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【メッキ技能士直伝】硬質クロムメッキの特性と用途。高硬度・耐摩耗性を活かした産業向けメッキ技術の全貌

更新日:8月26日

硬質クロムメッキは、「工業用クロムメッキ」とも呼ばれ、高い皮膜硬度と優れた耐摩耗性を持つため、機械部品や産業機器に広く利用されています。その硬度はHV750以上に達し、腐食や酸化に対する高い耐性を備えているため、過酷な環境下でも長期間使用が可能です。また、銀白色の美しい外観を持つため、装飾的な用途にも適しています。


■INDEX■


  1. 工業用クロムメッキと装飾用クロムメッキの違い

    1.1硬質クロムメッキ

    1.2装飾クロムメッキ


  2. 硬質クロムメッキの特徴

    2.1皮膜の硬度

    2.2皮膜の耐食性

    2.3皮膜の耐摩耗性

    2.4皮膜の成膜


  3. 硬質クロムメッキ皮膜の性能


  4. 種類及び記号


  5. めっき前後の加工方法の記号


 

1.工業用クロムメッキと装飾用クロムメッキの違い

硬質クロムメッキと装飾クロムメッキは、同じクロムを使用するメッキ技術ですが、その目的と特性には大きな違いがあります。クロムメッキは、大きく分けて装飾用と工業用の2種類があり、JIS規格では、皮膜硬度が750HV以上、膜厚が2μm以上のものを工業用と定義しています。


1.1硬質クロムメッキ

硬質クロムメッキは、機械部品や産業機器の耐久性を向上させるために使用されます。その主な特徴は、非常に高い硬度(通常HV750以上)と優れた耐摩耗性です。このため、シャフト、シリンダー、金型など、摩擦や衝撃にさらされる部品に広く適用されます。硬質クロムは、数ミクロンから数百ミクロンの厚さでメッキされ、機械的特性の向上を重視しています。


1.2装飾クロムメッキ

装飾クロムメッキは、美しい外観を追求した薄膜のメッキです。自動車の外装や家電製品など、見た目が重視される部品に使用されます。メッキの厚さは非常に薄く、基材を保護しながら美観を引き立てます。しかし、皮膜が薄いため、硬度や耐摩耗性はあまり高くありません。


このように、硬質クロムメッキは主に機能性を重視し、装飾クロムメッキは外観の美しさを重視したメッキ技術です。



2.硬質クロムメッキの特徴

2.1皮膜の硬度

硬質クロムメッキは非常に硬く、通常は800~1000 HV(ビッカース硬度)に達します。この高硬度により、摩耗に対する優れた耐性を持ちます。


2.2皮膜の耐食性

クロム自体の耐腐食性により、基材の金属を錆や腐食から保護します。

塩酸以外の酸、アルカリに対して腐食されにくく非常に耐食性に優れた性質を持っています。


2.3皮膜の耐摩耗性

クロムの表面は滑らかで摩擦が少ないため、機械部品の摩擦を軽減し、効率を向上させます。


2.4皮膜の成膜

硬質クロムメッキは、必要に応じて非常に厚いメッキ層を形成できます。これにより、部品の寸法補正や修復にも利用されます。当社実績では200μm成膜の実績がございます。



3.硬質クロムメッキ皮膜の性能

融点:1890℃

沸点:2200℃

熱膨張:6.2×10-6deg-1(20℃)

熱伝導率:0.16cal/cm・sec・deg(20℃)

電気抵抗:18.9μΩcm(0℃)



4.種類及び記号

​等級

記号

めっき厚さ(mm)

1級

MlCr1

0.002以上

2級

MlCr2

0.01以上

3級

MlC3

0.02以上

4級

MlCr4

0.03以上

5級

MlCr5

0.05以上

6級

MlCr6

0.1以上



5.めっき前後の加工方法の記号

日本工業規格(JIS)では、硬質クロムメッキに関する標準が定められています。

JIS H 8615ではメッキの厚さ、硬度、外観などの品質基準を規定しています。

めっき前

めっき後

バフ仕上げ

1BF

2BF

ブラスト仕上げ

1SB

2SB

グラインダ加工

1G

2G

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【著者のプロフィール】

代表取締役

1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。

30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。




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