します。
スムーズな動作が求められる部品に使用することで、機械の動作効率を向上させ、エネルギー消費の削減に貢献します。
硬質クロムメッキの欠点
電流効率の低さ
硬質クロムメッキは、他のメッキに比べて電流効率が低く、約10~25%程度しかありません。
そのため、供給された電流の大半は水素ガスの発生に使われ、目的の膜厚まで到達するのに時間が掛かります。
ノンクラック硬質クロムめっき
硬質クロムめっき特有の「クラック」が発生しにくい仕様で、耐久性と品質の安定性を実現します。
腐食や転写性への影響を抑え、長期的な信頼性が求められる部品に最適です。
用途: 金型部品、摺動部品、精密機械部品、ロール類 など
特長:
┗ 微細なクラックによる腐食リスクを低減
┗ 表面の均一性が高く、転写精度に優れる
┗ 耐摩耗性・耐久性の向上によりメンテナンス周期を延長
膜厚にバラツキが出やすい
硬質クロムメッキは他の電気メッキに比べて均一電着性が劣ります。
硬質クロムメッキと装飾クロムメッキの違い
どちらもクロム金属を母材表面に処理する技術で、同じクロムを使用しているため、皮膜硬度など基本特性は共通しています。
装飾クロムめっきは、ニッケルめっきの保護膜として非常に薄く処理され(ニッケルクロムとも呼ばれます)、美観性と防錆性を重視します。
一方、硬質クロムめっきは厚膜で処理され、耐摩耗性・耐食性・機能性を重視します。JIS規格では皮膜硬度750HV以上、膜厚2μm以上を工業用(硬質クロムめっき)と定義しています。
用途:
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装飾クロム:自動車外装部品、家電、装飾金物など
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硬質クロム:金型、シリンダー、機械部品、ロール類など
硬質クロムメッキの実績紹介①
硬質クロムめっき不具合事例
他社で硬質クロムめっきが施され納品された製品ですが、溝内部だけでなく平面部にもめっきが施されていない箇所が確認されました。
製品の性能や耐久性に影響する恐れがあり、さらに対策案も提示されなかったため、弊社にご依頼いただきました。

弊社での対策と対応
不具合のある硬質クロムめっきを剥離し、再めっき加工を実施。
工程の改善ポイントや再発防止策をクライアント様へご提案し、ご承諾をいただいた上で作業を進めました。
弊社では、めっきの不具合調査から再加工、対策提案まで一貫対応が可能です。

硬質クロムメッキの実績紹介②
ピストンロッドへの無電解ニッケル+硬質クロムめっき加工実績
材質:S45C
寸法:Φ105 × 862mm
仕様工程:
1. 円筒研磨
2. 下地無電解ニッケルめっき(膜厚30μm以上)
3. 研磨
4. 硬質クロムめっき(膜厚20μm以上)
5. 円筒研磨
6. バーチカル研磨仕上げ
当社では、ピストンロッド加工において 最大Φ300 × 10,000mm まで対応可能です。
大型部品や長尺品のめっきにも実績があります。
当社オリジナル硬質クロムメッキ
チタンは色々な面で非常に優れた材料です。
チタンには唯一の欠点とも言えますが、摩耗性が劣るという欠点があります。
チタンでシャフトを製作しますと、摺動部の摩耗性が悪く部品として長期使用ができないなど不都合が発生する可能性があります。
必要部に硬質クロムめっきを施す事で不都合が解決できます。
一般に硬質クロムめっき皮膜にはチャンネルクラックと呼ばれる細かなワレが存在します。
このクラックが存在することで、クロムめっき皮膜が剥がれる、硬質クロムめっきを施しているのに腐食するなどの原因となります。弊社コネクションではクラックフリーの硬質クロムめっきが可能です。