「ピンホール」という言葉をご存じですか?
この言葉は服飾業界や食品業界、建築業界でも使われているため、ご存じの方も多いかもしれません。この「ピンホール」 という言葉、実はめっき皮膜の欠陥のひとつとしてめっき業界でも使われています。
■INDEX■
1. ピンホールとは
2. 一般的なピンホール検査
4. まとめ
1. ピンホールとは
ピンホールとは、一般的に針で刺したようなごく小さな穴のことをいいます。
これらは目に見えないような大きさのものがほとんどですが、例えば食品業界で、食品包装後の袋にピンホールが存在していると袋の中に酸素を通してしまうことで食品にカビが発生したり、酸化による劣化などの問題が起こります。
めっき業界でのピンホールとは、皮膜を貫通した針であけたような小さな穴をピンホールといいます。一定の面積にあるこれらの孔の数を有孔度といいます。
めっきの耐食性はピンホールの有無や穴の数によって左右されますので、ピンホールなどのめっき皮膜の欠陥が無い、もしくは少ない皮膜が求められます。
2. 一般的なピンホール検査
一般的なピンホール検査の手法としては、目視検査や気密検査、超音波検査、CCDカメラを使用した外観検査などがあります。
ピンホールは目に見えないほどの非常に小さなものも存在するので目視では見落としてしまう可能性もあります。そこで現在ではAIを用いたり、光を照射してピンホールを検出するなど様々な手法がとられています。
めっきのピンホール(有孔度)試験としてはフェロキシル試験というピンホール試験がございます。フェロキシル試験はピンホールの有無や数を調べる試験ですが、あくまでも耐食性試験方法のひとつです。
フェロキシル試験とは フェロキシル試験とは鉄鋼素地上に行った銅ーニッケルめっき、ニッケルークロムめっき及び銅ーニッケルークロムめっきの耐食性を評価する方法です。
めっきの有効面に試験液を染み込ませたろ紙を貼り付け、5分後に剥がしたろ紙上に現れた鉄錯イオンの青色斑点を調べる方法で、有効面にピンホールが存在している箇所が青色の斑点で確認することができる試験方法です。
3. めっき皮膜にピンホールがあるとなぜ困る?
めっき皮膜にピンホールがあるとなぜ困るのでしょうか?めっきに期待する特性の一つとして耐食性が挙げられますが、めっき皮膜がどんなに耐食性に優れた皮膜であっても、ピンホールなど下地や素地に達する欠陥があればその部分を起因として腐食が発生してしまいます。
鉄鋼に亜鉛めっきを施した場合など、素材よりもめっき被膜の方が卑な金属の場合、ピンホールなど欠陥があっても亜鉛めっきが優先的に腐食され母材である鉄鋼を守る働きを行いますが、鉄鋼に金めっきなど素材よりも貴な金属を施した場合、ピンホールがめっき皮膜にありますと、めっき皮膜よりも母材である鉄鋼の方が優先的に腐食してしまう状況が発生します。 これらのことから母材を守る意味合いのめっき処理に関してできる限りピンホールなどの
欠陥のないめっき皮膜が求められます。
まとめ
本記事ではピンホールについて解説しました。
以下まとめです。
めっき皮膜に針で刺したようなごく小さな穴が発生する場合がある。(ピンホール)
フェロキシル試験というピンホール試験でピンホールの有無や数を調べる事が可能。
ピンホールがある事で、その部分を起因として腐食が発生してしまう。
これらのことからめっき皮膜中のピンホールが極力無い状態が望ましいが、素材に巣穴がある場合はピンホールの発生しやすくなるため、素材の状態が綺麗な方がより欠陥のないめっき皮膜の形成に繋がります。
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【著者のプロフィール】
1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。
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