top of page

工業用電気ニッケルメッキ及び電鋳ニッケル
JIS H8626

 

JIS H8626は、鉄鋼及び非鉄金属素地上に工業用の目的で行った、有効面のニッケルめっき及び電鋳ニッケルの有効面について規定する。

​注)耐食性、耐摩耗性、肉盛りなどに用いることを目的としたもの。ただし、耐食性を目的としためっきにおいても、そのめっき最小厚さがJIS H8617に規定する値の範囲内である場合には、その規格による。

​注)この規格では電鋳ニッケル自体の品質についてだけ規定し、形状、寸法、精度、母型の材質、離型処理、離型性、転写性などの電鋳操作及び使用目的に関した特性については規定しない。

1.定義

この規格で用いる主な用語の定義は、JIS H0400によるほか、次による。

1.1. めっきのまま及び電鋳のまま

めっき及び電鋳後、機械加工を施さない、または施していないこと。

1.2. 機械加工

めっき表面及び電鋳外面を機械的な方法で切削、研削する加工のこと。 

2.めっき及び電鋳の記号

めっき及び電鋳の記号の付け方はJIS H0404によるほか次による。

1. めっきの記号は、ニッケルの元素記号Niの前に工業用を表すEを付け、ハイフンで繋いで表す。

2. 電鋳を表す記号はEfとする。

3. めっきはまたは電鋳後に、機械加工を施すか否かによって表1のとおりに分類する。

めっきまたは電鋳後に機械加工を施す場合には、ニッケルを表す記号Niに続けてコンマで繋いで、機械加工を表す記号Mを記す。

さらに、機械加工法を種類を表す場合は、JIS B0122に規定した記号を用いる。

​なお、めっき前の素地に機械加工を施し、その加工法の種類を示す場合も同様です。

表1 分類及び用途

分類および用途

3.品質

3.1. めっきの外観

めっき及び電鋳の外観は、外観試験によって試験を行い、表面に使用上有害なこぶ、孔、割れなどの欠陥があってはならない。ただし、めっき及び電鋳後、機械加工を施すものについては、その加工によってこれらの欠陥を除かれるものであれば許容される。

3.2. 表面粗さ

めっき及び電鋳の表面粗さが指定されている場合には、外面粗さ試験によって試験を行い、受渡当事者間で協定した値を満足しなければならない。

3.3. 厚さ及び許容差

めっき及び電鋳の厚さは、厚さ試験によって試験を行い、指定された厚さ及び許容差を満足しなくてはならない。めっき及び電鋳で機械加工を施すものについては、厚さ及び許容差は最終加工後のものとする。

