部品や機械の耐磨耗性や耐食性の向上は、製品の寿命や性能を大幅に向上させることになります。
性能を向上させるためにさまざまな表面処理技術が開発されていますが、中でも工業用クロムメッキはその高い機能性と優れた特性により、広く採用されています。
工業用のクロムメッキは、工業分野での使用を前提に設計された表面処理技術です。装飾や美観を追求するのではなく、部品や機械の堅牢さと耐久性を向上させる目的で使用されています。
工業用のクロムメッキは別名として硬質クロムメッキ、ハードクロムメッキ、ICr、白あげ、硬質クロムのフラッシュめっきなど色々呼び名がありますが、全て同じ工業用のクロムメッキを指しております。
その特徴的な性質により、様々な分野で重要な役割を果たしている工業用クロムメッキの主な特徴について詳しく見ていきましょう。
■INDEX■
・ニッケルクロムメッキ(装飾クロムメッキ)とは ・クロメート処理とは
・PVD(真空メッキ)
・CVD(気相メッキ)
・DLC(ダイアモンドライクカーボン)
・工業用クロムメッキの薄膜技術の応用分野 ・自動車産業、航空産業、機械部品などへの影響
・薄膜技術と工業用クロムメッキの未来
・持続可能性、新たな分野への展開に向けて応用の展望
1.工業用クロムメッキと間違えられやすいメッキ
工業用のクロムメッキには色々な呼び名があります。以下にその一部を挙げてみます。
・硬質クロムメッキ
・ハードクロムメッキ
・工業用ハードクロムメッキ
・ICr
・白上げ など色々呼び名がありますが、全て工業用のクロムメッキの呼び名です。
メッキ処理メーカーやクライアント様によって呼び名が異なりますが全く同じ処理です。
これらとは異なり同じ工業用のクロムメッキと間違われる処理にニッケルクロムやクロメート処理があります。 これらについて簡単に説明させて頂きますので参考にして下さい。
1.1.ニッケルクロムメッキとは
クロムメッキは光沢性と耐食性に優れている事から、光沢ニッケルメッキ後の最終仕上げメッキとして用いられています。光沢ニッケルメッキの上にクロムメッキを施す事からニッケルクロムと呼ばれておりますが、別名:装飾クロムとも呼ばれています。
装飾クロムメッキは、主に外観や美観を向上させるために行われる表面処理の種類です。 金属部品や製品の表面にクロムの薄いコーティングを施すことにより、高光沢や鏡のような仕上がりになります。装飾クロムメッキは、製品や部品の外観を向上させ、耐腐食性や耐摩耗性を提供するために広く用いられています。
1.2.クロメート処理とは
亜鉛メッキは、金属部品に金属亜鉛のメッキ皮膜を形成して腐食から保護するプロセスで、一般的に鋼鉄や他の金属部品の表面に使用されます。時間とともに腐食が進行する可能性があるため、亜鉛メッキの表面にクロメート処理を行うことで保護と寿命の延長が図られます。
クロメート処理は、以下のような目的で亜鉛メッキされた部品に行われます。
亜鉛メッキの表面にクロメート皮膜を形成することで、金属の酸化と腐食を防ぎます。
クロメート皮膜は亜鉛と同様に外部から部品を守る役割を果たします。
クロメート処理は透明なものから黄色や緑色などさまざまな色で実施されることがあります。これによって、亜鉛メッキ部品の外観や色を調整し、顧客の要求に合わせることが可能ですです。
2.工業用クロムメッキの基本
工業用クロムメッキは、様々な産業分野で広く使用されている表面処理技術の一つです。
2.1.クロムメッキの概要
クロムメッキは、製品の表面に金属クロムを被覆するプロセスです。 このプロセスにより、製品の表面に硬質で耐食性のある金属クロムのメッキ皮膜が形成されます。
2.2.クロムメッキの主な用途
部品を酸化や腐食から保護し、耐食性を向上させます。
表面の耐摩耗性を高め、摩耗に対する耐久性を向上させます。
メッキ後に仕上げ研磨を行うことで美しい光沢を持たせる事ができます。
3.薄膜技術の種類
3.1.PVD(真空メッキ)とは
PVD(Physical Vapor Deposition)は、物理的なプロセスを使って薄膜を表面に堆積させる表面処理技術の一種です。PVDは真空状態下で材料を加熱し、蒸発させ、その蒸気を基板表面に堆積させます。
3.2.CVD(気相メッキ)とは
CVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相堆積)は、気相中の化学的な反応を利用して薄膜を表面に形成する表面処理技術の種類です。CVDプロセスでは、ガス状の前駆体化合物が基板表面に供給され、熱やプラズマなどのエネルギー源を用いて反応を促進し、その結果、膜が基板上に成長します。
3.3.DLC(ダイアモンドライクカーボン)とは
DLC(Diamond-Like Carbon、ダイアモンドライクカーボン)は、炭素と水素を主成分とする薄膜コーティング材料で、その名の通り、その特性がダイアモンド(硬度と耐摩耗性が高い)に似ていることから工業製品や機械部品などの耐摩耗性を向上させるために広く使用されています。
