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【メッキ技能士直伝】製品の撥水・親水性をメッキで実現!種類、メリット・デメリット、応用事例まで徹底ガイド

  • 執筆者の写真: コネクション
    コネクション
  • 4月30日
  • 読了時間: 12分

世の中の多くの工業製品は、その表面に様々な性質を備えています。特に、撥水性(水を弾く性質)や親水性(水に馴染む性質)は、製品の使いやすさやメンテナンス性に大きく影響する重要な要素です。


身のの回りを見渡しても、水を弾くものもあれば、水が表面に広がるものもあるでしょう。これらの性質は、製品の用途や求められる機能に応じて意図的に付与されています。


本記事では、表面処理技術の中でも特にメッキに焦点を当て、製品表面に撥水性や親水性をどのように付与するのか、その原理、メリット・デメリットについて解説します。メッキ技術の活用を検討されていない方にも、撥水性や親水性に関する理解を深めていただける内容となっていますので、ぜひご一読ください。


■INDEX■


1.1. メッキとは

1.2. メッキによる表面処理とその性質

2.1. 撥水性とは

2.2. 親水性とは

2.3. 撥水性と親水性の確認方法

2.4. 撥水性や親水性でできること

3.1. 撥水性メッキの種類

3.2. 撥水性メッキのメリット

3.3. 撥水性メッキのデメリット

3.4. 撥水性メッキの応用例

4.1. 親水性メッキの種類

4.2. 親水性メッキのメリット

4.3. 親水性メッキのデメリット

4.4. 親水性メッキの応用例

5.1. 撥水性を付与する方法

5.2. 親水性を付与する方法




1. 製品の表面とメッキ

1.1. メッキとは


製品の表面に意図的に手を加える技術は、表面処理と呼ばれます。製品が持つ様々な性質は、この表面処理によって改質することが可能です。


メッキは、数ある表面処理技術の一つであり、金属の薄い膜を様々な手法で製品の表面に形成する技術です。メッキを施すことで、製品の表面に新たな金属の特性を付与することができます。


1.2. メッキによる表面処理とその性質


メッキの目的は多岐にわたります。最も一般的な例としては、耐食性の向上です。例えば、鉄の表面を耐食性のある金属で覆うことで、錆の発生を効果的に防ぎます。


また、アルミニウムのような比較的柔らかい素材の表面に硬質な金属の皮膜を形成することで、耐摩耗性を高めることも可能です。


さらに、メッキは表面の皮膜が持つ独自の性質を製品に付与することもできます。電気伝導性の付与はその代表例ですが、本記事で焦点を当てる撥水性や親水性といった機能も、メッキによって実現することができるのです。



2. 撥水性と親水性

2.1. 撥水性とは


撥水性や親水性とは、製品の表面が水と接した際に、水を弾くか、あるいは水が表面に馴染んで広がるかという性質のことです。


撥水性の高い表面は、水滴を球状にしてよく弾きます。この代表的な例として挙げられるのがハスの葉です。ハスの葉は表面の微細な構造とワックス成分によって高い撥水性を持ち、水滴が転がり落ちる際に汚れも一緒に洗い流すため、常に表面を清潔に保ち、光合成に適した状態を維持しています。


撥水性の高低は、製品表面の表面自由エネルギーと水の表面自由エネルギーを比較することで理解できます。一般的に、製品の表面自由エネルギーが水よりも低い場合に、その表面は高い撥水性を示す傾向があります。


表面自由エネルギーとは、物質内部の分子間にはたらく引力によって、表面の分子が内部に向かって引き込まれるために生じるエネルギーです。これは、液体の場合には表面張力として観察される現象と深く関連しています。


2.2. 親水性とは


親水性の高い表面は、水と接触すると、水滴が広がり薄い膜のように馴染みます。化粧水が肌にスーッと浸透していく様子をイメージすると分かりやすいでしょう。


親水性の高い表面は、水に濡れる面積が広くなるため、撥水性の表面に比べると水分を拭き取るのにやや手間がかかる場合があります。


この親水性が高まる要因は、製品表面の表面自由エネルギーが水よりも高いことにあります。表面自由エネルギーが高いと、水分子が表面との接触面積を大きくしようとするため、結果として水が広く馴染む現象が起こります。


