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【メッキのプロ直伝】硬い皮膜と言われている無電解ニッケルメッキ、どれくらい硬いのでしょうか?

更新日:2023年10月15日

硬度が高い特性を持つ無電解ニッケルメッキ。柔らかく、腐食しやすい金属素材アルミニウムの耐久性を高めてくれるメッキとして注目され、高い硬度を持つ表面処理方法として、自動車や精密機械、電気・電子部品、樹脂などさまざまな工業製品に活用されています。

この無電解ニッケルメッキの硬度を、他の表面処理とも比較しながら検証してみました。


■INDEX■







6.まとめ


 

1. 無電解ニッケルメッキの硬度はどのくらい?

硬度とは、物質の硬さの度合いで、メッキ皮膜の硬度についてはビッカース硬度(HV)を使います。数値が高いほど硬くなり、硬度の高いメッキとしては無電解ニッケルは硬質クロムと並んで代表的なものです。硬度の高いメッキは、耐摩耗性の特性も併せ持つため、工具類や金型、精密機械部品に使うことができます。


無電解ニッケルメッキの硬度は熱処理により最大HV950に

  1. 析出状態の皮膜硬度はHV550~HV700

  2. 熱処理後の皮膜硬度はHV950まで上げることができます。



無電解ニッケルメッキは石英(水晶)と同じくらいの硬さ

硬い物質としてよく知られるダイヤモンドは、HV 7140~15300と圧倒的な硬さを誇ります。 金属やメッキ皮膜でダイヤモンドに匹敵するものはありませんが、表面処理で最も硬い処理としてはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)があります。DLCの皮膜硬度はHV 3000程度です。


無電解ニッケルメッキの最大硬度はHV 950でして、近い硬度を持つ素材と言えば石英(水晶)になります。ちなみに石英の硬度はHV 1103です。



金属材料よりも硬い無電解ニッケルメッキ

金属素材では、よく使われる素材として、純鉄がHV 110、アルミ合金はHV 45~100です。 硬い金属と言えば、鉄と炭素の合金、鋼が有名ですが、鋼の一つ「SKH56(高速度工具鋼材、ハイス)」はHV 722、SKT6(合金工具鋼材)はHV 512です。


無電解ニッケルメッキの皮膜硬度HV 950に比べると約2分の1しかなく、無電解ニッケルメッキが圧倒的な硬度を持つことがわかります。



アルミニウムに無電解ニッケルメッキを施せば硬度は20倍に


比較的柔らかい金属と言えば、アルミニウムでその硬さはHV 45です。

アルミニウムに無電解ニッケルメッキを施せば、表面硬度は最大950まで上げることができます。 ということは、素材の持つ約20倍以上の硬さを持つことができるのです。



無電解ニッケルメッキの硬度、他のメッキと比較

無電解ニッケルメッキを施せば、表面硬度を上げることができます。ほかにも表面硬度を上げられるメッキはありますが、どんな基準で選んだらいいでしょうか?


表面硬度を上げてくれるメッキはどんなものがある?

弊社で扱っている硬度の高いメッキの種類を、高いものから順に挙げると次のようになります。

1位 DLC(ダイヤモンドライクカーボン)HV 3000 2位 TiN(窒化チタン)HV 2000 3位 硬質クロム HV 1000 4位 Ni-P(無電解ニッケルリンメッキ・熱処理)HV 1000 4位 Ni-B(無電解ニッケルボロンメッキ・熱処理)HV 1000 6位 Ni-P(無電解ニッケルリンメッキ・中リンタイプ熱処理なし)HV 500 6位 光沢ニッケル HV 500

先にご紹介しました皮膜硬度の高い表面処理について、その機能特性についてご紹介します。



2. DLC(ダイヤモンドライクカーボン)

DLCは、炭化水素と炭素の同素体であり、ダイヤモンドと黒鉛の中間に位置する素材です。メッキの中では硬度が非常に高く、ハードディスクの表面をはじめとした様々な製品に応用されています。

