無電解ニッケルめっきの歴史
1946年Brennerによる研究を端緒に無電解ニッケルメッキが始まりました。
無電解ニッケルメッキの種類
無電解ニッケルメッキは、リンのパーセンテージによって、特性が変化してきます。
高リンタイプ(11~12%) 耐食性、耐酸性、耐塩水性に優れる。非晶質なため非磁性。
中リンタイプ(7~10 %) 汎用性が高い。特殊素材への密着性が高くなる。非磁性だが、熱処理を施すことで磁性。
低リンタイプ(1~4%) 耐食性が劣るが、特殊場合に耐食性を発揮。ハンダ付性に優れる。磁性。
この3種類の無電解ニッケルメッキの特性については、こちらになります。
| 低リン(1〜4%) | 中リン(7〜10%) | 高リン(11%以上) |
密度(g/cm3) | 8.5 | 8.1 | 7.9 |
軟化温度(℃) | 880 | 880 | 880 |
電気抵抗(μΩ-cm) | 20~30 | 50~60 | 100 |
温度係数(μm/m/℃) | 13 | 12 | 11 |
引張強さ(MPa) | 200 | 800~900 | 750~900 |
テーバ摩耗試験(TWI) | 10~12 | 15~20 | 20~25 |
鉄鋼上での応力(kg/mm2) | 10 | ±5 | -5 |
耐塩水性(h) | 24 | 200 | 1000 |
結晶構造(析出時) | 結晶質 | 非晶質 | 非晶質 |
結晶構造(熱処理後) | 結晶質 | 結晶質 | 非晶質 |
磁気特性(析出時) | 磁性 | 非磁性 | 非磁性 |
磁気特性(熱処理後) | 磁性 | 磁性 | 非磁性 |
硬度(析出時) | HV700 | HV550 | HV550 |
硬度(熱処理後) | HV930 | HV950 | HV950 |
耐食性 | 劣る | 普通 | 良好 |
耐摩耗性 | 良好 | 良好 | 良好 |
非抵抗(μΩ・cm) | 30~60 | 60~75 | 150~200 |
ハンダ性 | 良好 | 普通 | 普通 |
無電解ニッケルメッキ(含リン率の違いによる皮膜特性)
無電解ニッケルメッキをするとさびにくい?
素材の耐食性を高めてくれる無電解ニッケルメッキ。
無電解ニッケルメッキをした場合とそうでない場合、実際にどれほど変わってくるのでしょうか?
以前、こんなお問い合わせがありました。
「下地に無電解ニッケルメッキを施し、細部までメッキを付けたいと考えています。10年後、錆びの発生はどの程度と予想されるでしょうか」
それについての回答はこちらになります。
結論からお話すると、長期の経時変化を評価したデータはございません。 ですので、推測のお話になりますが、 数年前に制作したようなサンプル見本なども腐食していませんので、長期的な耐食性は見込めるものと予想できます。
「10年後」という期間で言いますと、「クリーンルーム」のような環境でしたら、錆の発生はなく、素材の使用を期待できるものと思われます。ごみやほこりがなく、空気清浄度が確保された状態で、水分が触れるような環境でなければ、10年後も腐食は発生せずに維持できているでしょう。
また、こちらのお客様は硬質クロムメッキをすでに施しておりました。 しかし、 無電解ニッケルを下地に施すということは、無電解ニッケル+硬質クロムめっきの2層メッキになってしまいます。 この場合、素材自体を変える方法もあります。素材を腐食しにくいステンレス綱に変更することで、素材の腐食を抑えながらなおかつ硬質クロムメッキだけで対応することもできます。素材を変更することで材料費は上がりますが、トータルコスト的には抑えるということもできます。
ただ、こちらはあくまで提案事例ですので、お客様の使用する環境・目的によって変わってきます。耐食性でお困りの際は、ぜひ弊社までご相談ください。
まとめ 無電解ニッケルメッキで硬度・摩耗性・耐食性が向上!
無電解ニッケルメッキをすれば、硬度・摩耗性・耐食性の向上が可能です。
さらに、さまざまな素材、複雑な形状にも均一の膜厚でメッキができます!
はんだ付けができ、RoHS(ローズ)指令に対応(鉛フリーの素材なので安全)しています。
反対にデメリットは、
価格が安くはない
低リンタイプは耐食性に劣ることもある
お急ぎの方はこちら 直通電話 090−6819−5609
【著者のプロフィール】
1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。
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