銅という金属はよく知られた金属です。身近な例で言えば、10円硬貨の材料も銅です。
10円硬貨の色が黒ずんでしまうことからも分かる通り、酸化することで見た目は比較的簡単に変わってしまいます。また、銅はそれ自体はとても柔らかい金属です。
銅メッキにおいてもそれらの性質は受け継がれてしまうため、一般的なメッキの目的から考えると少しコントロールしにくいようにも思えてしまいます。しかし、実際は銅メッキも広く普及した有用なメッキです。それどころか、銅メッキがとても高い効果を発揮してくれる場面もあります。
本記事では、そんな銅メッキに焦点を当て、銅メッキの特徴や種類、銅メッキをどんな場面で用いるのかという目的や用途についてご紹介します。
■INDEX■
1.銅メッキとは
1-1 銅という金属
1-2 銅メッキの特徴
1-3 銅メッキの役割
2.銅メッキの種類
2-1 電解メッキと無電解メッキ
2-2 電解銅メッキの種類
2-3 無電解銅メッキ
3-1 電気伝導性
3-2 熱伝導性
3-3 下地メッキ
3-4 意匠用途
3-5 浸炭防止
3-6 その他の目的と用途
5.まとめ
1.銅メッキとは
1.1.銅という金属
銅という金属は日本でも世界でも古くから用いられている金属です。
銅鐸や銅鏡などの青銅製品は紀元前から用いられているもので、現在でも10円硬貨やオリンピックの銅メダルなど、銅を用いたものは歴史の中で度々登場します。
長い人類の生活史にも密着している銅は、有用な用途や役割を持っています。例えば、銅線などに用いられる通り、電気伝導性の高い物質で、近年の電気文化には不可欠な存在です。また、熱伝導性も高く、伝熱作用の必要な物にもよく用いられます。
銅は、耐食性も高く、海水などの環境でも錆びにくいです。素材自体は柔らかく、銅製品を作る段階では切削性などの加工性に優れます。もちろん、よく知られた綺麗な見た目も特徴で、装飾の用途に使用されることも少なくありません。
1.2.銅メッキの特徴
このような銅の特徴を表面に付与する銅メッキも、広く普及した技術です。
よくイメージされるメッキの目的といえば、素材を錆びにくくする耐食性の向上や表面を固くして耐久性を向上させることなどが挙げられます。銅メッキは表面が銅なので、確かに耐食性はありますが、硬度は期待できません。
その一方で、銅メッキは特有の特徴によって、その存在を確立させています。前述の電気伝導性や熱伝導性はその典型的な特徴です。また、銅メッキの見た目は銅の色そのもので、その綺麗な見た目を意匠目的で利用することもできます。
1.2.銅メッキの役割
銅メッキの主な役割をまとめると、用途としていくつか挙げられます。
銅そのものの有用な特徴を生かした電気伝導性や熱伝導性は典型的な役割です。綺麗な見た目を生かした意匠目的も広く用いられています。また、他のメッキの前段階で行う下地メッキという用途も挙げられます。
鉄鋼材などの加工に利用する浸炭防止という役割を担うこともあります。これらの役割の詳細については、後ほどじっくり説明してゆきます。
2.銅メッキの種類
2.1.電解メッキと無電解メッキ
銅メッキにはそのプロセスによって、いくつかの種類があります。その話をする前に、少しメッキ自体の種類について説明しておきます。
メッキにはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。その中でも、主なメッキ方法として、よく用いられるのは電解メッキと無電解メッキです。メッキはそもそも、金属の皮膜を素材の表面に付着させる技術です。
電解メッキは、外部から電流を流して電子を付与し、その電子を利用して金属を素材に付着させる方法です。電気を利用することでメッキが促進され、メッキ時間は少なくて済みます。また、厚い皮膜のメッキを行うことも可能です。
電気を通す物質であれば、さまざまな素材にメッキを行うことができます。無電解メッキと比べると、低コストで行えることもメリットです。ただし、電流の強弱に影響されるため、電極からの位置関係によって、均一なメッキを行うことができません。
同様の理由で、複雑な形状にはなかなか対応できません。また、プラスチックのような不導体にはメッキができません。
