ウィスカの発生原因と課題解決
さまざまな原因により発生・成長する「ウイスカ」は、電子機器における部品の小型化、配線の複雑微細化、電子デバイスの短絡など、市場でのトラブルを招くため対策が必要です。ここではウイスカの発生原因や成長メカニズム、各種の評価試験、発生抑制を解説します。
1. ウイスカとは?
「ウイスカ(whisker)」とは、金属表面に金属単結晶が自然成長する現象のことで、特に錫(Sn)メッキや亜鉛(Zn)メッキなどから発生します。ウイスカという言語が、猫やネズミなどのヒゲを意味する通り、金属結晶が針状やノジュール状に成長します。
1.1 ウイスカの問題
たとえば、電子回路や接続部でウィスカが成長した場合、ショート(短絡)が起こり、電機製品や電子回路、電子デバイスなどの故障原因となります。
1946年、ラジオのバリアブルコンデンサのめっきにカドミウムが使用されていたことから市場で短絡故障が相次ぎ、カドミウムのウイスカが注目されました。
1950年代には、鉛を微量合金化させることでウイスカを制御する対策が広まりました。しかし、2000年以降になって、実装の鉛フリー化の波により錫めっきが採用されるようになりました。すると、腕時計から原子炉、NASAの人工衛星やスペースシャトルなどの航空宇宙分野にまで、ウイスカによる故障が相次ぎ、重要な問題として再びクローズアップされるようになりました。
1.2 ウイスカの発生原因
ウイスカの発生原因として主に下記の影響が考えられています。
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金属間化合物の拡散の影響
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ガルバニック腐食*による影響
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外部応力による影響
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熱膨張係数の差による応力の影響
他にもさまざまな要因が考えられていますが、ウイスカの根本的なメカニズムは解明されていません。
ガルバニック腐食… 異種金属の電気的な接続において、両者間の電位差によって生じる腐食で「異種金属接触腐食」とも呼ばれる。
1.3 ウイスカが発生する環境
錫や亜鉛のウイスカは、室温付近でも早い拡散が見られますが、いくつかの環境影響によって元素拡散が促進されます。ウイスカが発生する環境条件の代表的な例を下記に挙げます。
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室温における発生
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温度サイクルで発生
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酸化・腐食性発生
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外圧下で発生する
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エレクトロマイグレーション現象で発生
エレクトロマイグレーション現象で発生するウイスカは、電流密度が高い半導体やフリップチップなど特殊な実装で現れます。
エレクトロマイグレーション現象とは、集積回路内部の金属配線に電流を流すことで、金属原子が移動してしまう現象です。たとえば、アルミ配線では電子が流れる方向にアルミ原子が移動することで、陽極側にウイスカやヒロックが発生・成長します。
ウィスカの発生・成長は電機・電子製品の故障原因となるため、対策を取るためにさまざまな試験と観察・評価が実施されています。
2. ウイスカの試験
2.1 評価試験方法
室温放置試験
金属間化合物/拡散の影響により発生するウイスカの成長観察
環境:30±2℃/60±3%RH・時間:4000Hr
恒温恒湿試験
ガルバニック腐食により発生するウイスカの成長観察
環境:55±3℃/85±3%RH・時間:2000Hr
温度サイクル試験
熱膨張係数の差により発生するウイスカの成長観察
環境:低温 -55±5℃または-40±5℃/高温 85±2℃または125±2℃・周期:2000サイクル
外部応力試験
外部応力の影響により発生するウイスカの成長観察
種類:コネクタ嵌め合い試験(実際の製品を用いる)・荷重試験(球形0.1Φのジルコニア球を300gfの荷重で500h保持)