1つの製品に対し1種類のメッキしか処理できないと思っていませんか?
複数のメッキ処理を1つの製品に施す事で、製品の場所毎に特性を変えることができるんです。
メッキ処理された製品は、日用品からスマートフォン、自動車、建築材料など多岐に使用されており、特に電子部品の製造ではメッキ技術が欠かせない重要な技術となっています。
メッキの加工方法は電気メッキと無電解メッキに大きく2つに分けられます。
無電解メッキは皮膜の均一性(レベリング性)や耐酸性、耐アルカリ性などが優れていることから、自動車産業から建築関係、OA機器など幅広い分野で利用されているメッキ加工方法です。
一方で、電気メッキは外部電源を用いて処理を行う方法で、化学反応を利用した無電解メッキに比べ析出スピードのコントロールや、処理温度の低さ、液管理のしやすさ、光沢性や、単一金属だけではなく2種類以上の合金メッキを施す事ができ、装飾目的、機能性(耐食性、ハンダ接合性、電気特性など)などに優れた点や、メッキ方法です。
無電解メッキ、電解メッキ共にメリット・デメリットがそれぞれありますので、詳しく説明していきます。
無電解メッキとは?
無電解メッキは製品形状による膜厚のバラツキが少なく、皮膜の均一性に優れているため、寸法公差の厳しい精密部品へのメッキ処理や、加工の際に削り過ぎた製品の寸法修正などとして幅広く利用されています。
「無電解ニッケルメッキ」は「カニゼンメッキ」と呼ばれたりするのですが、カニゼンメッキが無電解ニッケルメッキと同一処理であることはあまり知られておりません。
なぜ無電解ニッケルメッキ処理をカニゼンメッキと呼ばれているか昔に遡ってご紹介。
カニゼンメッキの由来は昭和30年頃小野田セメント株式会社様がカニゼンプロセス(CANIGEN:Catalytic Nikel Generation:ニッケルを触媒として発現するの意) を初めて技術導入し全国に広めたのですが、その際にカニゼンメッキという名前で無電解ニッケルメッキ処理を広めたため、カニゼンメッキという呼び名が全国的に広まり定着し現在に至ります。
※カニゼンメッキ=無電解ニッケルメッキ(呼び名の違いで同一の処理です。)
無電解メッキの良い面とは??
非金属のプラスチックやセラミックスのような素材にもメッキ処理することができる。
複雑な形状の製品でも均一な膜厚の皮膜が得られる。
寸法交差の厳しい精密な製品の寸法維持ができる。
熱処理を加えるとメッキ皮膜の硬度が上がります。(HV1000とステンレス素材の約4倍の硬さが得られる。)
RoHS(ローズ)指令に対応(鉛フリーに対応)
ニッケルなどのベース以外に還元剤などに含まれるリンやホウ素が皮膜に含まれる。
無電解メッキのデメリットと言えば・・・
電気ニッケルメッキに比べ処理代が高額
極端な厚付を行うとピットが発生する。
メッキで光沢を得にくい
処理温度が高い(処理温度90℃程度)
ニッケルなどのベース以外に還元剤などに含まれるリンやホウ素が皮膜に含まれる。
よく無電解メッキの処理代が他のメッキ加工代に比べて高い事が言われます。
加工代が高くなる理由は、無電解メッキ液を定期的に更新する必要があるためです。
無電解メッキの加工代が他の電気メッキに比べ高くなる理由はこれが原因です。
無電解メッキは使用することで酸化物等が蓄積しメッキ液が老化するため、ある程度使用されたタイミングでメッキ液を全更新する必要があり、その液の更新代がメッキ処理の加工代に加わるため他の電解メッキに比べ加工代が高くなります。
電解メッキは液の管理がしっかりされていれば基本メッキ液の更新はございません。
電気めっきとは?
電気メッキとは、外部電源を用い、電気化学作用によってメッキ浴中の金属イオンを陰極(製品表面)に析出させ、製品の表面にメッキ皮膜を形成させる技術で、一般にメッキというと電気メッキを意味するほど装飾用、防食用、など幅広く用いられております。
無電解メッキの良い面はわかりましたが、電気メッキの良い面は??