一方で、無電解メッキはその名の通り、メッキに伴って電流を流すことを行いません。メッキ液内の電解液の性質を利用し、化学的に電子のやり取りを行い、皮膜を付着してゆきます。
化学反応のみを利用するメッキであるため、メッキ時間はかかってしまい、また、コストも高くなります。その一方、皮膜は均一なものが生成され、複雑な形状へのメッキも可能です。皮膜は緻密で、一部の不導体にもメッキが可能です。
2.2.電解銅メッキの種類
銅メッキにも電解メッキと無電解メッキがあります。まずは電解銅メッキの特徴や種類から説明します。電解銅メッキは厚付けメッキが可能で、処理条件によって表面に凹凸をつけることも可能です。電解銅メッキにはさらに細かい種類があります。
シアン化銅メッキはシアン浴というメッキ浴からメッキを行う方法です。
メッキ浴はアルカリ浴で、鉄鋼材や亜鉛ダイカストなどへの適用が可能であることが特徴です。ただし、シアン浴は人体や環境に有害な物質が含まれ、その点の注意が必要です。
硫酸銅メッキはプリント基板など電子部品の用途によく用いられる方法です。
ただし、シアン化銅メッキで可能だった鉄鋼材や亜鉛ダイカストには直接適用できません。
皮膜が柔らかく、切削や研磨などの二次加工が可能な場合もあります。
ピロリン酸銅メッキは弱アルカリでシアン化銅メッキより毒性が低い方法です。
ただし、他の2つのメッキ方法よりコストが高く、管理が難しいというデメリットもあります。シアン化銅メッキや硫酸銅メッキの改良が進む昨今では、使用は限定的です。
弊社コネクションにて電解銅メッキ対応可能です。材質や寸法などに制限がございますので、材質、寸法、数量をご連絡頂ければ処理の可否を確認させて頂きます。
2.3.無電解銅メッキ
無電解銅メッキは通常、薄膜のメッキで素材表面に電気伝導性を付与するときなどに用います。無電解メッキなので皮膜は均一で、金属以外の物質にもメッキが可能です。
例えば、プラスチック基板に導電性付与を行いたいときなどはこの方法を用いるのが有効です。
弊社コネクションにて無電解銅メッキ対応可能です。材質や寸法などに制限がございますので、材質、寸法、数量をご連絡頂ければ処理の可否を確認させて頂きます。
3.銅メッキの目的と用途
3.1.電気伝導性
銅メッキには、銅の特徴を生かした独自の用途が多くあります。まず典型的な用途は、電気伝導性の付与です。冒頭でも述べた通り、銅という金属は高い電気伝導性を持っています。
常温における銅は、金属の中でも銀に継ぐ電気伝導性を持ち、電気抵抗も少ないです。
プラスチックやセラミックスの基板に無電解銅メッキを行い、さらに電解銅メッキで厚膜として基板を完成させるということも行うことができます。ネットワークや半導体の技術が日進月歩で進む昨今で、製品の核となる部分への電気伝導技術は重要で、これによって大容量通信や高サイズのデータ処理が可能となります。
この用途における銅メッキは、知らず知らずのうちに私たちの生活に密接に関わってくれていると言えるものです。
3.2.熱伝導性
電気伝導性に並ぶ銅の特徴として、熱伝導性があります。銅はとても熱を伝えやすく、例えば銅の鍋などを使うと、素材への熱の伝わりも早いです。銅メッキにおいても、電気伝導性ほどではないものの、熱伝導性を目的に行うこともあります。
鉄鍋やステンレス鍋の底部に銅メッキを行い、熱の通りを良くするといった用途です。
3.3.下地メッキ
銅メッキは「縁の下の力持ち」と言われることがあります。電気伝導性や熱伝導性においては表に出てその効果を発揮しますが、下地メッキに使われることも少なくないからです。
一般的な下地メッキの役割としては、さまざまなものがあります。まずは密着性を向上するという目的があります。素材表面の不動態を除去し、表面を活性化させて密着性が向上するのですが、ストライクメッキとも呼ばれます。
この用途での銅メッキはとても多く、下地であるため残念ながら表からは銅メッキの様子は見えません。また、下地メッキには耐食性の向上や層を増やしてピンホールの発生率を下げることなどの効果もあります。
銅は安定した金属で、それ自体の耐食性もとても高く、下地メッキに用いることで、このような耐食性の効果も大きく期待できます。なお、銅を下地メッキとするメッキで多く見られるのは、錫メッキやニッケルメッキです。
