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【メッキ技能士直伝】メッキ前処理の要、脱脂工程と油脂の種類ごとの対策

更新日:8月16日


■INDEX■



 

1.脱脂工程とは

メッキの前処理工程における脱脂とは、素材表面に付着した油脂や汚れを除去するプロセスを指します。この工程は、メッキ処理の品質を確保する上で極めて重要です。油脂や汚れが残ったままだと、メッキ層が均一に付着せず、剥離や腐食の原因となる可能性があります。脱脂工程では、主にアルカリ性の溶液や有機溶剤を使用して、素材表面の油脂を分解・除去します。


油脂にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。そのため、脱脂工程では対象となる油脂の種類に応じて最適な処理方法を選択する必要があります。ここでは、鉱物性油と動植物性油について詳しく説明します。


2.鉱物性油とは?

鉱物性油は、石油を精製して得られる油脂で、主に工業用潤滑油や切削油として使用されます。このタイプの油脂は、金属表面に強固に付着しやすいため、除去が難しい場合があります。


鉱物性油を効果的に除去するためには、アルカリ性の洗浄液や強力な有機溶剤が使用されます。アルカリ脱脂では、苛性ソーダ(NaOH)やリン酸塩が一般的に使用され、これらの薬品が油脂を石鹸化し、洗浄液中に溶け込ませます。また、超音波や高温のアルカリ溶液を使用することで、洗浄効果を高めることが可能です。


鉱物性油の脱脂では、適切な洗浄液の選定と濃度管理が重要であり、効果的な攪拌やすすぎも必要です。これにより、金属表面に残留物が残らないようにすることができます。


3.動植物性油とは?

動植物性油は、天然由来の油脂で、主に食品加工や化粧品、軽工業で使用されます。このタイプの油脂は、鉱物性油に比べて比較的除去しやすい傾向がありますが、素材の種類や使用環境によっては難しい場合もあります。


動植物性油は一般に、低温で凝固しやすく、酸化によって劣化しやすいため、これを考慮した脱脂工程が必要です。

動植物性油の除去には、温水や中性洗浄液、時には酵素を使用した洗浄が効果的です。また、アルカリ性の洗浄液を使用することもありますが、濃度や温度を適切に管理しないと、素材表面を損傷する可能性があります。特に、食品や医療分野で使用される素材の脱脂には、残留物が少なく、環境への影響が少ない洗浄剤が求められます。


動植物性油の脱脂工程では、表面に残留物がないことを確認するために、洗浄後の表面検査が重要です。これにより、次の工程でのトラブルを未然に防ぐことができます。


まとめ

メッキの前処理工程における脱脂は、素材表面の油脂や汚れを除去する重要なプロセスです。脱脂が不十分だと、メッキ層が均一に形成されず、製品の品質に重大な影響を及ぼします。


鉱物性油は、工業用潤滑油や切削油として広く使用され、除去が困難な場合がありますが、アルカリ性洗浄液や有機溶剤を使用することで効果的に除去できます。一方、動植物性油は、天然由来で比較的除去しやすいものの、適切な温度や洗浄液の選定が重要です。いずれの場合も、素材表面の油脂を完全に除去し、次の工程でのトラブルを回避するためには、適切な脱脂方法と管理が不可欠です。


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【著者のプロフィール】

代表取締役

1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。

30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。




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