液の管理ができれば半永久的にメッキ液が使える。
光沢剤を添加の有無で光沢メッキと無光沢メッキが使い分けできる。
単一皮膜だけでなく2種類以上の合金メッキができる。
メッキの析出速度が電流密度で調整できる。
純度の高い金属皮膜が形成できる。
メッキ皮膜の種類が多い。
メッキ皮膜の密着性に優れている。
メッキ皮膜に特有の質感があり、なおかつ析出粒子が緻密
膜厚の薄いメッキ処理から厚い膜厚の処理まで対応可能
メッキ処理の温度が無電解メッキに比べ比較的低い
幅広いいい点が電気メッキにもあります。
電気メッキのデメリットはメッキ膜厚の不均一だけですか?
電気を通さない樹脂材料やセラミックスなどに直接メッキ処理できない。
光沢剤を含んだ液で処理した場合、メッキ皮膜にニッケルなどの金属以外に硫黄などが微量に含まれる。(メッキ皮膜に硫黄が微量に含まれた場合、硫黄が含まれていないメッキ皮膜に比べ耐食性が劣ります。)
電流の集中しやすいエッジ部はメッキの膜厚が厚くなりやすい。
凹み部はメッキ皮膜の成長がしづらく薄膜になりやすい。
電気メッキが無電解メッキに比べ処理代が安価になるのはこれが理由だった。
電気メッキのメッキ液は金属分などの補給や浄化は行うのですが、液の管理をしっかりしていれば半永久的に使用できます。
電気メッキは液の安定性がよく、一度液を建浴すると液管理を行う事で半永久的に更新せずに使用することが可能なため、液の更新などのイニシャル代が掛かりません。
1つの製品に2種類って具体的にどんな処理??
今回ご依頼頂きました処理内容はこちら・・・
パイプ製品の内径には無電解ニッケル(3μm以上)、パイプの外径には亜鉛ニッケル合金メッキ(5μm以上)のご依頼を頂きました。
しかも亜鉛ニッケル合金メッキのニッケル共析量は高ニッケル15±3%と一般的な亜鉛メッキや亜鉛ニッケル合金(低ニッケル共析量)と比べ耐食性の高い皮膜を処理しております。
パイプの内側には電気メッキを処理することが不向きな処理ですので、無電解メッキ(無電解ニッケルメッキ)でパイプ内面の防錆効果を持たせ、パイプの外周は亜鉛ニッケル合金メッキを施す事で外気で使用される場合の耐食性に優れた製品となります。
弊社ではこんな組合わせが色々あります。
例えば、無電解ニッケルメッキを下地のメッキとして施し、その上にフッ素コーティングを行い耐食性に対し優れた製品づくりを提供致します。
【メッキの評価テストにはこんな項目があります。】
膜厚測定(蛍光X線式試験方法、デジタルマイクロメーターによる試験方法、質量計測による無電解ニッケルメッキ皮膜付着量試験、断面観察による測定試験などがあります。)
ビッカース皮膜硬度測定(単位はHVになります。)
メッキ皮膜密着強度試験(テープテスト、ピール強度試験などがあります。)
耐食性試験の詳細はこちら(中性塩水噴霧試験、酢酸塩水噴霧試験、キャス試験などがあります。)
まとめ【無電解メッキと電解メッキ特性的に選べない場合は、どちらの処理も使ってしまえ】
無電解メッキは耐食性が良好と言われます。
電気メッキは意匠性に優れますって言われます。
結論としましてどちらの特性も欲しいって時にはどちらの処理も施してしまう。って事がおすすめです。
例えば、無電解メッキで耐食性を持たせ、その無電解ニッケルメッキの上に電気メッキで装飾性を付与することで、素材を腐食から守りながら見た目綺麗な表面を作ることが可能です。
めっきに関するお問い合わせやご質問などございましたら、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡下さい。
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