3.4. めっき皮膜の耐食性

めっき皮膜の耐食性が指定されている場合には、耐食性試験を行い、素地金属の腐食欠陥数またはレイティングナンバが指定された値を満足しなければならない。

3.5. めっきの密着性

めっきの密着性が指定されている場合には、密着性試験によって試験を行い、めっきに剥離または膨れなどの密着不良の兆候が現れてはならない。

3.6. めっきの硬さ

めっき及び電鋳の硬さが指定されている場合には、硬さ試験を行い、指定された値を満足しなければならない。

3.7. 非破壊検査特性

めっき及び電鋳の表面及び内部を非破壊試験方法で試験する場合には非破壊試験による。

ただし、この試験の適用及びその結果の判定は、受渡当事者間の協定による。

3.8. めっき及び電鋳の硫黄含有率

めっき及び電鋳に共析された硫黄の含有率は、硫黄定量分析法によって定量分析を行う。

ただし、この分析の適用及びその値については受渡当事者間の協定による。

3.9. めっき及び電鋳の耐摩耗性

めっき及び電鋳の耐摩耗性は耐摩耗性試験によって試験を行う。

ただし、この試験の適用及びその値については受渡当事者間の協定による。

3.10. 引張強さ及び伸び

めっき及び電鋳の引張強さ及び伸びは、引張試験によって引張試験を行う。

ただし、この試験の適用及びその値については受渡当事者間の協定による。

3.11. 繰り返し曲げ性

めっき及び電鋳の繰り返し曲げ性は繰返し曲げ試験によって試験を行う。

ただし、この試験の適用及びその値については受渡当事者間の協定によることとし、協定による繰返し曲げ回数以下で破断してはならない。

3.12. 電着応力

めっき及び電鋳の電着応力は電着応力測定によって試験を行う。

​ただし、この試験の適用及びその値については受渡当事者間の協定による。

4.めっき前の素材の応力除去

鉄鋼素材などに対してめっき前に応力除去の加熱処理を必要とする場合、その条件は受渡当事者間の協定による。

5.めっき後の加熱処理

めっきを施した鉄鋼製品に対する水素脆性除去及びめっきを施したアルミニウム及びアルミニウム合金製品に対するめっきの密着性向上のための加熱処理を必要とする場合、その条件は受渡当事者間の協定による。

​鉄鋼製品への加熱処理はめっき後できるだけ早く、少なくとも4時間以内に、また機械加工前に行わなくてはならない。

6.試験片

試験片は、通常、製品から作製する。ただし、めっき製品それ自体を試験片として用いることができない場合には、代替試験片によって試験を行う。

代替試験片の作製は、可能な限りめっき部品の作製と同じ材質の素地を用い、同じめっき条件で行わなくてはならない。

7.試験

7.1. 外観試験

外観試験は、目視によって行う。

7.2. 表面粗さ試験

​表面粗さ試験はJIS B0651またはJIS B0652に規定するいずれかの測定器を用いて行う。

また、粗さの表示はJIS B0601に規定する定義と表示方法による。

​7.3. 厚さ試験

めっきの厚さ試験はJIS H8501に規定する顕微鏡断面試験方法、電解式試験方法(50μm以下の厚さに対して)、磁力式試験方法(250μm以下の厚さに対して)またはISO4526に規定する試験方法のいずれかの方法による。

なお、JIS B7507またはJIS B7515に規定する方法で行ってもよい。この場合、めっき前の製品の寸法を測定し、更にめっき終了後、同じ箇所を測定してその差をめっき厚さとする。ただし、測定は少なくとも3箇所以上について行う。

電鋳の厚さ試験は、JIS B7502、JIS B7507または、JIS Z2355に規定するいずれかの方法で行う。

複雑な形状のめっきまたは電鋳においては、厚さを測定すべき箇所及び測定方法は、受渡当事者間の協定によって有効性が認められた方法を用いてもよい。

7.4. 耐食性試験

めっきの耐食性試験は、JIS H8502に規定する中性塩水噴霧試験方法またはキャス試験方法のいずれかによる。

また、附属書1に規定したフェロキシル試験方法または、ISO4526に規定する多孔性試験方法を用いてもよい。

7.5. 密着性試験

めっきの密着性試験は、JIS H8504に規定する研削試験方法、たがね打ち込み試験方法もしくは、熱試験方法のいずれかによるか、ISO4526に規定された試験方法のいずれかによる。

これらの方法のほか、受渡当事者間の協定によって有効性が認められた方法を用いてもよい。

7.6. 硬さ試験

薄いめっき及び電鋳の硬さ試験は、JIS Z2244またはJIS Z2251によって0.0097 07 N以上の試験荷重、15秒以上の保持時間で行う(厚さは、圧痕対角線長さの1.5倍が必要であり、荷重で調節を行う)

厚めのめっき及び電鋳に対してはJIS Z2245を用いてもよい。

硬さは、少なくとも5箇所以上を測定し、その算術平均値を硬さ値としり。硬さ試験は、めっき表面及び電鋳外面について行い、断面について受渡当事者間の協定によって行う。

7.7. 非破壊試験

非破壊試験は、JIS G0581、JIS Z2343、JIS Z2344またはJIS G0583に規定する方法による。

いずれの方法を用いるかについては受渡当事者間の協定による。

7.8. 硫黄定量分析法

めっき及び電鋳に含まれる硫黄の定量分析はJIS H1151に規定する硫黄定量方法で行う。

試料のとり方、削り方および取り扱い方は、受渡当事者間の協定による。

7.9. 耐摩耗性試験

めっき及び電鋳の耐摩耗性試験は、JIS H8503に規定する平板回転摩耗試験法(テーバ式摩耗試験法)、両輪駆動摩耗試験法(アムスラ型摩耗試験法)または往復運動摩耗試験法のいずれかによる。