4.工業用クロムメッキの薄膜技術への応用
4.1.工業用クロムメッキの薄膜技術の応用分野
工業用クロムメッキの薄膜技術は、様々な分野で利用されています。 以下に、その主要な応用分野を紹介します。
自動車部品にクロムメッキが広く使用されています。これにより、部品の耐久性や美観が向上します。
航空機の部品やエンジン部品に関しては、クロムメッキは高温環境での耐久性と耐腐食性を提供します。これは航空機の安全性と信頼性を目的とする重要な要素です。
医療機器の一部にクロムメッキが応用されております。クロムメッキにより耐久性が向上し、清潔で優しい表面が提供されています。
4.2.自動車産業、航空産業、機械部品などへの影響
工業用クロムメッキは、その硬度、耐磨耗性、耐腐食性、導電性などの特性から、自動車産業、航空産業、機械部品製造などの分野において重要な影響を持っています。
自動車産業 多くの部品に工業用クロムメッキは使用されています。例えば、エンジン部品、ステアリング軸、バルブステム、シリンダーピストン、ブレーキキャリパー、クランクシャフトなどがあります。硬質クロムメッキはこれらの部品に耐摩耗性特性と耐腐食性を提供し、エンジン性能と制動性を向上させます。
航空産業 高温、高圧、高摩擦の環境下において工業用クロムメッキ重要な材料です。エンジン内部の部品や燃料系統の部品、ホイールのハブ、ギア、ピン、ボルトなどに工業用クロムメッキが適用されます。硬質クロムメッキは高温、高圧、高摩擦の環境下でも信頼性を維持できるように、航空機の安全性と性能に貢献します。
機械部品製造業 工業用クロムメッキは工具ベアリングやギア、シャフト、ロッド、ピストン、ボルト、ナットなどの部品に広く使用されています。これは製造業の効率性と品質に貢献しています。
工業用クロムメッキはこれらの産業で非常に重要で、製品の性能、耐久性、および信頼性を向上させる役割を果たしています。
5.工業用クロムメッキの将来展望
5.1.薄膜技術と工業用クロムメッキの未来
工業用クロムメッキにおいて、その製造プロセスに有害な化学物質を使用するため、環境に対する影響が懸念されています。将来的には、環境規制が強化され使用を制限される可能性があります。これらの環境規制により工業用クロムメッキの製造方法が変わる可能性があります。
5.2.持続可能性、新たな分野への展開に向けて応用の展望
金属クロムは高温に耐える性質があり、太陽熱発電プラントや地熱発電所などの高温環境で使えます。将来的には、これらのエネルギー産業でクロム製材料やコーティングが利用され、効率的なエネルギー変換の実現に貢献する可能性があります。
工業用クロムはその特性から様々な分野で新たな応用が可能であり、技術の進歩や市場のニーズに応じて新しい展望が広がっていくでしょう。環境への配慮や持続可能性を考慮した応用が重要になります。
6.まとめ
工業用クロムメッキに関する情報を詳細に説明してきました。
以下はそのまとめです。
工業用クロムメッキには様々な呼び名があり、硬質クロムメッキ、ハードクロムメッキ、工業用ハードクロムメッキ、ICr、白上げなどが含まれます。
ニッケルクロムメッキは、光沢性と耐食性に優れており、装飾クロムとも呼ばれます。 主に外観向上のために使用され、金属部品や製品の表面に高光沢のメッキ皮膜を形成します。
クロメート処理は亜鉛メッキの表面にクロメート皮膜を形成し、腐食から保護するプロセスです。さまざまな色で施され、外観を調整し、亜鉛メッキ部品の性能を向上させます。
工業用クロムメッキは、様々な産業分野で広く使用されており、部品の耐摩耗性や耐腐食性、美観を向上させる役割があります。
薄膜技術にはPVD(真空メッキ)、CVD(気相メッキ)、DLC(ダイアモンドライクカーボン)などがあり、用途によって使い分けがされています。
自動車産業、航空産業、機械部品製造などの産業で工業用クロムメッキが重要な役割を果たしており、製品の性能と耐久性を向上させています。
展望では、環境規制に対応するための製造方法の変化や、新たな応用分野での利用が期待されています。
工業用クロムメッキは多くの産業にとって重要な役割を果たし、その将来には持続可能性と新たな応用が期待されている技術です。 当社でも工業用のクロムメッキを対応しております。
一般的な金属への工業用クロムメッキはもちろんですが、チタン材料への工業用クロム、
クラックの無い工業用クロムメッキを独自の技術としてご提供しております。
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【著者のプロフィール】
1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。
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