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電気スズメッキ
JIS H8619

 

JIS H8619は、電気部品などのはんだ濡れ性、防食性などの向上の目的で金属素地上に行った有効面の電気すずめっきについて規定する。

​注)電気めっきされた光沢または、無光沢もしくは電気メッキ後に溶融処理によって溶融光沢化されためっきを含む。

1.定義

この規格で用いる主な用語の定義は、JIS H0400によるほか、次による。

a) 有効面 被覆されているか又は被覆されるべきで、その被覆が主要な性能及び外観に関わる部品の表面。

b) リフロ 光沢、ハンダ付け性向上などの好ましい性質を付与するためにめっきを溶融する処理

(参考 同義語として溶融処理、ヒュージング、溶融光沢化がある)

c) 局部厚さ 指定面積内における指定された測定回数の平均値

d) 平均厚さ 分析による試験方法によって得られた値または、指定された測定回数を有効面全体に均一に分散するように行ったときの平均測定値。

e) 下地めっき 拡散防止、はんだ濡れ性、耐食性、密着性の向上などの目的で素地上に予め施すめっき。

2.等級、記号および使用環境

1. 等級および記号

a) 等級 めっきの等級は表1の通り、めっきの最小厚さによって5等級に分ける。

b) 記号 めっきの記号は、めっきの厚さまたは等級を表す記号の後にリフロ処理を表す記号rを付けて表すほか、JIS H0404による。

2. 使用環境、使用環境条件及び記号

使用環境、使用環境条件および記号はJIS H0404による。

​(参考 装飾、防食などの目的でめっき製品を使用する場合、その使用環境参考表1のとおり区分し、記号で示す)

表1 めっきの等級及びめっきの最小厚さ

​参考表1 使用環境、使用環境条件及び記号

3.品質

1. めっきの外観

めっきの外観は、外観試験によって試験を行い、めっきの有効面に平滑で、焦げ、膨れ、こぶ、ピット、しみ、変色、素地または下地めっきの露出およびその他使用上有害な欠陥があってはならない。

なお、光沢または無光沢の選定は受渡当事者間の協定による。

2. めっきの最小厚さ

めっきの最小厚さは、厚さ試験によって試験を行い、表1に適合しなければならない。

3.めっき皮膜の耐食性

めっき皮膜の耐食性は、耐食性試験によって試験を行い、その品質は用途によって受渡当事者間の協定による。

4.めっきの密着性

めっきの密着性は密着性試験によって試験を行い、めっきの剥離または膨れがあってはならない。

5.めっきのはんだ濡れ性

めっきのはんだ濡れ性ははんだ濡れ性試験によって試験を行い、浸漬した部分は均一にぬれており、はんだの表面は平坦でこぶがあってはならない。

​(備考 はんだ濡れ性試験の後、密着性試験のうち曲げ試験を行い、はんだがうろこ状にとんだり、剥離があってはならない)

4.素地

めっき前の素地の状態は、めっきの品質に重大な影響を及ぼす。特に素地材料が発注者から供給っされる場合には、発注者は、加工仕様書などに、素地材料に関する情報を示さなくてはならない。

5.下地めっき

めっきの拡散防止、はんだ濡れ性、耐食性、密着性などの向上目的で下地めっきを行う場合、そのめっきの種類及び厚さは、受渡当事者間の協定による。

6.めっき前の応力除去

鋼素地などに対して、めっき前の応力除去が指定されている場合、その条件は受渡当事者間の協定による。

参考 冷間加工された鋼部品では、190~220℃、1時間の加熱処理.

また、浸炭、焼入れされた鋼部品では、130~150℃、5時間以上の処理が望ましい

7.めっき後の加熱処理

めっき後の光沢化、ウイスカ防止、鉄及び鋼素地に対する水素脆性除去などが指定されている場合、その加熱処理条件は受渡当事者間の協定による。

8.試験

1. 試験片の作製

試験片は、通常、製品から作製する。ただし、めっき製品それ自体を試験片として用いることができない場合には、代替試験片によって試験を行う。

代替試験片の作製は、可能な限りめっき部品の作製と同じ材質の素地を用い、同じめっき条件で行わなくてはならない。

2. 外観試験

外観試験は、目視によって表面の平滑度、焦げ、密着の程度、こぶ、ピット、しみ、変色および素地または下地めっきの露出並びにその他使用上有害な有無を調べる。

​3. 厚さ試験

厚さ試験はJIS H8501に規定する顕微鏡断面試験方法、電解式試験方法、蛍光X線試験方法、β線式試験方法または質量計測によるめっき付着量試験方法のいずれかによる。

