図面の表面処理の指示で◯◯めっきやMFZn2などと表示されている図面が設計から回ってきて憂鬱になる方も多いのではないでしょうか?
初めての方にも分かりやすくめっきとは?についてご説明させて頂きます。
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めっきとは何か
めっきとは金属または非金属製品の表面に、金属の薄い皮膜を生成させる技術をめっきと言います。自動車、半導体、家電、航空機やロケットなどまでめっき製品は非常に幅広く利用されており、工業製品にはなくてはならない重要な技術です。
めっき処理の方法としては電気めっき、無電解めっき、溶融めっき、真空めっきなどがありますが、電気めっきが最も広く利用されていますが、そんな電気めっきも具体的にどんな方法かわからない事があると思います。電気めっきに限らず無電解めっき・アルマイト・溶融めっき・真空めっきなど代表的なめっき処理をわかりやすくご説明します。 めっきの歴史にご興味がある方はこちらの記事をご覧ください。 めっきって日本語って知っていましたか?
電気めっき
電気めっきは、外部電源を用いてめっき皮膜を成膜する方法です。 めっきを施したい素材へ陰極電流を流す事で陰極界面からマイナスに荷電した電子が供給され、この電子を陰極側の界面近くに存在する金属イオンが受け取って、金属として表面に皮膜を形成します。
電気めっきはめっきを施したい製品の表面に電流を流して処理を行いますが、電気が流れないプラスチックやセラミックなどに対して直接電気めっきを施す事はできません。
プラスチックやセラミックなどへ電気めっきを施す場合、無電解めっきなどで電流を流せる状態にしてからであれば電気めっきを処理することが可能です。
無電解めっき
無電解めっきとは、文字通り「外部電源を使わない」めっき処理方法です。
無電解めっきは「化学めっき」ともよばれ、化学的還元作用によりめっき処理する方法です。無電解めっきの中には置換めっき、非触媒型還元めっき、自己触媒型還元めっきなどに別れています。無電解めっきの中でも利用が多い無電解ニッケルめっきや無電解銅めっきは自己触媒還元型めっきになります。
アルマイト(陽極酸化)
アルマイトは商品名です。正式にはアルミニウムの陽極酸化皮膜(陽極酸化法)が正しい表現になります。 陽極酸化法は陽極酸化処理液中でアルミニウム製品に陽極の電流を流し電解しますと陽極側に発生する酸素により酸化皮膜が生成されます。 この酸化皮膜は電気絶縁性が高く、耐食性、耐摩耗性に優れています。 最近は樹脂サッシなどに変わりつつありますが、サッシなどの建材、カメラなどの光学機器などアルミニウム製品の表面処理法として広く利用されています。
溶融めっきとは
溶融めっきとは天ぷらめっきとも言われ融点の低い亜鉛、スズ、鉛、ハンダ、アルミニウムなどを加熱して溶かし、素材を浸漬してめっきする方法です。
【溶融めっき各種処理温度】
溶融亜鉛めっき浴温度 | 430〜450℃ |
溶融スズめっき浴温度 | 310〜330℃ |
溶融鉛めっき浴温度 | 365〜380℃ |
溶融アルミニウム浴温度 | 700℃以上 |
鉄鋼薄板に亜鉛めっきしたものはトタンと呼ばれ、スズめっきしたものはブリキと呼ばれていますが、溶融めっきされた物がこのような呼ばれ方をしますが、電気亜鉛めっきや電気スズめっきを施したものはこのような呼ばれ方はされません。 溶融めっきは電気めっきに比べめっきの膜厚が厚くなる事が特徴ですが、めっきの膜厚調整が難しい事も特徴のひとつです。 また、高温での処理になるため、素材が熱処理されてしまうなどの欠点があります。
真空めっき
真空めっきPVDとはPhysical Vapor Deposirion(物理気相成長:物理的プロセスによるめっき方法)の事で、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が含まれます。
真空蒸着
真空容器の中で金属を蒸発させて、素材表面に金属の薄膜を成膜させる方法で、カメラのレンズやサングラスのレンズ、反射鏡などに利用されています。
イオンプレーティングも真空蒸着の1つの方法で、蒸発粒子の一部を何らかの方法でイオン化し、他の中性粒子とともに素材表面に薄膜を成膜させる方法です。(成膜材料:Al,Ag,Au,Ti,Ni,Cu,Cr,Sn,In,etc.)
スパッタリング
スパッタリング法は陰極の金属を陽イオンによって飛び出させ、その飛び出した金属を処理を施したい製品側に付着、堆積させる事で薄膜が形成される方法です。 真空状態で処理を行うため、不純物の少ない薄膜形成ができる事が特徴です。(成膜材料:Cr,Cu,Ti,Ag,Pt,Au,etc.)
スパッタリング法、イオンプレーティング法は共にプラズマ現象を利用したもので、電子部品や半導体材料などの薄膜製造に利用されています。
まとめ
めっき処理方法には色々な方法があります。 電気めっき、無電解めっき、アルマイト、溶融めっき、真空めっきなど、それぞれに特徴があり一長一短がある処理になります。
電気めっきですと幅広い金属のめっき処理が施す事ができ、無電解めっきでは対応できないクロムめっきなどめっき皮膜として処理する事が可能です。 無電解めっきは化学的な還元反応を利用した方法ですので、製品の形状に依存する事なく細かな部分までめっき皮膜を成膜する事が可能です。 その他のめっき方法は皮膜硬度が飛び抜けて高い(硬い皮膜)であったり、めっきの様に素材とは異なる金属を成膜するのではなく、素材+酸化皮膜の皮膜に変化するなどの特徴を持ち合わせておりますが、ご使用の立場からすると全てを理解することは困難ですので、こんなことに使いたい、こんなめっき処理はないか?などお気軽に担当者へお問い合わせ頂けると担当者の方から目的に合っためっきをご提案させて頂きます。
お急ぎの方はこちら 直通電話 090−6819−5609
【著者のプロフィール】
1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。
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