【メッキ技能士直伝】金属表面を強化&美しく!メッキ加工の役割と方法まとめ
- コネクション
- 2023年8月16日
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更新日:10 時間前
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メッキとは?身近な製品を支える表面処理技術
「メッキが剥がれた」という表現は、体裁だけを取り繕っていたものの本性が現れる…といったあまり良くない意味で使われることがあります。しかし、実際のメッキ加工は決して“上辺だけ”ではありません。むしろ確立された技術として、私たちの生活や産業を長年支え続けています。
実は身の回りにあふれているメッキ製品
普段あまり意識されませんが、メッキ加工された製品は驚くほど多く存在します。たとえば、家電・自動車部品・アクセサリー・電子機器の端子など、日常生活に欠かせない製品の多くがメッキによって性能や耐久性を高めています。
もしメッキがなければ、現在の便利な生活を実現する多くの製品は成立しないでしょう。
メッキは「表面処理技術」のひとつ
メッキは「表面処理技術」に分類されます。これは金属や樹脂などの表面に加工を施し、耐食性・耐摩耗性・外観を改善するための技術です。同じ表面処理でも、塗装や熱処理と比べてメッキには独自の強みがあります。
本記事でわかること
本記事では以下についてご紹介します。
メッキ加工の基本的な仕組み
他の表面処理技術との違い
メッキを施すことで得られるメリット
「メッキとは何か?」「なぜメッキが必要なのか?」をあらためて理解するきっかけにしていただければ幸いです。
■INDEX■
・メッキとは
・メッキに使用する金属
・耐食性の付与
・機能性の付与
・装飾性の付与
・電解メッキ
・無電解メッキ
・その他の種類
・メッキ以外の表面処理
・メッキと他の表面処理との違い
1.メッキ加工処理とは
1.1.メッキとは

材料の表面に加工を行い、機能を付与する技術を「表面処理加工」と呼びます。
「たかが表面」と思われがちですが、表面を処理することで耐久性や性能が大きく変わります。
例えば、錆びやすい金属に表面処理を行うと、腐食を防ぎ長寿命化できます。さらに硬度を上げたり、電気や熱を通しやすくするなど、多様な機能を持たせることも可能です。
その中でも最も広く使われているのが メッキ加工 です。
メッキとは、素材の表面に金属の薄い膜(皮膜)を付着させる技術です。紀元前から利用されてきた歴史ある技術であり、現代でも家電・自動車部品・アクセサリー・建築材など、あらゆる分野で欠かせません。
本記事では、このメッキの種類や目的について詳しく解説します。
1.2.メッキに使用する金属

メッキにはさまざまな金属が使われます。一般的に「〇〇メッキ」と呼ばれる場合、〇〇には皮膜に用いられる金属の名前が入ります。
代表的な金属は以下の通りです。
金メッキ:美しい外観だけでなく、優れた耐食性・電気伝導性・熱伝導性を持つ
銀メッキ:導電性が非常に高く、電子部品や接点に利用される
銅メッキ:導電性に優れ、はんだ付けの下地や電鋳などに用いられる
ニッケルメッキ:耐食性・耐摩耗性があり、下地や装飾に多用
クロムメッキ:光沢が美しく、硬度が高いため装飾性と耐摩耗性を両立
亜鉛メッキ:鉄を錆から守る「防錆用」として最も広く利用される
スズメッキ:耐食性に優れ、食品容器や電子部品などに使われる
金属によって変わるメッキの役割
金属の性質が異なるように、メッキによって付与できる機能も変わります。
例えば、金メッキは「見た目の高級感」が注目されがちですが、実際には電気伝導性や耐食性といった実用的な機能も持ち合わせています。そのため、見えない部分の電子部品などでも金メッキが使われているのです。
同じように、銀・銅・ニッケル・クロムなど、それぞれの金属が持つ特性を活かして目的に応じたメッキが選ばれます。
2.メッキ加工処理の目的
2.1.耐食性の付与

耐食性を高めるメッキ
メッキの最も代表的な目的は 耐食性(防錆・防食) です。鉄鋼などの金属は強度が高い一方で、錆や腐食に弱いという欠点があります。せっかく頑丈な材料でも、錆びて壊れてしまっては意味がありません。
そこで表面に金属皮膜をつけることで、素材を錆や腐食から守ることができます。
亜鉛メッキ(犠牲防食)
亜鉛は鉄よりイオン化傾向が高く、先に反応して腐食していきます。その結果、鉄本体は守られるため「犠牲防食メッキ」と呼ばれます。代表的な例が「トタン(亜鉛メッキ鋼板)」です。
スズメッキ(被覆防食)
スズは耐食性が高く、その皮膜で素材を覆うことで鉄を錆から守ります。ただし、皮膜に小さな穴が空くと、そこから錆が進んでしまう点には注意が必要です。このスズメッキは「ブリキ」として古くから食品容器などに利用されてきました。
その他の耐食メッキ
亜鉛やスズ以外にも、クロムメッキやニッケルメッキなど、耐食性を目的にしたメッキは多く存在します。用途やコストに応じて適切な種類が選ばれています。
2.2.機能性の付与

