top of page

【メッキ技能士直伝】黒色ニッケルめっき、電解と無電解めっきのメリット・デメリット

更新日:2023年8月28日

黒色皮膜は、反射防止性、光選択吸収性、熱伝導性などの特性を持つことから、カメラ、分析機器などの光学機器、光通信の伝送経路、太陽光集熱器のコネクター、装飾品など広く利用されております。





黒色表面処理としましては、鉄に四三酸化鉄皮膜を生成させる黒染め、銅に硫化物処理したいぶし処理、黒色クロメートなどの化成処理、アルマイト皮膜の染色などがあります。

電気めっきでは低温黒色クロムめっき、黒ルテニウムめっきなどがあります。

色々ある黒色処理の中でニッケルめっきが広く利用されておりますが、黒色のニッケルめっき、実は電気めっきと無電解めっきがあり、それぞれの特徴をご紹介させて頂きます。


目次


黒色電気ニッケルめっきとは

電気めっきとは、外部電源を利用しめっきを施す方法です。電気めっきは電気エネルギーを使用していることから、電気めっき・電解めっきと呼ばれています。

黒色電気ニッケルめっきはこの外部電源を利用した方法で黒色ニッケルめっきや黒ニッケルめっきなどと呼ばれています。

皮膜はニッケルとスズや銅などの合金めっきで装飾品などに広く利用されています。 黒色電気ニッケルめっきは非常に薄く、下地に電気のニッケルめっきや無電解ニッケルめっきを施した上に処理を行います。 色調は下地の状態により変化し、光沢のない状態に処理を行いますと薄いグレー色、光沢のある外観に処理を行いますと濃いグレー色の色味になります。


黒色電気めっきの特徴をまとめると以下になります。

  • 皮膜が非常に薄い

  • 下地の状態(平滑、梨地、ヘアラインなど)や角度によって色調が変わって見える。



黒色無電解ニッケルめっきとは

無電解めっきとは、外部電源を使用せず、化学反応を利用しめっきを施す方法です。無電解めっきの場合は、電気を使わないため無電解めっき・化学めっきと呼ばれています。

黒色無電解ニッケルめっきは化学反応を利用した方法で、無電解ニッケルめっきの黒などと呼ばれています。

皮膜は無電解ニッケル皮膜を酸化させる事により生成される酸化ニッケルにより表層の無電解ニッケル皮膜を黒色に変える皮膜です。

無電解ニッケルめっき皮膜の表層が酸化させる事で黒色皮膜を作り出すため、ある程度無電解ニッケルめっきの膜厚が必要です。

色調は黒色電気ニッケル同様、下地の状態により変化し、光沢のない状態に処理を行いますと薄いグレー色、光沢のある外観に処理を行いますと濃いグレー色の色味になります。


黒色無電解ニッケルめっきの特徴をまとめると以下になります。

  • ニッケルめっきの表層を酸化する事で黒色を作り出すため、ある程度無電解ニッケルめっきの膜厚が必要

  • 下地の状態(平滑、梨地、ヘアラインなど)や角度によって色調が変わって見える。


アルミニウムへ処理はできるの?

多くの製品に素材としてアルミニウムが採用されています。 アルミニウムでできた製品に黒色電気ニッケルめっき、黒色無電解ニッケルめっき共に処理を施すことは可能なのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。


アルミニウム素材の特徴は以下になります。

  • 軽い 比重は、アルミニウム2.7、鉄7.8、銅8.9とアルミニウムは鉄や銅と比べて約1/3の軽さです。自動車や航空機、電車など運搬機器のスピードアップや省エネにつながります。

  • やわらかい 機械加工しやすいアルミニウムは、金属材料のなかでは比較的やわらかい素材です。ミクロンレベルでの制度と複合加工が可能です。

  • 材料からのガス放出が少ない。 プラズマを用いる半導体製造装置で必要となる真空状態。ガス放出が少ないアルミニウム素材が有利です。

  • 耐食性表面処理が可能。 アルミニウムは、このようにメリットをたくさん持つ金属材料ですが、素材のままでは耐食性に乏しく、酸性、アルカリ性のどちらにも弱い両性金属です。


