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​アルミニウム及びアルミニウム合金の硬質陽極酸化皮膜 
JIS H8603

​アルミニウム及びアルミニウム合金の硬質陽極酸化皮膜 JIS H8603は、1994年に第1版として発行されたISO10074,Specification for hard anodic oxidation coatings on aluminium and its alloysを元に技術的内容を変更することなく作成した日本工業規格であるが、対応国際規格には規定されていない規定項目(表示)を日本工業規格として追加した。

適用範囲

この規格は、アルミニウム及びアルミニウム合金の展伸材、鋳造材などの素地に耐摩耗性などの目的で施した主として硬質陽極酸化皮膜の有効面について規定する。

1.定義

この規格で用いる主な用語の定義は、JIS H0201によるほか次による。

a)硬質陽極酸化皮膜

低温の電解浴又は各種の有機酸を添加した特殊な電解浴を用いて処理されたアルミニウム材の陽極酸化皮膜。

通常の方法で処理された皮膜に比べ硬く、かつ、耐摩耗性に優れることを特徴とする。通常封孔処理は行わない。

なお、耐食性が要求される場合、封孔処理を行うが、この場合、耐摩耗性は低下する傾向にある。

b)耐摩耗性基準試験片

​各所で実施した耐摩耗性試験の結果に相関性をもたせるため、附属書1に示す仕様に従って作成された試験片。

2.種類

皮膜の種類は、素地の材質による。(表1)

​表1.種類

注)合金成分の関係で表1の適用が好ましくない場合は、受渡当事者間の協定によって対応する種類を変更してもよい。

3. 品質

3.1. 外観

皮膜の外観は、外観試験を行い表面性状均一でスポーリング、ふくれ、粉ふきなど使用上有害な欠陥があってはならない。

3.2. 皮膜厚さ

皮膜厚さは原則として平均皮膜厚さとする。試験は皮膜厚さ試験を行い、皮膜の厚さ及びその均一性の程度は、受渡当事者間の協定による。

備考 平均皮膜厚さとは、JIS H8680-1またはJIS H8680-2によって測定した測定点皮膜厚さ数カ所の平均値をいう。

3.3. 皮膜硬さ

皮膜硬さは、皮膜硬さ試験によって試験を行い、表2に適合しなければならない。

​3.4. 耐摩耗性

皮膜の耐摩耗性は耐摩耗性試験によって試験を行い、それぞれ表3、表4または表5に適合しなければならない。

また、試験の選択は、受渡当事者間の協定による。

3.5. 単位面積当りの皮膜質量

単位面積当りの皮膜質量は、皮膜質量試験によって試験を行い、表6に適合しなければならない。

この試験の実施は、受渡当事者間の協定による。

3.6. 耐食性

封孔処理を行った皮膜の耐食性は耐食性試験を行い、表7に適合しなければならない。この試験の実施は、受渡当事者間の協定による。

3.7. 絶縁耐力

皮膜の絶縁耐力は絶縁耐力試験を行い、その許容値及びこの試験の実施は、受渡当事者間の協定による。

​表2. 皮膜硬さ

表3 往復運動平面摩耗試験での耐摩耗性(単位%)

備考.耐摩耗性基準試験片に対する比率は次の式によって算出する。

WRWC:対摩耗基準試験片に対する比率(%)

WRWT:試験片の耐摩耗性(ds/μm)

WRWS:耐摩耗性基準試験片の耐摩耗性(ds/μm)

 

耐摩擦性基準試験片に対する式

表4 噴射摩耗試験での耐摩耗性(単位%)

備考.耐摩耗性基準試験片に対する比率は次の式によって算出する。

WRJC:耐摩耗性基準試験片に対する耐摩耗性の比率(%)

WRJT:試験片の耐摩耗性(s/μm)

WRJS:耐摩耗性基準試験片の耐摩耗性(s/μm)

耐摩耗性基準試験片に対する比率式

表5 平板回転摩耗試験での耐摩耗性(単位mg)

表6 単位面積当りの皮膜質量(単位mg/dm2)

単位面積当りの皮膜質量

​注)単位面積当りの質量は皮膜厚さ50μmの換算値である。

​表7 耐食性

耐食性

4.試験

1. 外観試験

外観試験は、通常、拡散昼光の下で行う。人工照明の下で行う場合の照度は600lx以上とする。背景は無光沢の黒、灰色などの無彩色であることが望ましい。

注)拡散昼光とは、日の出3時間後から、日の入り3時間前までの日光の直射を避けた北窓からの光をいう。

2. 皮膜厚さ試験

皮膜厚さ試験は、顕微鏡断面試験方法(JIS H8680-1)、渦電流式測定法(JIS H8680-2)による。

有効面における測定位置及び測定数は受渡当事者間に協定による。

3. 皮膜硬さ試験

皮膜硬さ試験は、マイクロビッカース試験機を用い、皮膜の断面についてJIS Z2244の規定に従って行う。試験荷重は0.490Nとするが、皮膜厚さの薄い場合または、比較的軟質の皮膜では0.245Nとしてもよい。

なお、皮膜の厚い場合、皮膜断面の中央または素地側を測定する。試験値は、通常3回以上の繰返し試験の平均値とする。

​4. 耐摩耗性試験

耐摩耗製試験は次のいずれかによる。

a. 往復運動平面摩耗試験

往復運動平面摩耗試験は、JIS H8682-1に規定する方法による。

なお試験は、耐摩耗性基準試験片と試験片双方につき同規格の表2に示す硬質皮膜の試験条件に従って行う。

b. 噴射摩耗試験

噴射摩耗試験は、JIS H8682-2に規定する方法による。

なお試験は、耐摩耗性基準試験片と試験片双方につき同規格の表2に示す硬質皮膜の試験条件に従って行う。

c. 平板回転摩耗試験

平板回転摩耗試験(テーバ式摩耗試験)は、附属書2(規定)に示す試験方法に従って行う。

なお試験条件は、附属書2(規定)の5.または6.のいずれかによる。その選択は受渡当事者間の協定による。

5. 皮膜質量試験

皮膜質量試験は、JIS H8688に規定する方法による。

6. 耐食性試験

耐食性試験は、JIS Z2371に規定する中性塩水噴霧試験による。

7. 絶縁耐力試験

絶縁耐力試験は、JIS H8687に規定する方法による。

5.検査

皮膜の検査は、各種試験によって試験を行い、品質の規定に合格しなければならない。

​対象となる試験片のサンプリング方法及びロットの大きさは、処理施設の規模、製品の種類、大きさ、数量などを考慮して受渡当事者間の協定によって定める。

6.表示

送り状などに次の事項を表示する。

a. 皮膜の種類

b. 製造番号

c. 加工業者またはその省略

7.発注書または加工仕様書への記載事項

発注者は、発注書または加工仕様書に次の事項を記載しなければならない。

a. 皮膜の種類

b. 素地の材質(成分、質別)

c. 有効面の範囲(図面または実物見本によって指示する。)

d. 必要な場合、マスキング面の範囲(図面または実物見本によって指示する。)

e. 必要な皮膜厚さと許容範囲

f. 好ましい接点の位置

g. 必要な場合、特定の前処理または後処理

h. 必要な場合、処理前後の寸法及び許容範囲

i. その他特に必要とする事項

出典:JISハンドブック

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