硬度を高めるメッキ
メッキの目的の一つに 硬度の向上 があります。
たとえばアルミニウムは「軽くて強い」優れた素材ですが、表面は柔らかいため傷がつきやすく、摺動部では摩耗が進みやすいという欠点があります。そこでアルミニウムの表面にニッケルメッキやクロムメッキを施すと、硬度が向上し、耐久性や耐摩耗性を大幅に改善できます。
電気的特性を付与するメッキ
本来は電気を通さない素材にも、メッキによって電気伝導性を持たせることができます。この性質は電子部品や接点など、電気的な信頼性が求められる分野で広く利用されています。
また、金属の種類によっては熱伝導性を向上させることも可能です。たとえば鍋の裏面に見られる金属光沢のある処理は、熱伝導性を高めて効率よく加熱する目的で行われています。
その他の機能
メッキの機能は耐食性や硬度向上だけではありません。目的に応じて、次のような特性を付与することも可能です。
磁性の付与
電磁シールド性の確保(電子機器のノイズ対策)
はんだ付け性の向上(電子部品の接合を安定化)
潤滑性の付与(摩擦や摩耗の低減)
このようにメッキは、用途に合わせて多様な機能を素材に与えることができる万能な表面処理技術です。
2.3.装飾性の付与

装飾性を高めるメッキ
メッキと聞いてまずイメージする方が多いのが、この 装飾目的 でしょう。金属特有の光沢や色合いは、人の目に美しさや高級感を感じさせます。
見た目を向上させるメッキ
製品の外観を美しく仕上げるために、金や銀などのメッキが広く使われています。有名な例としては、オリンピックの金メダル。実は純金ではなく、銀の素材に金メッキを施して作られているのです。
コストと重量のメリット
素材全体を高価な金属で作らずとも、表面にメッキを施すことで見た目の美しさを得られます。そのため、コスト削減や軽量化の面でも大きな利点があります。
多様なデザイン表現
装飾用メッキは金や銀だけではありません。クロムメッキの鏡面仕上げは自動車の外装などで定番ですし、近年では黒色メッキやカラーメッキなど、金属色以外の多様な表現も可能になっています。
このようにメッキは、製品のデザイン性や付加価値を高める重要な技術でもあるのです。
3.メッキ加工の種類
3.1.電解メッキ

メッキ加工の種類:プロセスによる分類
同じ金属を使ったメッキでも、どのようなプロセスで皮膜を形成するかによって、仕上がりや機能に違いが生まれます。ここでは代表的な加工方法を順番に見ていきましょう。
電解メッキ
最も広く利用されているのが 電解メッキ です。
基本原理
電解質の水溶液に素材(陰極)とメッキ金属(陽極)を浸し、電流を流すことで陽極の金属イオンが陰極に移動し、表面に皮膜を形成します。
特徴
メリット
比較的短時間で加工でき、低コスト
金・銀・銅・ニッケル・クロム・亜鉛・スズなど幅広い金属に対応
工業用途から装飾用途まで多彩に活用可能
デメリット
電流の流れ方によって、皮膜が均一になりにくい
3.2.無電解メッキ

無電解メッキ
無電解メッキは、電流を使わずに 化学反応の力で金属皮膜を形成する方法 です。電解メッキと違い、素材を水溶液に浸すだけで反応が進み、表面に皮膜が付着します。
種類と仕組み
還元メッキ還元剤を利用して金属イオンを析出させる方法。最初は素材表面が触媒となり、その後は形成された皮膜自体が触媒となるため、均一で厚みのあるメッキが可能です。
置換メッキ溶液内で素材表面が溶け出した部分に金属が置き換わる方法。薄い皮膜しか得られませんが、シンプルなプロセスで行えます。
特徴
メリット
複雑な形状でも皮膜を均一に形成できる
電気を通さない樹脂やセラミックスにも適用可能
耐食性や耐摩耗性、電気特性の付与に有効
デメリット
電解メッキに比べて 時間とコストがかかる
プロセス管理がやや難しい
代表例
代表的なものは 無電解ニッケルメッキ。アルミニウム製品に耐食性・耐摩耗性を与えたり、電子部品のセラミックス基板やハードディスクなど、精密機器分野で広く利用されています。
3.3.その他の種類

