
ニッケルメッキ
ニッケルメッキとは、金属の表面に電気化学的な手法を用いてニッケルの薄い膜を析出させる表面処理技術、つまり電気メッキの一種です。
一般的に「電解ニッケルメッキ」や「電気ニッケルメッキ」とも呼ばれます。
この技術は、金属製品に優れた耐食性、耐摩耗性、装飾性といった多様な機能性を付与するために広く用いられています。私たちの身の回りの様々な製品、例えば自動車部品から電子機器、装飾品に至るまで、その美しい輝きと耐久性はニッケルメッキによるものです。
多種多様な素材へのニッケルメッキを実現する高度な技術力
弊社の強みは、長年にわたり培ってきた高度な技術力と豊富な実績にあります。特に、一般的にニッケルメッキが難しいとされる素材への対応力は、他社にはない大きなアドバンテージです。
アルミニウム、ベリリウム銅、チタンをはじめとし、ステンレス鋼、インコネル、真鍮、リン青銅など、多岐にわたる金属材料への高品質なニッケルメッキを実現してまいりました。
これらの特殊な材料へのメッキは、素材特性に応じた緻密な前処理技術と、最適なメッキ条件の選定が不可欠です。弊社では、それぞれの素材が持つ表面状態や組成を熟知した熟練の技術者が、長年の経験とデータに基づき、最適なプロセスを設計・実行いたします。
これにより、優れた密着性、素材本来の特性を最大限に活かした高機能なニッケル皮膜をご提供することが可能です。
「他社で難しいと言われた素材へのニッケルメッキも、ぜひ一度弊社にご相談ください。長年の経験と確かな技術力で、お客様の課題解決に貢献いたします。」
ニッケルメッキの種類
ニッケルめっきには、目的や仕上がりの要件に応じてさまざまな種類があります。
ここでは、代表的なニッケルめっきの特徴と適用例をご紹介します。
光沢ニッケルめっき
添加剤を加えることで鏡面のような光沢が得られるめっきです。
高い装飾性と防錆性を兼ね備えており、外観重視の部品や最終仕上げに用いられます。
用途: 家電製品、装飾部品、自動車内装部品 など
特長:
┗ 美しい光沢仕上げで高級感を演出
┗ 耐食性・耐摩耗性にも優れる
┗ クロムめっきの下地としても使用される
無光沢/半光沢ニッケルめっき
光沢を抑えた自然な金属外観が特長で、寸法精度や機能性が求められる部品に適しています。
半光沢は適度な防錆性と加工性のバランスに優れています。
用途: 機械部品、電子部品、ねじ、シャフト類 など
特長:
┗ めっき厚の管理性が高く、寸法精度を確保しやすい
┗ 光沢ニッケルに比べ応力が少なく、密着性良好
┗ 後工程(溶接・塗装)との相性も良好
無電解ニッケルめっき(Ni-P、Ni-B)
電流を使わず化学反応で金属皮膜を形成するめっきで、複雑な形状にも均一に処理できます。
耐食性・耐摩耗性・寸法精度に優れ、工業用途で幅広く使用されています。
用途: バルブ部品、半導体装置部品、金型、航空機部品 など
特長:
┗ 電流ムラがないため厚みが均一
┗ Ni-Pタイプは耐食性に優れ、Ni-Bタイプは硬度と耐摩耗性が高い
┗ 熱処理によりさらなる硬化も可能
ニッケルメッキの重要性
錆びや腐食からの保護
金属製品の表面を緻密なニッケルの膜で覆うことにより、水分、酸素、そして様々な化学物質との直接的な接触を遮断し、錆びや腐食の進行を効果的に抑制します。この保護効果によって、メッキされた製品の寿命は大幅に向上し、長期にわたりその品質と機能を維持することが可能です。
表面硬度の向上
ニッケルメッキによって形成されるニッケル皮膜は、非常に高い硬度を誇ります。この硬度こそが、製品表面を日常的な使用における傷つきや、繰り返しの摩擦による摩耗からしっかりと守り抜く強固な盾となります。その結果、ニッケルメッキは製品の耐久性を著しく向上させ、長期間にわたる安定した性能維持に大きく貢献します。
美しい外観の付与
ニッケルメッキがもたらす光沢のある銀色の美しい仕上がりは、製品に洗練された印象と高級感を与え、その意匠性を格段に高めます。単に外観を美しくするだけでなく、製品の付加価値をも向上させる重要な要素となります。さらに、ニッケルメッキの魅力は一様ではありません。光沢仕上げはもちろんのこと、落ち着いた輝きの半光沢仕上げ、素材本来の質感を活かす無光沢仕上げなど、多彩な表面仕上げに対応できるため、製品のコンセプトや用途に応じた最適な表現を実現します。