3.4.意匠用途
銅の見た目の美しさから、銅メッキは意匠用途で用いられることもあります。ただし、銅は空気中の酸素と反応して酸化しやすい性質があり、このような外観面での用途では問題が起きてしまうことがあります。
銅が酸化すると、黒ずんだ色になってしまうのです。したがって、意匠目的の銅メッキの場合は、変色防止剤を用いる必要があります。変色防止剤は、銅メッキの上にもう一層別の層を作り、表面の銅を空気に触れさせない効果を持つものです。
銅が酸素に触れなければ、酸化することもなく変色しないというメカニズムです。ただし、変色防止剤そのものは長く保てるものではないため、半永久的に銅メッキが綺麗に輝き続けることは難しいことになります。なお、銅の素材には光沢がありますが、電解銅メッキでは光沢メッキを行うことも可能で、光沢のある皮膜で意匠性を増すことができます。
3.5.浸炭防止
もう1つ、一般的には聞き慣れない言葉ですが、浸炭防止という目的で銅メッキを用いることがあります。この言葉を説明するためには、まず鉄製品などの機械的性質の話をしなければいけません。
鉄などを加工し、機械部品とするとき、表面付近を固くしたい場合があります。そのようなとき、よく行うのはある程度の温度まで加熱することで、そのことによって硬い材質を作ることができます。このようなプロセスを焼入れと言います。
鉄鋼材の硬さは炭素の濃度で決まり、焼入れは炭素の取り込みを行うことから、浸炭処理と言うこともあります。製品の中には、浸炭不要な箇所もあります。そのような箇所は、部分的に銅メッキをしておくことで、浸炭防止処理としてそのままの性質を保つことができます。
このようなメッキは製品全体ではなく、部分メッキを行うことになり、このようなメッキはマスキング処理を行うことで可能です。
3.6.その他の目的と用途
銅メッキの主な目的や用途はここまで紹介したとおりですが、他にもいくつか触れていない特徴があります。例えば、銅には抗菌性があります。
細菌の増殖を抑えることができるこのような性質は、ドアノブのように人が多く触れる箇所で用いると有効な場合もあります。ただし、銅自体が殺菌できるわけではないので、効果は限定的です。このような目的で用いるメッキは抗菌メッキと言います。
また、電磁シールド性という電磁波から守ってくれる性質もあります。パソコンやスマートフォンなど、電磁波を発生するものは生活の中でも多数あり、これらは他の電子機器に悪影響を及ぼしてしまうこともあります。そのような製品に銅メッキを行うことで、電磁波からのシールドを行うこともあります。
4.弊社の対応について
弊社、株式会社コネクションでも銅メッキに対応しております。
マスキング処理も行うことができますが、コスト削減を目的としたマスキング処理はかえって逆効果になりますので、ご注意ください。
弊社の銅メッキの詳細についてはこちらでも記載しております。
5.まとめ
本記事では銅メッキの特徴や用途についてご紹介しました。以下はそのまとめです。
銅メッキは多くの特徴があり、実は私たちの生活の中にも密着した必要不可欠な技術である。
銅メッキには電解メッキと無電解メッキがあり、電解メッキにはシアン化銅メッキ、硫酸銅メッキ、ピロリン酸銅メッキといった種類があり素材や目的によって銅メッキの種類を使い分ける。
銅の高い電気伝導性を活かして銅メッキを行うことがあり、昨今の電子部品の基板には広く用いられている。
他のメッキの下地メッキとして銅メッキを行うことも多く、密着性向上や耐食性向上の面で高い役割を担っている。
意匠用途で用いる銅メッキは変色することもあり、変色防止剤を使用することが勧められる。
弊社コネクションにて銅メッキに関する条件だしなどの試作開発から、量産対応まで対応しております。お気軽にご相談ください。
その他のめっきに関するお問合せやご質問につきましても、メールもしくはお電話にてお気軽にご連絡下さい。
お急ぎの方はこちら 直通電話 090−6819−5609
【著者のプロフィール】
1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。
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