その他のメッキ方法
電解メッキや無電解メッキ以外にも、用途に応じたさまざまなメッキ方法があります。
溶融メッキ
仕組み融点が比較的低い亜鉛・アルミニウム・スズなどを高温で溶かし、素材を浸して皮膜を形成します。
特徴・用途
特に 溶融亜鉛メッキ は、建築用の鉄鋼構造材で広く利用される代表的な防食方法
高温で行うため、素材が熱による影響を受けやすく、変形の可能性がある
主に耐食性向上を目的とした工業用途に適する
真空蒸着メッキ
仕組みメッキ素材をガス化し、真空中で基材に蒸着させて皮膜を形成します。
特徴・用途
クロームやアルミニウムなどを蒸着可能
工業用途から装飾用途まで幅広く利用される
液体を使わないため、乾式メッキとして分類される
湿式メッキと乾式メッキ
電解メッキ・無電解メッキ・溶融メッキ:液体内で行う → 湿式メッキ
真空蒸着メッキ:液体を使わずに行う → 乾式メッキ
用途や加工環境に応じて、最適な方法を選ぶことが重要です。
4.他の表面処理との違い
4.1.メッキ以外の表面処理

メッキ以外の表面処理
メッキ以外にも、製品の性能や見た目を向上させる表面処理技術はいくつかあります。
塗装
仕組み塗料を素材表面に塗布して皮膜を作る方法
種類
ハケやローラーで塗る一般的な塗装
塗料を霧状に吹き付ける吹き付け塗装
高温で塗料を表面で固化させる焼付塗装
特徴
簡単に装飾や保護ができる
素材を選ばず手軽に施工可能
耐久性や機能性はメッキほど高くない
アルマイト処理(陽極酸化処理)
仕組みアルミニウムの表面に人工的に酸化皮膜を生成させる方法
特徴・用途
耐食性や耐摩耗性を向上
着色も可能で、装飾用途にも利用
主にアルミニウム製品に適用
化成処理
仕組みクロメート処理やジンケート処理など、化学反応で皮膜を形成する方法
特徴・用途
耐食性向上や下地処理として使用
金属素材に応じて最適な処理方法を選択
4.2.メッキと他の表面処理との違い

メッキと他の表面処理の比較
メッキ以外の表面処理方法とメッキには、それぞれメリット・デメリットがあります。ここでは代表的な塗装と比較してみます。
メッキの特徴
付与できる機能:耐食性、装飾性、硬度向上、電気・熱特性など多機能
耐久性:密着性が高く簡単には剥がれないため長期使用に向く
素材選択:適用できる素材が限られる場合がある
コスト:塗装に比べると高価
塗装の特徴
付与できる機能:主に装飾性や耐食性向上
施工性:簡単な用具や塗料で手軽に施工可能
耐久性:機能や耐久性はメッキほど高くない
コスト:比較的安価
比較ポイント
メッキは手間とコストはかかるが、多機能で耐久性に優れる
塗装は手軽で低コストだが、機能は限定的
装飾用途では、メッキは金属色主体、塗装やアルマイト処理は多彩な色を表現可能
5.メッキのメリットとデメリット

本記事の内容からメッキのメリットとデメリットを抽出すると、以下のようになります。
メリット
密着性に優れる:簡単には剥がれず、長期使用に耐える
耐食性が高い:製品の耐久性向上に大きく寄与
金属独自の美しさ:色合いや光沢があり、装飾性に優れる
多機能性:装飾や耐食性以外にも、硬度向上や電気・熱特性などの工業的機能を付与可能
デメリット
適用素材が限定される:すべての素材に施工できるわけではない
やり直しが困難:失敗した場合の修正にはリスクがある
設備・コストが大きい:大規模な設備や高コストが必要
カラーバリエーションが限定的:金属色中心で多彩な色表現は難しい
製品へのメッキをお考えの方は、このあたりのメリットとデメリットを十分に考えて活用してみてください。
6.まとめ
メッキ加工について、さまざまな種類の紹介やメリット・デメリットについてご紹介してきました。
以下はそのまとめです。
メッキとは金属の皮膜を素材表面に付着させる技術で、さまざまな用途がある。
メッキの目的としては、耐食性、装飾性、他ざまざまな工業機能の付与がある。
メッキには電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなどの種類がある。
皮膜の金属やメッキ方法によって付与される機能性が違うので、目的に応じてメッキの種類を選択することが重要である。
メッキにも多くのメリットとデメリットがあり、用途に応じて他の表面処理との使い分けを行うことも重要である。
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【著者のプロフィール】

1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。
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