メッキは素材の表面に金属の皮膜を付着させ、その部分に新たな性質を付与する技術です。
さまざまな製品にメッキが施されており、見た目や機能の向上の役割を果たしています。
いまや現代技術に欠かすことのできないメッキですが、やり方を誤ってしまうとメッキ不良や不具合を起こしてしまうこともあります。
メッキに不具合があると、見た目が悪くなってしまうだけでなく、必要な機能性を損なってしまうこともあります。わずかなメッキの穴から腐食が進展し、製品を駄目にしてしまうケースすらあります。
本記事では、時折起こり得てしまうさまざまなメッキ不具合の種類とその原因を紹介します。また、そのような不具合が起きないような対策についてもご紹介します。
メッキ不具合にお悩みの方などは、ご一読ください。
■INDEX■
1.1. メッキとは
1.2. メッキの役割
1.3. メッキに不具合があると
2.1. 密着不良(はがれ・膨れ)
2.2. ピット・ピンホール
2.3. しみ・変色
2.4. 水素脆化
3.1. 密着不良の対策
3.2. ピット・ピンホールの対策
3.3. しみ・変色の対策
3.4. 水素脆化の対策
1. メッキの役割
1.1. メッキとは

メッキとは、素材の表面に金属の皮膜を付着させる表面処理の技術です。
単に塗料を塗装するのと比べ、金属が素材表面に強く密着し、簡単に剥がれるものではありません。皮膜の性質によって表面に新たな性質を付与することができ、古くから現代の技術まで広い範囲で活用されています。
特に材料の軽量化が盛んな現代では、多くの商品にメッキが行われており、必要不可欠な技術となっています。方法によって種類もいくつかあり、一般的なものには電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなどがあります。
1.2. メッキの役割

メッキを行うことでどんな効果があるのか、いくつか事例を挙げてご説明します。
メッキの目的の多くに挙げられるのは、耐食性です。
鉄などの素材は高強度で、構造物などの素材に広く用いられます。
一方で、それ自体は錆びついたり腐食することが比較的容易で、腐食してしまうと強度も大きく落ちてしまいます。つまり、鉄素材もそのまま野ざらしにしてしまうと、その強度を保てなくなってしまうのです。
腐食は素材が空気と触れることによって起こるので、表面をメッキして腐食しにくくすることで、構造の耐久性を増し、強度を保つことができます。また、アルミニウムのような素材は軽量で高強度な材料で、やはり広く用いられる素材です。
しかしアルミニウムは表面がとても柔らかく、ちょっとした衝撃で変形してしまいます。
そこで、アルミニウムには硬い金属のメッキを行い、素材を守ることもできます。
その他、メッキの中には、素材に導電性などの機能性を付与できるものもあります。
見た目の美しさを利用して、光沢を付けたり金色に輝かせたり、意匠面で役に立つこともあります。
1.3. メッキに不具合があると

このような役割を持つメッキに不具合があると、その役割を果たせない事態も出てきます。
例えば、素材を腐食から守る耐食メッキを行った場合で考えてみます。
耐食するはずの皮膜が剥がれたり穴が空いてしまった場合、その部分は錆が発生したり、腐食が進行してしまうことになります。その部分から腐食は素材内部に進行してしまうため、せっかくメッキしたものが意味のないものになってしまいます。
当然、強度や他の素材の機能も損なわれてしまいます。
つまり、せっかくメッキを行うなら、不具合は許されないものなのです。
ほんの薄い皮膜の話ですが、素材の機能に大きく影響を与えるのもメッキで、メッキのしっかりしたものはとても長持ちしたり、安定した機能を果たしてくれます。
2. メッキの不具合の種類と原因
2.1. 密着不良(はがれ・膨れ)

メッキの不具合にはいくつかの種類があります。
ここでは、代表的なものをご紹介します。
まずは密着不良です。素材に金属皮膜が十分に密着してくっつかず、それによってはがれや膨れといった不具合を起こしてしまいます。密着不良の主な原因は、素材金属に付着した油や汚れです。また、金属表面が酸化しているときなども密着不良に繋がります。
通常、メッキを行うときは前処理を行います。前処理では、素材表面を洗浄し、密着性を上げるための処理を行うものもあります。これを怠ってしまうと、密着不良のメッキ品が出来上がってしまいます。
2.2. ピット・ピンホール

次にピットやピンホールです。
ピットというのはメッキ皮膜に穴が空いた状態で、穴が素材まで到達していない状態です。
ピットの箇所は耐食性が悪くなってしまい、結果的に材料全体の耐食性を損ねてしまいます。
ピンホールというのは、皮膜の穴が素材まで到達した状態です。
ピンホールの箇所は空気などに触れてしまいますので、その箇所から即座に腐食が進展してしまうこともあります。
このようなピットやピンホールのような穴は、前述のような素材表面の前処理不足で起こってしまうことも少なくありません。また、メッキ液内の不純物や空気の混入によっても起こります。メッキ液の濃度や撹拌が不十分なことなどが原因となることもあります。
2.3. しみ・変色

