
硬質クロムめっきと装飾クロムめっきの違い
クロムめっきには大きく分けて 「装飾クロムめっき」 と 「硬質クロムめっき」 の2種類があります。
名前は似ていますが、目的・構造・膜厚・性能が大きく異なります。ここでは、それぞれの特徴と違いをわかりやすく解説します。
装飾クロムメッキとは
用途と見た目
装飾クロムめっきは、その名の通り 美観(装飾)を目的としためっき です。
身近な例として、車のエンブレム、バイクのハンドル、自転車の荷台、石油ストーブの反射板などが挙げられます。
外観は 鏡面のような光沢 が特徴で、下地がきれいな場合には顔が映るほどです。色調は青白いシルバー色ですが、電気が届きにくい部分では黄色く見えることがあります。
構造と特徴
装飾クロムめっきは、通常 2層構造 になっています。
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下地:光沢性の高いニッケルめっき
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表層:耐食性に優れたクロムめっき(厚さ 1μm 以下)
クロムは単独では光沢が少ないため、ニッケル層が光沢を与え、クロム層が耐食性と保護機能を担います
外観のバリエーション
下地のニッケルめっき加工を変えることで、異なる質感を表現できます。
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サチライトニッケルめっき(つや消し)
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半光沢ニッケルめっき
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ホーニング(ブラスト処理)仕上げ
これにより、同じ装飾クロムでも多様な意匠性を持たせることが可能です。
硬質クロムめっきとは
用途と性能
硬質クロムめっきは、工業用途 を目的としためっきで、機械部品や金型に広く使われます。
その特徴は以下の通りです。
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高硬度(JIS規格で 750HV 以上)
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優れた耐摩耗性
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低摩擦係数
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優れた離型性
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熱処理による変形がない
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深さ方向にも硬さが低下しない
構造と膜厚
硬質クロムめっきは クロム層単体 または下地にニッケルを施してから厚くクロムを析出させます。
膜厚は 数μm〜数mm と、装飾クロムめっきに比べて非常に厚いのが特徴です。
JIS規格では「膜厚 2μm 以上、硬度 750HV 以上」が工業用(硬質クロムめっき)の定義とされています。









