JIS H0400は電気メッキ及び関連処理において用いられる主な用語及びその定義について規定します。

用語の分類(電気めっき及び関連処理用語は、次の8部門に分類する。)
a. 一般
b. 処理剤及び設備器具
c. 研磨及び前処理
d. めっき処理
e. 後処理
f. 関連表面処理
g. 排水処理
h. 試験及び検査
用語及び定義
用語及び定義は次のとおりとする。
備考 2つ以上の用語を並べてある場合は、その順位に従って使用する。
番号 | 用語 | 定義 |
1033 | アノード分極 | 陽極での分極 |
1034 | カソード分極 | 陰極での分極 |
1035 | 減極 | 電極での分極が減少すること |
1036 | アノード反応 陽極反応 | 電気分解において陽極で起こるアニオンの放電、金属の溶出、酸化などの反応 |
1037 | カソード反応 陰極反応 | 電気分解において陰極で起こるカチオンの放電、還元などの反応 |
1038 | 陽極酸化 | 陽極処理によって電極表面において起こる酸化反応 |
1039 | 拡散層 | 電解過程で電極と接し、拡散による物質移動のために溶液本体と濃度勾配を生じている溶液の薄い層 |
1040 | アノード皮膜 | a)電解によって陽極上に形成される皮膜 b)電解過程で、陽極に接し溶液本体と濃度が変わる溶液の薄い層 |
1041 | カソード皮膜 | 電解過程で陰極に接し、溶液本体と濃度が異なる溶液の薄い層 |
1042 | 電流濃度 | 電解液の単位容積当たりの電流の大きさ |
1043 | 電流密度 | 電極の単位面積当たりの電流の大きさ |
1044 | 臨界電流密度 | (電気めっきにおいて)正常な皮膜を生成する電流密度の上限及び下限 |
1045 | 限界電流密度 | 拡散によるイオンの補給が限界に達し、電圧を上げても電流密度が増加しなくなる電流密度の最大値 |
1046 | 電流効率 | 通過した電流のうち、目的とする電極反応に使用された電流の割合。 参考 理論析出量(又は溶出量)に対する実際の析出量(又は溶出量)との割合を百分率で表す |
1047 | アノード効率 陽極効率 | 特定の陽極過程の電流効率 |
1048 | カソード効率 陰極効率 | 特定の陰極過程の電流効率 |
1049 | 過電圧 | 実際電解が行われている電極電位と平衝電位との差 参考 水素過電圧、酸素過電圧、活性化過電圧、濃度過電圧などがある |
1050 | 水素過電圧 | 水素発生反応における過電圧 |
1051 | 酸素過電圧 | 酸素発生反応における過電圧 |
1052 | 電流分布 | 電極の各位置における通過電流の分布状態 |
1053 | ハルセル | 種々の電流密度における電極表面の状況を観察する特殊な形の電解層 |
1054 | 電解液 電解質溶液 | 電解質を水などの溶媒に溶かした溶液 |
1055 | 陽極液 | 分離セルで隔膜のアノード側の電解液 |
1056 | 陰極液 | 分離セルで隔膜のカソード側の電解液 |
1057 | めっき浴 | めっき槽内に入れられためっき液 |
1058 | 素地 | 皮膜が析出又は形成される材料 |
1059 | 下地 | 直接めっきされる素地 参考 単めっきの場合は、下地は素地と同義語になる。多層めっきの場合は中間皮膜を下地と呼ぶ |
1060 | 核生成 | 非電導性素地に電気めっきを行う際、析出の初期段階のサイトとしての役目を果たす触媒物質が吸着されるめっきの前段階 |
1061 | 析出電位 | 電析又は電着において、固体生成物が析出し始める電位 |
1062 | 電気めっき範囲 | 十分な電着が得られる電流密度の範囲 |
1063 | 一次電流分布 | 幾何学的な考察だけから予想される電極表面上の電流の分布 |
1064 | 被覆力 | 初期に陰極の全表面に金属を析出するため、所定の条件の下で電気めっきさせ得る欲の能力 |
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【著者のプロフィール】

1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。