7.10. 引張試験

めっき及び電鋳の引張試験は、JIS Z2241による。この場合の試験片はJIS Z2201の5号試験片または13号A・B試験片とする。

ただし、試験片の採取の方向、採取位置及び数は受渡当事者間の協定による。

その他の取り扱いはJIS H0321の6.(機械試験およびその他の試験)による。

7.11. 繰返し曲げ試験

めっき及び電鋳の繰返し曲げ試験は、試験片を不活性ガス雰囲気中で1000℃に10分間加熱し、冷却後、曲げ試験を行う。内側半径を試験片厚さの2.5倍とし、図1の通り交互に反対方向に直角に曲げる。曲げ回数は90°ごとを1回とて数える。ただし、試験片形状は30×100×1mm及びこれに近い形状とする。

7.12. 電着応力測定

​めっき及び電鋳の電着時に生じる電着応力の測定方法は、附属書2による。

 

8.検査

​検査はJIS H0321によるほか次による。

1. 検査項目、試験方法、試験片の数、検査順序及び抜き取り検査の方法は受渡当事者間の協定による。

2. 製品の形状、寸法を検査するとともに各種試験​によって試験を行い、品質の規定に合格しなければならない。

9.めっき及び電鋳の呼び方

めっき及び電鋳の呼び方は、JIS H0404によるほか、めっき及び電鋳の記号の表示方法を用いる。

​例1. 鉄鋼素地上、工業用ニッケルメッキ500±10μm、素地及びメッキは研削によって表面粗さを1.6μmRaに仕上げる

​例1. 鉄鋼素地上、工業用ニッケルメッキ500±10μm、素地及びメッキは研削によって表面粗さを1.6μmRaに仕上げる

注※ 機械構造用炭素鉄鋼材 S45C

 

​また、次のように省略しても良い。

​例1. 鉄鋼素地上、工業用ニッケルメッキ500±10μm、素地及びメッキは研削によって表面粗さを1.6μmRaの省略

注※ 機械構造用炭素鉄鋼材 S45C

​例2. 100μmの電鋳ニッケル箔

100μmの電鋳ニッケル箔

 

例3. 300±20μmの電鋳ニッケル箔

300±20μmの電鋳ニッケル箔

 

例4. アルミニウム合金素地上、工業用ニッケルメッキ、メッキ後密着性向上の熱処理、研削加工で100±10μmに仕上げ、クロムメッキ10μm、液体ホーニングによって0.4μmRaに仕上げる。

アルミニウム合金素地上、工業用ニッケルメッキ、メッキ後密着性向上の熱処理、研削加工で100±10μmに仕上げ、クロムメッキ10μm、液体ホーニングによって0.4μmRaに仕上げる。

注※ アルミニウム合金 A5052

また、次のように省略しても良い。

アルミニウム合金素地上、工業用ニッケルメッキ、メッキ後密着性向上の熱処理、研削加工で100±10μmに仕上げ、クロムメッキ10μm、液体ホーニングによって0.4μmRaに仕上げる。場合の省略

注※ アルミニウム合金 A505

10. 表示

送り状または、納品書に次の事項を表示する。

a) めっきまたは電鋳の記号

b) 加工年月日

c) 加工業者名

d) 発注者書または、加工仕様書に記載されためっきまたは電鋳品質の試験結果

11. 発注書または加工仕様書への記載事項

発注者は、発注書、加工仕様書に次の事項を記載しなければならない。

1. めっきまたは電鋳の記号

2. めっきまたは電鋳の有効面(図面に指示するか、または印を付けた現物見本を提示する。)

3. 電鋳の形状・寸法(図面で表示)

4. 外観、表面仕上状態

5. 素地材料の状態

6. 必要とするめっき及び電鋳品質とその試験方法

7. 検査方法

出典:JISハンドブック

お気軽にご連絡下さい。ご相談、お見積りは無料です。

​(受付時間 9:00〜18:00)

お電話でのお問い合わせはこちら

bottom of page