2.3. 撥水性と親水性の確認方法


撥水性と親水性は、互いに相反する性質を持ちます。製品がどちらの性質を持つかを手軽に確認する方法としては、濡れても問題のない製品であれば、実際に水滴を表面に落として観察するのが最も直接的です。


水滴を置いた際に、図のように水滴が表面で丸い球状になり、その水滴と表面が接する角度(接触角)が90°よりも大きければ、その表面は撥水性が高いと判断できます。一方、接触角が90°よりも小さい場合は、水滴が表面に広がりやすいため、親水性がある状態といえます。


2.4. 撥水性や親水性でできること


製品の性能向上に、あえて撥水性や親水性を付与する技術が活用されています。


撥水性は、水滴を弾き、表面に広がりにくくする性質を持ちます。この特性を活かし、窓ガラスや自動車のボディなどに施すことで、水滴による視界不良を防ぎ、美しい外観を保つことができます。


一方、親水性は、水が表面に馴染みやすく、薄く広がる性質を持ちます。この特性は、印刷機のローラなどに応用され、インクの均一な塗布に貢献しています。


本記事では、これらの撥水性や親水性をメッキ技術によって製品に付与する方法をご紹介します。改めて、それぞれの特性が活かされる主な用途についても解説していきます。



3. メッキによる撥水性付与

3.1. 撥水性メッキの種類


撥水性は、メッキ処理によって製品に付与することも可能です。特に、無電解Ni-PTFE複合メッキといった技術が用いられます。


これらのメッキは「複合メッキ」と呼ばれ、金属皮膜の中に別の素材を混合させることで、単一の金属メッキでは得られない新たな性質を付与します。


例えば、無電解ニッケルテフロン複合メッキは、無電解ニッケルめっきのプロセス中にテフロン(PTFE)微粒子を共析させる技術です。これにより、メッキされた表面はテフロンのような優れた撥水性を示すだけでなく、離型性や摺動性の向上にも貢献します。PTFE複合メッキという名称も一般的です。


3.2. 撥水性メッキのメリット


撥水性メッキの主な利点は、その名の通り水を弾く性質によるものです。これにより、金属表面と水の接触が減少し、優れた防錆効果を発揮します。

同様に、油などの液体も弾くため、防汚効果も期待できます。


また、水が表面に広がらず水滴状になるため、濡れたような印象が軽減され、美観の向上にもつながります。

さらに、前述の通り、複合メッキの種類によっては離型性摺動性といった機能性も同時に高めることができる点も大きなメリットです。


3.3. 撥水性メッキのデメリット


撥水性メッキにはいくつかの注意点も存在します。


まず、水を弾く性質がある一方で、放置された水滴は蒸発し、水垢として表面に残ってしまうことがあります。


また、長期間の使用においては、撥水性そのものが徐々に経年劣化してしまう可能性があります。


さらに、表面を研磨してしまうと撥水性が損なわれるため、メンテナンスの際には研磨剤などの使用は避ける必要があります。


3.4. 撥水性メッキの応用


撥水性メッキは、その特性を活かして様々な分野で応用されています。


自動車のボディへの応用例は、水滴を弾くことで汚れの付着を抑え、美しい外観を維持するのに役立ちます。同様の理由で、建材にも利用され、雨水による汚れを防ぎ、メンテナンスの手間を軽減します。


また、電子機器への適用例も見られ、水漏れや浸水による故障のリスクを低減する目的で活用されています。

さらに、水を弾く性質に加えて、離型性や摺動性の向上といった効果も期待できるため、これらの機能を目的とした機械部品などへの応用も広がっています。



4. メッキによる親水性付与

4.1. 親水性メッキの種類


親水性は水に馴染みやすい性質であり、実は多くの金属素材そのものが高い親水性を持っています。素材表面の表面自由エネルギーを高めることで、より親水性を向上させることが可能です。一般的に、表面に微細な凹凸を形成するだけでも表面自由エネルギーは増加します。


特に親水性を高める目的で、スズメッキ高親水クロムメッキといったメッキ処理が用いられることがあります。スズは材料自体が親水性の高い物質です。また、高親水クロムメッキを施すことで、素材に親水性と同時に優れた硬度を付与することができます。