機能特性:高硬度、金属の耐摩耗性向上、低摩擦係数 表面処理可能素材:金属 表面処理不可能素材:樹脂やガラスなどの絶縁物、非鉄系金属

主な用途: ハードディスクの表面、剃刀の刃、軽金属切削加工用の工具・金型、ペットボトルの内面など



3. TiN(窒化チタン)

窒化チタンは、非常に硬いセラミックでできた素材であり、窒化チタンコーティングは、反応性ガスとの結合により硬質セラミック薄膜が形成されます。そのため、湿式メッキに比べて非常に優れた耐摩耗性を持っており、切削工具や金型の品質を改善するための表面処理として使われます。

ただ、「金額が通常のメッキと比べて高額であること」「アルカリ性に弱い」「樹脂製品への密着性が非常に弱い」といったデメリットがあります。

  1. 機能特性:硬度、耐摩耗性、耐熱性

  2. 主な用途:切削工具、機械部品、プラスチック成型、スポーツ用品、装飾品などのコーティング

  3. 機能特性:硬度、耐摩耗性、耐熱性

表面処理可能素材:金属(ステンレスやチタンなどが主です)、樹脂(弊社では、CFRPなどに実績があります)

表面処理不可能素材:素材からガスが発生するような材質 (真空状態にしてからの処理となりますので、真空にできない材料は不可となります)


4. 硬質クロムメッキ

クロムは変色や腐食が起きにくく、非常に硬い素材であり、硬質クロムメッキは、その特性である硬度と耐摩耗性を利用し、自動車やオートバイ、船舶のエンジン部品など耐摩耗性を必要とする各種部品に使われています。その優れた耐食性は、塩酸以外の酸、アルカリに対して腐食されにくいという性質があります。

機能特性:硬度・耐摩耗性の向上 表面処理可能素材:鉄鋼、銅、黄銅 表面処理不可能素材:樹脂やガラスなど電気が流れない材料

主な用途:自動車やオートバイ、船舶のエンジン部品など耐摩耗性を必要とする各種部品 プラスチックやガラス、粉末冶金などの成形用金型、印刷や製紙、圧延、フィルム加工、製鉄におけるローラ類などの工業製品など


硬質クロムメッキについて詳しくはこちら


硬質クロムメッキ採用の注意点「かじり」

硬質クロムメッキを施した部品と未処理の部品が接した状態で摺動させると、金属同士の摩擦により摩耗が発生します。その際に硬質クロムメッキも摩耗されますが、硬質クロムメッキの摩耗粉が発生するとその粉がバインダーとなり、摩耗が促進されます。


硬質クロム摩耗粉は非常に硬い粉であるため、メッキ処理を施していない部品の組み合わせに比べ、摩耗が激しくなり、クロムメッキを施した製品ではなく特にメッキ処理を施していない部品側を中心に摩耗が進みます。これを「かじり」と言います。


硬質クロムメッキを採用する場合、このような点に注意してください。



5. 無電解ニッケルメッキ

無電解ニッケルメッキは、ニッケルベースの皮膜に数%リンを含むニッケルーリン合金。電気メッキで得られるニッケルメッキ皮膜に比べると、硬い皮膜になります。 硬度のほかにも耐摩耗性、耐食性、耐薬品性、導電率(比抵抗)、接触抵抗、耐熱性など、その用途は多岐にわたります。

無電解ニッケルメッキは、「無電解」の文字通り電気を通さないため、樹脂やプラスチック、セラミックなど金属以外の素材にもメッキできます。

機能特性:硬度・耐摩耗性の向上、耐食性、耐薬品性、導電率(比抵抗)、接触抵抗、磁性(非磁性)、電磁波防止、光選択吸収性、光反射性(反射防止性)、耐熱性、熱伝導性、はんだ付け性、熱膨張率 表面処理可能素材:金属、樹脂、プラスチック、セラミック 表面処理不可能素材:3Dプリンターなどで作られた樹脂材料。 処理はできますが、工法上、加工品の内部に隙間ができます。その隙間にメッキを施すための洗浄液やその他の酸やアルカリが残留してしまい、目的の無電解ニッケルメッキ時に染み出てメッキの析出を阻害してしまします。



無電解ニッケルメッキなぜ硬くなる?~そのメカニズム

無電解ニッケルメッキ カニゼンメッキ

無電解ニッケルメッキ皮膜が熱処理により硬化する理由は次のように考えられています。

析出状態では、非晶質または超微細結晶質であった無電解ニッケルメッキ皮膜が、約260℃付近から結晶質のNiとNi3Pの混合した層へとゆっくり変化します。そして、マトリックスである結晶質ニッケル中に硬いNi3Pが分散した形の複合メッキとなり、硬度が上昇するものと考えられます。