しみや変色は、光沢などが綺麗なメッキ表面の見た目を損なってしまうことがあります。
せっかく綺麗にメッキしたものでも、見た目が悪いと製品にならないこともあります。
メッキを行うからには、しみや変色も防がなければなりません。
しみや変色は、前処理不足やメッキ液の問題から起こることもありますが、メッキした製品の管理上の問題で起こることも少なくありません。しみや変色の原因は酸化や硫化であることが多く、表面の金属が酸化したり硫化することが原因となります。
つまり、メッキ後の製品の管理環境などが要因となります。
2.4. 水素脆化

もう一つ、ちょっと一般の言葉としては聞き慣れない不具合の種類は水素脆化です。
これは、メッキ工程において素材に水素が吸収してしまう現象です。
水素が入ることで素材の内部応力が高まり、その素材が内部から脆くなってしまいます。
このような現象を水素脆化といい、水素脆化が起こってしまうと、ある日突然壊れてしまうような状況が起きることがあります。このような破壊を遅れ破壊といいます。
水素脆化は明らかに素材の強度面に影響を与える重要な不具合で、メッキをしたことで素材が脆くなってしまった場合はこれを疑ったほうが良いです。主に、高炭素鋼などの高強度鋼で起こります。
3. メッキ不具合の対策
3.1. 密着不良の対策

ここまで挙げたようなメッキ不具合には対策があります。まずは密着不良の対策です。
既に述べたとおり、密着不良は主に前処理の不足によって起こります。
メッキ前に素材に行う前処理にはいくつかの工程があります。
代表的なものは以下のようなものです。
脱脂洗浄:素材表面の油脂分を取り除く
酸洗い:素材表面の錆や黒皮、酸化皮膜などを取り除く
エッチング:素材表面に化学的に凹凸をつけることで密着性の向上につなげる
メッキを行うときは、所定の前処理を行いますが、メッキ業者によって工程、薬品はさまざまです。十分な前処理を行うことで、はがれや膨れも起きなくなります。
3.2. ピット・ピンホールの対策

十分な前処理を行うことを前提として、ピットやピンホールはメッキ液の管理によっても起こります。これについては、メッキ液を十分に撹拌することなどを徹底することに尽きます。
他にも、メッキの膜厚は厚いほどピンホールの発現率が少なく、ピンホールをきらうような製品の場合は厚めの皮膜を指定することも対策の一つです。仮にピンホールがあっても、メッキの層を変えればそこで穴の進展は止まりますので、多層メッキにすることも効果的です。また、同じメッキでも電解メッキより無電解メッキの方が皮膜が緻密でピンホールも少ないと言われています。
3.3. しみ・変色の対策

しみや変色の対策は、前処理やメッキ液の管理の他、メッキ後の皮膜の酸化や硫化を防ぐこともあります。
例えば、メッキ後の製品を素手で触ってしまうと、人体の油分や汗から酸化反応が起きてしまうことがあります。また、製品をビニールなどに入れずに段ボールなどに入れたままにしておくことも実は問題です。段ボールからは硫化ガスが発生し、このガスが硫化変色につながってしまうこともあるのです。
せっかくメッキしたものなので、管理の仕方にも十分に注意したいところです。
3.4. 水素脆化の対策

水素脆化の対策としては、いくつか挙げられます。
酸処理の時間を短くする
低濃度の酸を使用する
後処理としてベーキング処理を行う
このうち、ベーキング処理についてご説明します。
ベーキング処理とは、メッキ後の製品を加熱処理して内部の水素を抜く作業です。
ベーキング処理を行うことで脆化の原因となる水素がなくなるため、遅れ破壊も起こらなくなります。
なお、ベーキング処理をすると製品が硬化する効果もあります。
4. メッキの品質管理

さまざまな不具合があることから、メッキにも品質管理が必要です。
品質管理にはさまざまな方法があります。
目視検査や膜厚の測定の他にも、必要に応じて断面を顕微鏡観察することもあります。
断面観察は破壊検査なので、全ての製品についてはできませんが、必要に応じてサンプル数を設定し、十分な密着やピンホールがないことを確認することも一つの手です。
また、日本国内だけでもとても多くのメッキ業者がありますが、十分な前処理の技術や管理体制をもったメッキ業者をしっかり選定することも大切です。せっかく良い素材を使っていても、メッキの状態が悪いと製品の出来は台無しになってしまいます。
十分な技術と知見があり、しっかりした管理体制を敷いている弊社 株式会社コネクションへ是非ご相談ください。
5. まとめ

メッキの不具合について、不具合の種類を挙げて原因と対策を解説しました。
以下はそのまとめです。
メッキは製品の出来を左右する重要な技術で、不具合はあってはならない。
メッキの不具合の一つに密着不良があり、前処理などの徹底を行うことで回避することができる。
ピットやピンホールには前処理やメッキ液の管理を十分に行い、メッキを厚くするなどの対策がある。
しみや変色は皮膜の酸化や硫化で起こることが多く、メッキ後の製品の管理をしっかり行うことが重要である。
水素脆化は製品の遅れ破壊を引き起こしてしまい、ベーキング処理などが効果的な対策である。
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【著者のプロフィール】

1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。
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