
ニッケルメッキの種類
ニッケルメッキの種類
ニッケルメッキは、金属表面にニッケルの皮膜を形成する表面処理技術ですが、その工法によって大きく電気ニッケルメッキ(電解ニッケルメッキ)と無電解ニッケルメッキの二つに分類されます。
どちらの工法も、ニッケルが持つ優れた耐食性、耐摩耗性、装飾性といった特性を金属表面に付与するという目的は共通しています。しかし、皮膜を形成する原理とプロセスには明確な違いがあります。
◉電気ニッケルメッキ
電気ニッケルメッキ、別名電解ニッケルメッキは、電気分解の原理を応用したニッケルメッキの一種です。
外部から供給される電気エネルギーを活用し、ニッケルイオンを含むメッキ液中で、被メッキ物である製品の表面にニッケルを析出させることで皮膜を形成します。
この工法の大きな特徴は、非常に高い純度(99.8%以上)のニッケル皮膜を実現できる点です。高純度であるからこそ、優れた耐摩耗性や耐食性を発揮し、過酷な使用環境や腐食しやすい環境下での利用に最適な表面処理となります。
また、電気ニッケルメッキの魅力はその高い機能性にとどまりません。その美しい光沢は、製品の外観を向上させるため、装飾用の加工としても広く使われ、精密な仕上がりが求められる精密機器の部品にも採用されるなど、その用途は極めて幅広いのが特徴です。
さらに、一口に電気ニッケルメッキと言っても、求められる特性や仕上がりによって細かく分類されます。
代表的な種類としては、以下のものがあります。
光沢ニッケルメッキ
光沢ニッケルメッキは、電気ニッケルメッキの中でも特に、鏡面のような美しい光沢を特徴とする表面処理です。その華やかな外観は、装飾品をはじめ、デザイン性の高い高級家電製品などに広く採用され、製品の魅力を一層引き立てます。
耐食性においては無光沢ニッケルメッキにやや劣るものの、光沢ニッケルメッキの皮膜は、HV(ビッカース硬さ)で400~500程度と、無光沢ニッケルメッキと比較して高い硬度を示します。この硬さは、表面の耐擦傷性を高め、美しい光沢をより長く維持するのに貢献します。
無光沢ニッケルメッキ
無光沢ニッケルメッキは、電気ニッケルメッキの一種でありながら、その名の通り、光沢を抑えた上品で落ち着いた仕上がりが特徴です。表面の反射光を低減させるため、高級感を演出したい場合や、光沢のある表面が好まれない環境での使用に適しています。
特筆すべき点として、無光沢ニッケルメッキは、一般的に光沢ニッケルメッキよりも優れた耐食性を示す傾向があります。これは、光沢剤などの添加物が少ないことなどが要因として挙げられます。
また、無光沢ニッケルめっき皮膜の硬度はHV(ビッカース硬さ)で200~250程度を示します。この適度な硬度も、耐摩耗性や耐久性の維持に貢献しています。
半光沢ニッケルメッキ
半光沢ニッケルメッキは、電気ニッケルメッキの一種であり、鏡のような強い光沢を持つ光沢ニッケルメッキと、落ち着いたマットな質感の無光沢ニッケルメッキの中間に位置する表面処理技術です。適度な光沢感は、製品に深みのある独特の質感を与え、落ち着いた高級感や金属本来の素材感を表現するのに適しています。
半光沢ニッケルメッキの表面は、光沢仕上げほどではないものの、ある程度の光を反射するため、金属らしい輝きを持ち合わせています。しかし、その反射は穏やかで、目に優しく、落ち着いた印象を与えます。
黒色ニッケルメッキ
黒色ニッケルメッキは、電気ニッケルメッキの一種であり、その主な目的は外観性の向上にあります。深みのある黒色の外観は、他のメッキにはない独特の個性と高級感を製品に与え、デザイン性を高める上で重要な役割を果たします。
◉無電解ニッケルメッキ
一方、無電解ニッケルメッキは電気の力を使うのではなく、化学的な還元反応を利用して皮膜を形成するメッキ方法です。電気ニッケルメッキの場合は、かける電気のエネルギー量次第でメッキの厚さが変わってきます。
無電解ニッケルメッキの場合は化学反応によって皮膜を作るため、メッキ液に浸漬している時間によってメッキの厚さが変わってきます。また、全体的に厚さにばらつきのない仕上がりになることも大きな特徴です。
3.1 コストと用途の違い
無電解ニッケルメッキは、化学反応を維持するための高温と薬液の管理が必要であり、その結果、電気ニッケルメッキよりもコストが高くなる傾向があります。処理槽の化学的安定性を保つために、薬液の補給が必要となる点もコスト増の要因です。
一方で、電気ニッケルメッキは比較的低コストであり、広範な用途に対応しますが、
電流の影響でメッキの厚みが均一にならないことがあり、特に複雑な形状の部品にはムラが生じることがデメリットです。
電気ニッケルメッキは高純度の皮膜が得られ、無電解ニッケルメッキは均一なメッキが可能です。それぞれの特性やコストを理解し、用途に応じて適切なメッキ方法を選択することが重要です。