下地メッキとしての活用
ニッケルメッキは、単独で優れた特性を発揮するだけでなく、クロムメッキや貴金属メッキといった最終的な仕上げメッキを施す際の重要な下地としても広く活用されています。この下地としての役割が、最終的なメッキの密着性を飛躍的に高め、剥がれにくい強固な皮膜を形成する上で不可欠となります。さらに、ニッケル皮膜は下地として耐久性をも向上させる効果を発揮し、多層メッキ全体の信頼性と長期的な性能を確保する上で、極めて重要な工程です。
ニッケルメッキの用途例
ニッケルメッキは、その優れた特性から、私たちの生活のあらゆる場面で活躍しています。
特に、高い耐久性と耐食性、そして美しい装飾性が求められる分野では不可欠な表面処理技術です。
自動車部品のニッケルメッキは、外観美化に加え、エンジンやブレーキ部品の耐久性・耐食性を向上させる重要技術です。多様な仕上げで内外装の質感も高め、コネクタ端子の導電性維持・腐食防止にも貢献。自動車の安全性、快適性、長寿命化に不可欠です。
電子機器分野では、電気ニッケルメッキの「はんだ付け性」「導電性」「腐食防止」が重要視されます。当社はプリント基板コネクタ端子や制御機器精密シャフト等へ多数実績があり、ミクロン単位の膜厚管理と柔軟な設計対応が強みです。試作から密な連携で、要求性能を高精度に実現します。
医療機器分野では衛生性と耐久性が重視されます。当社はステンレス部品へのニッケルメッキで表面を滑らかにし、洗浄性・耐摩耗性を向上。少量多品種・高精度ニーズに対応可能で、小ロットでも高品質な仕上がりに安心と評価されています。
工業用品のニッケルメッキは、機械部品の機能性・長寿命化(摺動性、耐食性、離型性向上)、治具・工具の耐摩耗性向上、プラント設備の耐薬品性向上に貢献。厳しい環境下での信頼性を高め、耐久性向上、メンテコスト削減に不可欠な表面処理技術です。
ニッケルメッキは自動車から電子機器、装飾品、そして医療現場、さらには様々な工業分野に至るまで、幅広い分野でその優れた特性を発揮し、私たちの生活を陰ながら支えているのです。
ニッケルメッキの膜厚測定
電気ニッケルメッキの膜厚は、メッキの品質を評価する上で重要な要素です。膜厚は用途によって異なりますが、一般的には数μm~数十μmが一般的な膜厚です。膜厚は、電流密度やメッキ時間によって調整することができます。
電気ニッケルメッキの膜厚測定には、以下のような方法があります。
1.蛍光X線式膜厚測定装置
蛍光X線式厚さ試験方法とは、物質にX線を照射するとその物質中に含まれる元素に固有のX線が放射され、ニッケルメッキの膜厚を既知の試料との蛍光X線量を比較することによってニッケルメッキの膜厚を測定できる試験方法です。
2.デジタルマイクロメーター
デジタルマイクロメーターによる試験方法とは、外径、内径などの寸法を測定できる精密測定機器で、ニッケルメッキ前・後の寸法の差を測定することでニッケルメッキの膜厚を測定する方法です。
板厚であれば表裏両面ニッケルメッキ分厚くなるため、片側のニッケルメッキの膜厚はトータル膜厚÷2で片側のニッケルメッキの膜厚を算出します。
JIS規格について
JIS H8626とは
鉄鋼および非鉄金属素地に対して工業的に施されるニッケルめっきおよび電鋳ニッケルの有効面に関する規格です。
主に耐食性・耐摩耗性・肉盛りなどの目的で行われるニッケルめっき処理に適用されます。
ポイント
┗ 対象は「工業用ニッケルめっき」および「電鋳ニッケル」
┗ 有効面の状態・めっき厚さなどの基準を定めています
┗ めっきの耐食性を目的とする場合でも、JIS H8617の厚さ要件を満たしていれば、そちらの規格が適用されます
※ 本規格は電鋳ニッケル自体の品質基準を定めたものであり、形状・寸法・精度・母型材質・離型性など、電鋳操作や最終用途に関連する特性は対象外です。

















