近年、注目を浴びるメッキの一つとしてパラジウムメッキがあります。
パラジウムメッキは金メッキの代替品になり得るメッキで、その特性から電子部品などの工業用途や装飾用途に使用されます。
パラジウムメッキにはパラジウムのみのメッキから成る純パラジウムメッキとパラジウムと他の金属の合金からなるパラジウム合金メッキがあります。
本記事では、パラジウムメッキの特徴を種類ごとに紹介し、その用途についてもご説明します。
(目次)
1.パラジウムとは
2.パラジウムメッキの特徴と用途
・機能面及び経済面
・環境面
・装飾での用途
3.パラジウムメッキの種類
・純パラジウムメッキ
・パラジウム・ニッケル合金メッキ
・その他の合金メッキ
4.パラジウムメッキの膜厚
・薄付け
・厚付け
5.まとめ
1.パラジウムとは
パラジウム(元素記号:Pd)という金属は白金族に含まれ、元素番号46の物質です。
ロシアや南アフリカなどが産出国として知られています。
単体では銀白色をしており、水素を取り込む水素吸蔵性や比較的融点が低いといった特徴を持っています。
身近な例だと、歯科で扱われる銀歯の素材などに使われることもあります。
また、工業的な用途に使われることもあり、単体では自動車の有害物質を取り除く際の触媒や電気電子部品などにも用いられます。
メッキ分野では、パラジウムメッキやパラジウム合金メッキも存在し、電子材料を中心に使用されています。
2.パラジウムメッキの特徴と用途
2.1.機能面および経済面
パラジウムメッキは、工業分野では電子材料の表面処理として用いられることが多いです。
金の代用品として広く知られ、特に金価格が高騰するときなどには、金メッキを薄くするための手段としてこれまでにもしばしば注目されることがありました。
硬度や耐摩耗性が優れていることもあり、特にコネクターのような電気接点部品へ適用によく使われてきました。
比較的身近な例だと、オーディオ部品などのプラグで銀色のものはパラジウムメッキが使用されていることもあります。
電子回路の構成には不可欠なはんだ付け性やワイヤボンディング性も注目されており、電子部品へのさらなる適用も行われています。
昨今の電子部品はどんどん高密度になってゆくため、金価格の高騰は本体の価格にも大きく影響してしまうことも一つの要因です。
2.2.環境面
近年は環境保護の観点から、鉛フリーへの動きが活発です。
特にヨーロッパではRoHS指令という環境指標があり、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムなど原則使用禁止の物質もあります。
電子材料を接合するはんだにおいて、従来用いられていた共晶はんだは鉛を含むため、世界的にも使用ができず、それに代わる鉛フリーはんだの適用が増えています。
共晶はんだはスズと鉛で組成されていますが、鉛フリーはんだはほとんどがスズ、他に銀や銅といった組成から成り立っています。
組成が違うため、従来のはんだと鉛フリーはんだでは性質も異なり、電子部品全般に鉛フリーはんだと相性の良い材料を選ぶ必要があります。
パラジウムメッキは鉛フリーはんだとの相性がよく、そのような環境的観点からも注目される技術です。
2.3.装飾での用途
パラジウムメッキが活躍する分野は電気電子分野がほとんどですが、硬くて見た目も白く美しいことから、メガネフレームやネックレスチェーン等装飾品にも使用されることもあります。
パラジウムは化学的に安定した金属なため、美しい見た目が酸やアルカリに反応して変色することもなく、さらに純パラジウムであれば金属アレルギーなどの心配もないことが大きな理由です。
3.パラジウムメッキの種類
ここまでパラジウムメッキとしてご紹介してきたものですが、厳密には純パラジウムメッキとパラジウム合金メッキがあります。
合金メッキとは、金属の合金と同様、金属と金属の化合物がメッキされたものです。
純金属と合金が異なった性質を持つこともあるように、それぞれについて特有の性質を持っています。
代表的なパラジウムメッキの種類について、ご紹介します。
3.1.純パラジウムメッキ
その名の通りパラジウムの比率がほぼ100%のメッキです。
パラジウムは白金族なので、特有の高貴な色調を持っています。
非磁性で高い電気伝導性を持ち、はんだ付け性も良好です。
このような特徴はスイッチ部品やコネクター部品のような用途に適しており、実際に使用されています。
また、大気中で錆びたり変色することもなく、化学的安定度も高いため、酸やアルカリに侵されることもありません。
耐熱性もあり、例えば、高温に長時間さらされても変色することはありません。
膜厚が薄い場合でも硬度や耐熱性があり、電子部品において金メッキの下地として使用し、金メッキの膜厚を薄くするのにも適しています。
この使用法を薄付けと言いますが、詳細は後ほどご説明します。
なお、パラジウムは触媒活性が強すぎるため、表面に有機物残渣を生じることがあります。
弊社で処理可能な素材は、ステンレス、鉄、銅、銀、洋白、チタンなどです。
また、サイズはA4サイズ程度まで対応できます。
3.2.パラジウム・ニッケル合金メッキ
合金メッキの中で最も一般的なものはパラジウム・ニッケル合金メッキです。
含有量としては、70%程度がパラジウムで30%程度がニッケルになります。
純パラジウムメッキと比べて硬度が高く、純パラジウムメッキの硬度がHV250~300なのに対し、パラジウム・ニッケル合金メッキの硬度はHV330~380です。
また、ピンホールが少なく、耐食性も向上します。
