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【メッキ技能士直伝】銅メッキのポテンシャルと2つの大きな役割

更新日:2023年8月26日

銅は不思議な魅力のある金属です。

独特の見た目はよく知られたものですが、さらに柔らかく導電性や熱伝導性が高いという独自の特徴も持っています。そんな特徴を活かし、銅メッキはいわゆる機能メッキとして役割を果たすことが多いです。


銅メッキの典型的な使われ方は、大きく分けて2つです。

1つは導電性目的、もう1つは他のメッキの下地メッキです。


本記事では、この銅メッキの2大用途について詳しく紹介します。

銅メッキをご検討中の方は是非御覧ください。



■INDEX■


  1.1 銅のポテンシャル

  1.2 銅メッキの特徴

  1.3 銅メッキの2大用途

  2.1 導電性とは

  2.2 銅メッキ鉄線

  2.3 配線基板(不導体への銅メッキ)

  3.3 下地メッキとは

  3.4 下地メッキとしての銅メッキ


 

1. 銅メッキとは

1.1 銅のポテンシャル


銅という金属は、私たちの生活の中にも多く関わりのある金属です。

一般的に金属というと、鉄やアルミニウムなどの構造用のものが思い浮かびがちですが、銅はそれらとは違った特徴で私たちを支えてくれています。


例えば、銅線のように電気をよく通す性質によって、銅は電化製品に欠かせないものです。

また、電気だけでなく、熱を通しやすいことでも知られており、それを利用した調理用具などもあります。これらの性質は、金属内の自由電子の動きと関連があります。


簡単に言うと、金属内の自由電子が動きやすく、与えられたエネルギーを他の金属より活発に伝えてくれるのです。電気を通しやすい性質のことを導電性、熱を通しやすい性質のことを熱伝導性といいます。なお、銀もこの性質を持っているのですが、銀より安価な銅は、より私たちの生活の中で広く用いられています。


構造的に強いわけではない銅が、私たちの生活の中で多く用いられているのは、このような機能的特徴からと言えます。


1.2 銅メッキの特徴


銅の皮膜を金属の表面に付着させる銅メッキも、広く普及した技術です。

ただし、銅メッキの目的は、メッキというとよく言われるような、耐食性や耐摩耗性のような耐久性を付与するものではありません。銅という金属が決して酸化しにくいわけでも、硬いわけでもないためです。


その代わり、銅メッキには銅自体と同じように優れた導電性や熱伝導性があります。

つまり、金属などの表面に銅の導電性や熱伝導性を付与することで、他の金属に銅と似た性質を持たせることができるのです。


このように、構造性や耐久性ではなく、なにか特定の機能性を持たせるメッキのことを機能メッキといいます。


1.3 銅メッキの2大用途


実際に銅メッキを行う目的で、代表的なものは2つです。

1つは既に出てきた導電性の目的です。

導電性の決して良くない物質を部分的にでも電気を通しやすくするために銅メッキを使用することなどがあります。また、方法によっては銅メッキは不動態と呼ばれるそれ自体電気を通さない物質にも行うことができ、樹脂やセラミックスのような物質の表面に導電性を付与することもできます。


もう1つは、下地メッキです。

これは表立った機能にはなりませんが、銅メッキの大きなや割の1つになります。

下地メッキとは、他のメッキを行う前に下地としてメッキを行い、本メッキの密着度や耐食性を上げて安定したメッキとする役割のものです。


この目的で銅メッキが選ばれることもとても多く、これは銅メッキが「縁の下の力持ち」と言われる所以です。本記事では、これら2つの用途を銅メッキの2大用途として、もう少し説明してゆきます。



2.銅メッキの導電性

2.1 導電性とは


あらためての説明になりますが、導電性とは電気を通しやすい性質です。

銅は分子の構造上、自由電子が動きやすい形になっており、そのおかげで他の金属より電子を伝えやすく、即ち電気を通しやすい性質を持っています。


物質の電気を通しにくさを表す電気抵抗でいうと、常温の場合、銅は1.72(10^-8Ωm)です。

この数値は小さいほど電気を通しやすいことになり、鉄だと10〜20(10^-8Ωm)、アルミニウムで2.75(10^-8Ωm)です。これからもいかに銅が電気を通しやすいかがわかります。


当然のことながら、鉄に銅メッキをしても、母材の鉄の部分は鉄の導電性のままです。

しかし、表面の銅の部分がより電気を通しやすくなり、結果的にその素材は電気を通しやすくなってくれます。この性質を利用すると、本来導電性が悪いものでも、電気を通しやすい性質を付与することができるのです。


2.2 銅メッキ鉄線


通常の銅線は当然、とても電気を通しやすく、電気を伴う製品への使用は必須です。

しかし、銅自体はとても強度的に弱く、耐久性なども心配になってしまいます。

硬鋼線でできたピアノ線のようなものに導電性があれば便利、というような使用パターンも中にはあります。そのようなときに鉄線や鋼線に銅メッキをした銅メッキ鉄線を使用することができます。


要するに導電性のある鉄線や鋼線ということです。

バネ鋼などを利用すると、導電性を持ったバネを作り出すこともでき、電子部品のバネ部分にも用いられます。電池の接点に用いられているバネなどもこれを利用しているものが多いです。