熱処理温度が400℃を超えると、再結晶や結晶粒の増大により、硬度が低下します。


延性は皮膜中のリン含有量の依存性が大きく、11.5mass%のときに1.5~2.0%の最大伸びが得られますが、この組成からずれると伸びは0.8~1.1%に減少します。


無電解ニッケルメッキの硬度と耐摩耗性の関係

表面処理硬度を求める場合、耐摩耗性も用途として求めることは多くあります。

例えば、自動車のディスクブレーキやピストン、シャフトといったものには耐摩耗性が用途として挙げられます。また、機械・精密機械のコピーロール・シャフトには、耐摩耗性と硬度の両方が求められます。


基本的には硬度が高くなると耐摩耗性も高くなる

硬度が高くなると、基本的には耐摩耗性も高くなります。逆に考えれば、柔らかい金属で摩耗にも強いということはほとんどないでしょう。硬ければ硬いほど、摩耗にも強くなり、硬度と耐摩耗性というのは相関関係にあります。ある実験でこんな結果が出ています。

  1. 比較的低荷重での摩耗試験では無電解Ni-P合金の硬さおよび結晶粒径の大きいものほど優れた耐摩耗性が得られる

  2. しかし、このような無電解ニッケルメッキは点荷重あるいは衝撃荷重に対してはあまり良好な特性を示さないことが知られている

というものです。

400℃で熱処理した場合に硬度が高くなり、摩耗量が最も少なくなるので、耐摩耗性も高いということが言えます。 このように、一般的には、硬度が高いと耐摩耗性にも期待できます。



無電解ニッケルメッキは含リン率により皮膜特性が異なります。

無電解ニッケルメッキの硬度は最大でHV950となりますが、リン濃度によってばらつきがあります。析出状態では、低リンではHV700、中リンと高リンがHV550、熱処理後には低リンでHV930、中リンと高リンがHV950です。



こちらに示したように、含リン率によって耐食性や比抵抗(電気抵抗)、耐塩水性など様々な特性が大きく変わります。例えば、アルミニウムに無電解ニッケルメッキする場合は、耐食性も求められるので、高リンタイプにした方がいいということになります。その他の特性について含リン率の違いによる影響をみていきましょう。


高リンタイプの無電解ニッケルメッキは熱処理をしても非磁性を保ちやすい

濃度によって、磁性・非磁性が異なります。低リンは析出状態でも熱処理後も磁性を持ちます。しかし、中リンの場合は、析出状態では非磁性ですが、熱処理後には、磁性を持ちます。高リンの場合は、析出状態でも、熱処理をしても非磁性を保つという特性があります。


低リンはハンダ付性においては良好

低リンは耐食性については劣るものの、ハンダ付性は良好となっています。

このように、素材によって用途も変わってきます。無電解ニッケルメッキを表面処理方法として選んでも、さらにリンの濃度についても低・中・高どちらを選ぶかによってもまた異なってきます。

上記の表を参考にしていただきながら、リンの濃度についてもぜひご相談いただければと思います。



6. まとめ

無電解ニッケルメッキの機能特性、硬度について、検証してみました。簡単にまとめると、次のようになります。


無電解ニッケルメッキの硬度は、金属以外の表面処理可能素材の中では上位

もし、金属以外の素材にメッキをしたいという場合、無電解ニッケルメッキが最も硬度が高い表面処理方法となります。


素材との相性も考慮したうえでメッキの種類を選ぶ

単純に硬度の高いメッキを選ぶとして、例えば硬質クロムメッキで表面処理をすると、素材を摩耗させてしまうおそれがあります。しかし、無電解ニッケルメッキですと、そのような心配もありません。


その他の用途も考えて、リン濃度を選ぶ

例えば、アルミニウムに無電解ニッケルメッキをする場合は、アルミニウムの弱点である耐食性を補うということもできますので、高リンタイプを選んだ方がいいでしょう。表面処理素材によって、用途も変わってくるので、ぜひご相談いただければと思います。

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【著者のプロフィール】

1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。

30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。




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