ピンホールとは、メッキ皮膜表面に生じる凹状の欠陥のことで、これが生じてしまうとその箇所から錆が発生してしまう場合があります。
また、純パラジウムメッキで発生する有機物残渣は発生しません。
かつては時計やメガネフレームなどの装飾用途にも多く用いられていましたが、アレルゲンの一つでもあるニッケルの使用が規制されることも増え、現在ではあまり装飾用には使用されません。
現在でも工業用途として硬質金メッキの代替として使用され、コネクターなどに重宝されています。
また、硬度や耐摩耗性に優れることから、摺動性(接触部分の動きやすさ)を求められる箇所に使用されることもあります。
弊社で処理可能な素材はステンレス、鉄、銅、銀、洋白、チタンなどです。
また、サイズはA4サイズ程度まで対応できます。
3.3.その他の合金メッキ
パラジウムはさまざまな金属との合金を作りやすく、他にも合金メッキの開発が盛んに行われています。
パラジウム・コバルト合金メッキも純パラジウムメッキより硬度の高い合金メッキです。
コバルトは磁気特性を有しているので、磁気記憶媒体などの用途への拡大も期待される方法です。
パラジウム・亜鉛合金メッキは、装飾品のニッケルアレルギー対策品として開発された方法です。
その他、パラジウム・銅、パラジウム・鉄、パラジウム・銀などの合金メッキが開発されています。
4.パラジウムメッキの膜厚
パラジウムメッキは膜厚の比較的薄い薄付け(数μm以下)と膜厚の厚い厚付け(数μm以上)でも用途や扱いが変わることがあります。
4.1.薄付け
薄付けのパラジウムメッキの代表的な活用例は、ICリードフレームへのメッキです。
これは純パラジウムメッキでの活用になります。
リードフレームとは、半導体素子を固定して外部配線と接続するための部品のことです。
従来は、中央ワイヤーボンディング部は銀メッキ、部品周辺にある接合部にはんだメッキを用いていたのですが、前にも述べた通り、環境保護的観点から、鉛はんだの使用に厳しい制限がかけられるようになりました。
この流れにおいて、リードフレームは全面にニッケル、パラジウム、金の順にメッキをする方法が主流になりました。
薄いパラジウムメッキがあることで、耐熱性の向上、高価となる最上部の金メッキの薄膜化も実現できます。
電子部品として不可欠な鉛フリーはんだとの相性やワイヤーボンディング性もパラジウムの存在によって向上します。
また、この方法だと中央部と周辺部でメッキを分ける必要がなく、リードフレーム全面を一括のメッキで済ませることができることも利点です。
最近では、リードフレーム以外にもLED関連部品やセラミックデバイスなどにもこの方式が採用されています。
パラジウムメッキの薄膜化の要求は現在も強く、その技術は日進月歩で進んでいます。
4.2.厚付け
・純パラジウムメッキの場合
一方、より膜厚を厚くする厚付けパラジウムメッキにはその実現性に一つ問題点があります。
最初に述べたように、パラジウムには水素吸蔵性という性質があります。
この水素吸蔵が行われるとメッキ被膜が膨張する一方、メッキ後にはこの水素が空気中に揮散されることがあり、この変化においてメッキにクラックが生じてしまうのです。
このことがパラジウムメッキの厚付けには長く課題として立ちふさがりましたが、近年、メッキ液の開発などが功を奏し、純パラジウムメッキであっても厚付けが可能になってきています。
弊社でも純パラジウムメッキの厚付けには対応しており、最大膜厚4μmでクラック等なくメッキ可能な実績があります。
・パラジウム・ニッケルメッキの場合
パラジウム・ニッケル合金メッキの場合、ニッケルの含有量によって純パラジウムメッキのような水素吸蔵性によるクラックを抑えることができます。
このようなパラジウム・ニッケルメッキの厚付けメッキは、電鋳という用途で使用されることがあります。
電鋳とは、電気メッキ同様電気化学反応を利用するのですが、マスター品の表面を厚メッキし、それを剥離して複製品を作る方法です。
従来、ニッケル電鋳製品が多く用いられていましたが、より耐食性が求められることが増え、それを実現できるパラジウム・ニッケルメッキが使用されることがあります。
厳密に言うとメッキとはまた別の電鋳ですが、光ディスクやマイクロマシンの部品などの用途に用いられます。
5.まとめ
本記事ではパラジウムメッキについてご説明してきました。
以下はまとめです。
パラジウムメッキは金メッキの薄膜化に伴い用いられ、硬度や耐熱性の向上も見られる。
昨今の環境的観点も手伝い、鉛フリーはんだとの相性もよく、ワイヤーボンディング性も良好なパラジウムメッキはリードフレームなどの電子部品に広く用いられている。
パラジウムメッキには純パラジウムメッキとパラジウム合金メッキがあり、パラジウム合金メッキの中でもパラジウム・ニッケル合金メッキは耐食性向上などの理由から使われることがある。
パラジウムメッキにはパラジウムの膜厚によって薄付けと厚付けがあるが、純パラジウムメッキの場合、厚付けはクラックの発生の可能性があり、厚さには限界もある。
弊社では、純パラジウムメッキ及びパラジウム・ニッケル合金メッキに対応しております。
処理可能な素材は、ステンレス、鉄、銅、銀、洋白、チタンなどで、サイズはA4サイズ程度まで対応できます。
また、厚付けの純パラジウムメッキは最大膜厚4μmまでクラック無しで行った実績があります。
ご検討の際は是非ご相談ください。
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