結論からいうと、アルミニウムに黒色電気ニッケルめっき、黒色無電解ニッケルめっき共に処理可能です。しかるべき工程を踏んで処理を行えば、アルミニウムにもめっき処理を施すことができます。

黒色無電解ニッケルめっきはアルミニウムに直接処理が可能ですが、黒色電気ニッケルめっきはアルミニウムに直接処理ができませんので、無電解ニッケルめっきを施した上への処理となりますので、ミルフィーユのような二層のめっきになります。


アルミニウムに黒色電気ニッケルめっき、黒色無電解ニッケルめっき共に処理を施す事が可能ですが、処理を施す際に注意しておきたいのが、鉄などに黒色電気ニッケルめっき、黒色無電解ニッケルめっき処理を行う場合、工程が多いということです。例えば、鉄素材に黒色無電解ニッケルめっきを施す場合とアルミニウム素材に黒色無電解ニッケルめっきを施す場合で違いを比較するため工程を整理してみましょう。


鉄素材への黒色無電解ニッケルめっき工程

  1. 脱脂

  2. 電解脱脂

  3. 酸洗

  4. 無電解ニッケルめっき処理

  5. 酸化処理


めっき処理を行う際は、油脂を除去する脱脂処理が不可欠です。脱脂液で油脂を取り除き、その後さらに電解による脱脂で徹底的に表面の油脂をなくしていきます。次に酸洗(酸活性・酸中和)を行い素材表面の酸化皮膜や錆を除去し、めっき処理を阻害するものが表面に残っていない状態にします。これらの工程を踏むことで、製品への黒色無電解ニッケルめっき処理ができ、密着性の確保にも繋がるのです。

では続いて、アルミニウム素材に黒色無電解ニッケルめっき処理する際の工程を整理していきましょう。


アルミニウム素材への黒色無電解ニッケルめっき工程

  1. 脱脂

  2. エッチング(表面粗化)

  3. 脱スマット(デスマット、スマット除去)

  4. ジンケート(亜鉛置換)

  5. 硝酸浸漬(ジンケート剥離、亜鉛置換剥離)

  6. ジンケート(亜鉛置換)

  7. 無電解ニッケルメッキ処理

  8. 酸化処理


ざっと見るだけでも、工程の多さに違いがあることがわかると思います。また、アルミニウム素材への前処理で使用する薬品と、鉄素材への前処理に使われる薬品とは異なります。そのため、めっき処理業者によっては、黒色無電解ニッケルめっき処理自体には対応しているものの、アルミニウムには対応していないということも少なくありません。


まとめ

反射防止性、光選択吸収性、熱伝導性など優れた特性を持つ黒色皮膜、カメラ、分析機器などの光学機器、光通信の伝送経路、太陽光集熱器のコネクター、装飾品など広く利用されております。

黒色ニッケルめっきには電気めっきと無電解めっきがあり、それぞれに特徴があります。

黒色電気ニッケルめっきは装飾性に優れており、光沢性のある黒色めっきが必要な際には黒色電気ニッケルめっきが有効です。

黒色無電解ニッケルめっきは皮膜のバラツキが少ないため、均一性が必要な案件に有効です。

優れた特性を持つアルミニウム素材に対して適正な処理を行う事で処理が可能です。


黒色のめっきでしたら、コネクションにお任せください! 色んな黒色のめっきをご用意致しておりますので、ご要望に応じためっきを提案致します。



お急ぎの方はこちら 直通電話 090−6819−5609




【著者のプロフィール】

1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。

30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。




​無電解ニッケルめっき、テフロン無電解複合めっきなど
お気軽にご連絡下さい。
ご相談、お見積りは無料です。

​(受付時間 9:00〜18:00)

お電話でのお問い合わせはこちら

bottom of page