注)酸性すずめっきの場合には、有機添加剤の種類や添加量などによっては正しい結果が得られないかまたは測定不能な場合もあるので注意が必要。

(備考 厚さ試験は、直径20mmの球が触れることのできるすべての有効面について、規定された方法の中で、最も適切な試験方法によって指定面積を測定する。)

(参考 有効面が100mm2未満の製品の場合は、最小厚さは平均厚さの最小値とする。有効面が100mm2以上の製品の場合には、最小厚さは局部厚さの最小値とする。)

4.耐食性試験

耐食性試験は、JIS H8502に規定する中性塩水噴霧試験方法またはJIS C0024に規定する方法による。

なお、試験方法およびその試験時間は受渡当事者間の協定による。

5.密着性試験

密着性試験はJIS H8504に規定するへらしごき試験方法、テープ試験方法、曲げ試験方法または熱衝撃試験方法のいずれかによる。

6.はんだ濡れ性試験​

はんだ濡れ性試験は、次に規定する浸漬試験によるほかJIS C0050または受渡当事者間の協定によって有効性が認められた方法による。

a) 試験片に非腐食性のフラックス(例えば、松やにをアルコールに溶かしたもの)を塗布する。

b) JIS Z3282に規定するH60A、H63Aまたはこれと同等の共晶組成のはんだ浴を250±5℃に保持し、試験片を3秒浸漬する。

c) 試験片を取り出して余分のはんだを軽く振り切り、空冷する。

9.検査

a)めっきは8の試験によって試験を行い、3の品質の規定に適合したものを合格とする。

b)試験片は、同一部品のロットからJIS Z9031によって抜き取る。

備考1.検査項目及び試験方法の選択に関しては、受渡当事者間の協定による。

​備考2.試験片の数、検査順序及び検査対象箇所並びに試験片の代替使用は、受渡当事者間の協定による。

10.めっきの呼び方

めっきの呼び方は、JIS H0404による。

​例1, 銅素地上、ニッケル下地メッキ、電気錫メッキ5μm以上

銅素地上、ニッケル下地メッキ、電気錫メッキ5μm以上の画像


例2, 銅素地上、ニッケル下地メッキ、電気錫メッキ3級

銅素地上、ニッケル下地メッキ、電気錫メッキ3級の画像


例3, 鉄鋼素地上、銅下地メッキ5μm、電気錫メッキ5μm以上、リフロ処理

鉄鋼素地上、銅下地メッキ5μm、電気錫メッキ5μm以上、リフロ処理


例4, 鉄鋼素地上、銅下地メッキ5μm、電気錫メッキ2級、使用環境D

鉄鋼素地上、銅下地メッキ5μm、電気錫メッキ2級、使用環境Dの画像

11.表示

送り状または、納品書に次の事項を表示する。

a) めっきの記号

b) 加工年月日

c) 加工業者名

d) 発注者または、加工仕様書に記載されためっき品質の試験結果

12.発注書または加工仕様書への記載事項

発注者は、発注書、加工仕様書に次の事項を記載しなければならない。ただし、付記事項については、受渡当事者間の協定によって省略してもよい。

a) 基本事項

1.素地材料の性質・状態

2. めっきの記号

3. めっきの有効面(図面に指示するか、または印を付けた現物見本を提示する。)

4. 外観(最終表面粗さ、光沢など)(限度見本を提示するとよい)

5. 許容できるめっき表面の欠陥の種類、大きさ、範囲及び場所

6. 検査方法(用いられる密着性試験方法など)

b) 付記事項

1. 必要な熱処理

2. 必要とするめっき品質とその試験方法

3. 下地めっきのある場合には、その種類と厚さ

4. 特別なめっき前処理

5. 皮膜の純度に対する特別な要求事項

6. めっきされた部品に対する特別な包装の必要条件

​7. 特別なめっき後処理

出典:JISハンドブック

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