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【メッキ技能士直伝】パソコンは今や手放せないツールですが、その内部には大量のめっき技術が含まれています。

更新日:2023年8月30日

知っていますか?皆様の手元にあるパソコンやタブレットにはめっき処理を施した部品が大量に使われている事を。



1995年にマイクロソフト社のWindows95の登場以来、パソコンの家庭への普及率は格段に上がりました。

米調査会社のIDCは2021年のパソコンの世界出荷台数が前年比14.8%増の3億4880万台になったと発表しました。在宅勤務などのためにパソコンを購入する流れが続き、半導体などの供給が滞った影響を受けたものの9年ぶりの高水準になりました。


1年間に3億4880万台との事ですので、アメリカの人口が3億3,480万人(2022年)となっておりますので、アメリカの方全員が毎年パソコンを購入する数になります。


パソコンの筐体にもめっき処理が使われています。



パソコンを見てもらいますと海外メーカーのパソコンですとアルミニウムボディを使ったパソコンなどがあります。

そんな私も以前は国内メーカー様のノートパソコンを使っていましたが、めっき工場の中で使用する際に工場内があまり涼しい環境でないため、ノートパソコンのキーボードが熱で反りが発生してしたため、アルミボディの海外メーカー様のパソコンに切り替えました。


アルミボディのパソコンですが、アルミニウムのままでは傷がつきやすい、腐食してしまうなどアルミニウムの素材のまま使用するには問題があります。アルミニウムのボディにはアルマイト処理と呼ばれる表面処理(めっき処理)が施されています。

スマートフォンにも使われているので馴染みがあるかと思います。


アルマイト処理を施すことで傷がつきにくい、意匠性を持たせる事が可能(いろんなカラーバリエーションが出ていると思います)など優れた特性を持たせることが可能です。

ハードディスクとめっきの関係



近年、クラウド化(ネットを介して外部のサーバーなどの記憶装置にデータを保存すること)が普及し、ハードディスクがないコンピューターも出てきています。ハードディスクの時代は終わったかのように思われがちですが、クラウドで使用されている記憶装置自体がハードディスクでできています。大容量のデータを扱うには、やはりハードディスクはなくてはならない存在です。また、テレビの録画機やカーナビゲーションシステムなどにも使われており、まだまだ多くの場面で活躍中です。今では、容量がTB(テラバイト※注)クラスのハードディスクが気軽に買える値段で販売されており、ひと昔前のサーバークラスの記憶容量が、家庭でも気軽に持てる時代となりました。


ハードディスクは、磁性体(記憶媒体)である円盤状のディスクを高速回転させ、ヘッドを動かしデータの読み書きを行っています。データの読み書きを行うためには、ヘッドをディスク(磁性体)に近づける必要があります。すなわち高速回転しているディスクにヘッドを近づけるのです。単純に考えてもディスクの表面に凹凸があるとヘッドと接触し、故障の原因になります。一方で、ヘッドを近づけないとデータの読み取りに支障をきたす可能性があります。

高速回転のディスクとヘッドの間隔の精度は、例えるなら「ジェット機が滑走路上0.数mm上を飛行するような精度が必要」といわれています。それ程、ディスクの表面は平滑でなければならず、それを実現するのがめっきの技術です。 ハードディスクドライブ(HDD)としての記憶容量は、ディスク1枚(プラッタ)あたりの記憶量×ドライブ内のディスク搭載枚数によって決まります。めっきの性能が向上すると、ディスク1枚(プラッタ)あたりの記憶量が増え、ドライブとしての記憶容量が増加します。



ニッケルめっきとハードディスク

ハードディスクドライブ(HDD)は多くの部品からできていますが、その多くにニッケルめっきが使われています。しかし、同じニッケルめっきでも使用されている目的が違います。 以下のように、ニッケルめっきのさまざまな機能を利用して、ハードディスクドライブは作られています。

  • アルミディスク(下地処理) [非磁性、平滑性、強度]

  • スイングアーム/磁気ヘッド [非磁性、強度]

  • スピンドルモータ [非磁性、潤滑性]

  • アクチュエータ [非磁性、強度]

  • 筐体(本体ケース)[防磁、強度、防塵]

ハードディスク基板で行われているめっきをご紹介。

  1. 酸化膜を取り除く めっきを行う前段階として、脱脂・エッチング処理を行いアルミ上の酸化膜を除去する。

  2. 亜鉛膜を形成する 亜鉛置換と呼ばれる方法でアルミニウムと亜鉛を置換し、アルミニウム表面に亜鉛の膜を形成します。

  3. 下地めっき りん(P)の含有量の多いタイプの無電解ニッケルめっきを用いて、非磁性で平滑な皮膜を作ります。

  4. 磁性膜  乾式めっきの一種・スパッタリングを用いて、表面に磁性膜を作ります。


普通のアルミニウムの前処理と変わらないと思った方も多いと思います。 文章で表現しますと一般的な工程とあまり変わりませんが、実は中身が全く違います。


余談になりますが、以前ハードディスクのみをめっき処理しているメーカー様にてコンサルティングを行わせて頂きましたが、一般的なめっきの製造プロセスとは前処理液やめっき液、生産設備も全く異なるものを使っておりました。 めっき専門メーカー様のコンサルティングも対応しておりますのでお気軽にご相談ください。


まとめ

コンピューターは誕生から飛躍的な発展を続け、今では昔のスーパーコンピューター並みの機能・性能を家庭で利用することができるようになりました。その一端を担ってきたのがめっきの技術です。 1997年に、IBM社が湿式めっき技術でより高性能部品の製造が可能になったことを発表以来、めっきはコンピューターをはじめとするハイテク機器のキーテクノロジーとして活躍してきました。 そして、めっきの重要性は、その技術進歩と共に、これからも変わらないでしょう。


めっきは種類が多く、それぞれに目的や用途により使い分けを行う必要があります。

ご使用の目的など弊社の担当者に伝えて頂ければ目的に応じためっきをご提案させて頂きますのでお気軽にご連絡下さい。


お急ぎの方はこちら 直通電話 090−6819−5609




【著者のプロフィール】

1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。

30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。




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