また、精密部品にもよく用いられ、昨今の新しいテクノロジーで活躍の場を広げています。

なお、導電性が上がるのは当然メッキの部分のみで、それでも十分に電気を通すようなメッキ厚は確保されるものの、本来の銅線よりは導電性は低いです。


2.3 配線基板(不導体への銅メッキ)


銅メッキは多くの場合、素材に通電し、その際に生じる電子を利用した電解メッキで行われます。

ただし、通電を伴わない無電解メッキによる無電解メッキで行うことも可能です。


無電解メッキとは、素材とメッキ液内の電解液との反応によって発生した電子を利用する方法です。

外部から電気を供給せずに化学反応によってメッキ皮膜が生成してゆきます。

皮膜は均一で、通電を伴う電解メッキと比べてピンホールなども少ないのが特徴です。

つまり、不動態と言われる電気を通さない物質にもメッキを行うことが可能となります。


例えば、プラスチックやセラミックの基板のような製品に銅メッキの機能を付与したい場合、このような無電解メッキを行うことが有効です。実際、プリント配線基板という基板上に回路を形成する電子部品の多くには、無電解銅メッキが活用されています。


電子化が進む昨今では、ますますその利用も増えてゆくことが予想される用途です。



3.下地メッキとしての銅メッキ

3.1 下地メッキとは


メッキの中には、目的のメッキの前に下地メッキを行うものがあります。

素材にメッキを直接行うのでは、十分にメッキが密着しないことがあることなどが理由です。

このような下地メッキには、素材ともメッキ皮膜とも十分に密着する必要があり、その代表格として銅メッキはよく用いられます。


銅メッキを用いるのにはいくつか理由がありますが、均一な面を生成して表面を整えることや、素材との電位差を緩和してメッキしやすくなることなどが主なところです。

また、下地メッキを行うことで、本来のメッキの密着性の向上はもちろん、層が増えてピンホールなどが発生しにくくなり、耐食性が上がる効果もあります。


下地というぐらいなので、この用途の場合、本メッキをしてしまうと下地メッキはそれに隠れてしまい、表立って銅メッキが見えることはありません。文字通り、「縁の下の力持ち」です。


3.2 下地メッキとしての銅メッキ


例えば、鉄にニッケルメッキをする場合、直接のメッキでは十分な密着性を得られないことがあります。まさにこのようなとき、銅メッキの下地メッキが効果を発揮します。


銅メッキは下地の鉄との密着性も良く、さらにニッケル皮膜との密着性も良いという大変便利な性質を持っています。また、厚メッキが容易で研磨もしやすく、さらに前述のようにピンホールの発生も防げるという利点もあります。


銅メッキは鉄素材や亜鉛ダイカスト、マグネシウム合金など幅広い金属素材の下地メッキとして利用されています。



4.その他の銅メッキの有効性


ここまでは銅メッキの2大用途である導電性付与と下地メッキについて解説してきました。

銅メッキの用途はこの2つに限るものではありません。その他の用途についても少し説明を加えます。


まずは既に少し説明していた熱伝導性です。

銅素材と同様、銅メッキ部分も熱伝導性が高くなり、ステンレス鍋などの調理用品の底部に銅メッキを行うことがあります。


また、鉄鋼材などの焼入れ処理を行うとき、部分的に不要な箇所に銅メッキを行うことがあります。

このような用途は浸炭防止と言われており、これも銅メッキの大きな役割の1つです。


さらに、ドアノブなどで銅の色をしたものを見たことがないでしょうか?

銅には抗菌性もあり、ドアノブの中には銅メッキを行ったものもあります。


他にも、銅には電磁シールド性という電磁波から守ってくれる性質もあり、これを利用してパソコンやスマートフォンなどの電磁波の影響から機材を守る用途で用いられることもあります。

もちろん、銅自体の美しい見た目を利用した意匠目的の活用もあります。



5.まとめ

銅メッキの特徴について、特に2つの用途を中心に紹介してきました。

以下はそのまとめです。


  • 銅は導電性や熱伝導性に優れており、これは分子構造における自由電子のはたらきによるものである。

  • 銅メッキは構造や耐食性より、機能メッキとして用いられることが多い。

  • 銅メッキの導電性を利用したものとして、強度やバネ性が十分で導電性もあるバネ鉄線がある。

  • 無電解銅メッキを利用して、プリント配線基板のような電子部品が製造されている。

  • 銅と素材、銅とメッキ皮膜の両方との密着性を確保できる銅メッキは、鉄素材のニッケルメッキなど、他のメッキの下地メッキとして用いられることがある。

  • その他、銅メッキは熱伝導性、浸炭防止、抗菌性、電磁シールド性、意匠性などの目的で用いられる。


6.当社の対応について


当社にて銅メッキの対応が可能です。

必要でしたら、硫酸銅メッキ、ピロリン酸銅メッキ、シアン化銅メッキのご指定も可能です。 アルミニウムなどへの銅メッキも処理可能ですのでお気軽にご連絡ください。


マスキング対応も行なっておりますが、コスト削減を目的としたマスキング処理はかえって逆効果になりますので、ご注意ください。

当社の銅メッキの詳細についてはこちらをご覧ください


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【著者のプロフィール】

1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。

30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。




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