4.2. 親水性メッキのメリット


親水性メッキは、素材に防曇性、帯電防止性、潤滑性といった多様な機能を付与するために活用されます。


水が表面に薄く広がる性質は、洗浄性を向上させるという利点ももたらします。汚れの下に水が浸透しやすくなるため、洗い流しやすくなるのです。また、水滴が残りにくいため、水垢も生じにくいというメリットもあります。


このように、親水性メッキは、水を積極的に利用する作業環境や製品において、その特性を最大限に活かすことができる技術と言えるでしょう。


4.3. 親水性メッキのデメリット


親水性メッキのデメリットとしては、水が表面に広がりやすいため、水分を拭き取る際に手間がかかる点が挙げられます。


また、一般的に撥水性を持つメッキと比較して、耐久性が劣る傾向があります。


洗浄しやすいというメリットがある一方で、汚れが表面に広がりやすいため、洗浄が不十分だと汚れが残ってしまう可能性があります。


4.4. 親水性メッキの応用例


親水性メッキは、その特性から医療機器光学部品といった精密な分野で応用されています。


例えば、印刷機のロールにおいては、塗工液を均一に広げる必要があるため、親水性メッキが有効です。同様の理由で、製紙機械フィルム搬送ロールなどでも利用されています。


医療機器においては、血液や体液の付着を抑制する効果が期待される一方、人体組織との親和性が高いという特性も、その適用を後押ししています。



5. その他に撥水性や親水性を付与する方法

5.1. 撥水性を付与する方法


メッキ以外にも、素材に撥水性や親水性を付与する方法は存在します。


撥水性に関しては、例えばテフロンコーティングを施すことでも実現可能です。記事内でご紹介した無電解ニッケルテフロン複合メッキは、撥水性に加えて無電解ニッケルによる耐食性、耐摩耗性、電気的性質なども付与できる点が特徴です。したがって、単に撥水性のみが必要な場合には、テフロンコーティングがよりシンプルな選択肢となります。


また、撥水性や親水性は表面の微細な凹凸によっても大きく左右されます。一般的に、表面の凹凸が微細であるほど撥水性が高まる傾向があります。そのため、表面を微細に加工することによっても、撥水性を付与することが可能です。


5.2. 親水性を付与する方

親水性は、表面の微細な凹凸が粗い場合に生じやすい性質です。多くの金属素材は、その表面が基本的に親水性を持っています。


一方、高い撥水性を示すテフロン(フッ素樹脂)の表面を、あえて親水性の高いものに変えるための代表的な技術としてナトリウム処理が挙げられます。この処理では、フッ素樹脂に含まれるフッ素原子を引き抜き、炭素原子を二重結合などの電子不足の状態にすることで、表面を親水化します。


通常、化学的に安定しているテフロン表面は、他の物質と馴染みにくい性質を持ちますが、ナトリウム処理によってその性質が改質され、例えば接着剤などとの密着性が向上し、製品の使い勝手を高めることができます。


弊社、株式会社コネクションでは、このナトリウム処理をはじめ、様々な撥水性や親水性の技術をご提供しております。表面処理に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。


ナトリウム処理の詳細については、以下のページをご覧ください。



6. まとめ


本記事では、製品の性能向上に活用される撥水性と親水性について解説し、主にメッキによる付与技術をご紹介しました。


撥水性は、水との接触角が90°を超える性質で、表面自由エネルギーが水よりも高い素材表面で発現します。この性質を持つメッキは、防錆性、防汚性に優れ、離型性や摺動性の向上も期待できます。一方で、水滴が水垢として残ったり、撥水性が経年劣化したりする場合があります。


親水性は、水との接触角が90°以下の性質で、表面自由エネルギーが水よりも低い素材表面で発現します。親水性の高いメッキは、防曇性、帯電防止性、潤滑性などの向上に貢献しますが、耐久性は撥水性のものに比べて劣る傾向があります。


素材にこれらの性質を付与する方法はメッキに限りません。例えば、撥水性材料であるテフロンの表面を、ナトリウム処理によって親水性の高い状態に改質する技術も存在します。


撥水性・親水性の表面処理技術は、製品の用途や求められる機能に応じて適切に選択することが重要です。



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1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。

30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。

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