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【メッキ技能士直伝】表面処理の品質を左右する脱脂工程、目的、方法、管理の重要性

更新日:8月16日

脱脂工程は、メッキや塗装などの表面処理を行う際に、表面の油分や汚れを除去するための重要な前処理プロセスです。この工程を適切に行わないと、後工程でのメッキや塗装の密着性が低下し、最終製品の品質に悪影響を及ぼす可能性があります。


■INDEX■


  1. 脱脂工程の目的


  2. 脱脂方法

    2.1アルカリ脱脂

    2.2酸性脱脂

    2.3溶剤脱脂

    2.4電解脱脂


  3. 脱脂工程の管理


  4. まとめ


 

1. 脱脂工程の目的

脱脂工程の主な目的は、素材表面に付着した油脂類、ワックス、切削油、指紋などの有機汚染物質を完全に除去することです。これにより、次に行われるメッキや塗装の均一な処理が可能になります。特に、金属表面の微細な凹凸や隙間に残った油脂は、後工程での不良品発生の原因となるため、徹底的に除去する必要があります。


2. 脱脂方法

脱脂工程にはいくつかの方法があり、素材の種類や汚染物の性質に応じて選択されます。主な脱脂方法には以下のものがあります。


2.1アルカリ脱脂

アルカリ性の洗浄液を使用して油脂を分解し、除去する方法です。通常、苛性ソーダ(NaOH)やリン酸塩が使用され、これらの化学薬品は油脂を石鹸化して水に溶けやすくします。アルカリ脱脂は、鉄鋼やアルミニウムなどの金属表面に広く使用されます。


2.2酸性脱脂

酸性の洗浄液を使用して金属表面の酸化物や油脂を除去します。一般的には硫酸やリン酸が使用され、特に酸化膜やさびがある場合に効果的です。しかし、酸の強さや浸漬時間を誤ると金属が腐食するリスクがあるため、慎重な管理が必要です。


2.3溶剤脱脂

有機溶剤を使用して油脂を溶解する方法です。トリクロロエチレンやアセトンなどの溶剤が使用されますが、揮発性が高く、適切な換気が必要です。溶剤脱脂は、特に精密部品や小型部品の洗浄に適しています。


2.4電解脱脂

素材を電解液中で陰極または陽極に接続し、電流を流すことで表面の油脂を除去する方法です。この方法では、電気化学反応により汚れを効果的に除去でき、特に複雑な形状を持つ部品に適しています。


3. 脱脂工程の管理

脱脂工程は、その効果を最大限に引き出すために適切な管理が必要です。洗浄液の濃度、温度、時間、攪拌の強さなど、各パラメータは最適な状態に維持されるべきです。また、定期的な液の交換やフィルタリングにより、汚れや薬品の劣化を防ぐことが重要です。


4.まとめ

脱脂工程は、メッキや塗装などの表面処理を行う際に不可欠な前処理ステップであり、素材表面の油脂や汚染物質を完全に除去することを目的としています。アルカリ脱脂や酸性脱脂、溶剤脱脂、電解脱脂などの方法があり、それぞれの素材や汚染物質に応じて最適な方法が選ばれます。脱脂工程が不適切に行われると、後の工程で不良が発生し、製品の品質が損なわれるリスクがあるため、洗浄液の濃度や温度、時間などの管理が極めて重要です。この工程をしっかりと管理することが、最終製品の品質向上に直結します。


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【著者のプロフィール】

代表取締役

1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。

30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。





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