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第27節 メッキ素材の表面状態による密着性



メッキ素材の性状は

X線光電子分光法(XPS)やオ-ジェ電子分光法(AES)をはじめとする極表面分析技術の進歩により、各種材料の表面性状がかなり詳細に明らかにされています。


メッキする素材は部品に形作られるまでにプレス加工、押出し、冷間・熱間鍛造、転造等の二次加工、さらには熱処理等の表面硬化処理や溶接等の熱影響を受けています。

メッキ素材の表層部には有機性汚れ(加工油等)の付着、その下層部には金属酸化物層やスケールの形成、さらには加工変質層や熱影響による非金属介在物の析出等が起こっています。



JISによる鉄鋼材料の分類:鉄(炭素量<0.02%)


普通鋼

SS(一般構造用圧延鋼材)、SM(溶接構造用圧延鋼材)、SPCC(冷間圧延鋼材)など

【フェライト・パーライト組織】


機械構造用炭素鋼鋼(炭素)

S10C、S20C、S30C、S45C、S55Cなど

【焼きならし・焼き戻しマルテンサイト組織】


合金鋼

クロム鋼(SCr)、ニッケルクロム鋼(SNC)

【焼き戻しマルテンサイト組織】

  

炭素工具鋼鋼

炭素工具鋼(SK)、合金工具鋼(SKD)

【焼き戻しマルテンサイト組織】


高速度工具鋼(SKH)

【焼き戻しマルテンサイト組織】


特殊用途鋼(低合金系)

バネ鋼(SUP)、軸受け鋼(SUJ)、快削鋼(SUM)

【焼き戻しマルテンサイト組織など】


特殊用途鋼(高合金系)

ステンレス鋼(SUS)、耐熱鋼(SUH)、高マンガン鋼など

【フェライト系、オーステナイト系など】


鋳鉄(炭素量>2.14%)

ねずみ鋳鉄(FC)、球状黒鉛鋳鉄(FCD)


(1)冷間圧延鋼板のような酸化物層形成タイプ

冷間圧延鋼板は、その製造の最終工程において焼鈍されるため、表面にはγ-Fe2O3とFe3O4の二層構造をもった厚さ約100Å程度の 酸化皮膜が形成されており、この他にSi、Mn、Al、Cr 等の酸化されやすい元素が酸化物として濃縮されています。

表層部は非金属素材に近い様相を呈しており、この酸化物層の除去が密着性改善のポイントになります。

特にスマットの除去については、陽極電解脱脂やメッキ直前での酸電解が効果的です。


工業的によく利用されている炭素鋼では、焼入れ等の熱処理に起因する密着不良が多いが、

焼入れ油が素材に焼付き、通常の脱脂では油成分の除去が困難なためで、ブラストやホーニング処理等の機械的な前処理が有効となります。


(2)炭素工具鋼のような介在物含有タイプ

高硬度の炭化物が分散することによって、靱性と耐摩耗性を兼ね備えた炭素工具鋼。

この素材にさらに耐摩耗性を付与するために、硬質クロムメッキが施されるが、素材表面に偶然に露出した炭化物(いわゆるセラミックス粒子)粒子上で密着不良になりやすい。

最近のメッキ素材は高性能化のニーズに対応して、数nmから数μmの微小な析出物が分散する粒子分散型合金を利用する傾向にあり、イオウや鉛化合物が分散している快削鋼や快削黄銅、りん化物が分散しているりん青銅等がメッキ素材として用いられています。


介在物含有型のメッキ素材では、密着性を確保するためにブラスト処理や研磨加工等の機械加工や酸洗液の濃度を低くしたり、浸せき時間もできるかぎり短くすることなどの前処理やストライクメッキに工夫が必要です。

また、熱処理によってマルテンサイト組織に調質された炭素鋼、合金鋼、工具鋼等は、水素脆性を起こしやすいので注意が必要です。


(3)ステンレス鋼のような強固な酸化皮膜形成タイプ

表面から約150Å付近まではクロムの酸化物層が形成されており、150Å以上の深さからステンレス本来の組成になっています。

こうしたステンレス鋼、チタン、ベリリウム銅等に代表される強固な酸化皮膜形成タイプの金属では、還元性雰囲気での前処理やメッキが必要で、ブラスト処理や混酸による酸洗、酸電解による活性化後、塩酸酸性のニッケルストライクメッキが密着性改善に有効です。


以上のように一口に鉄鋼材料といえども、鋼中へのニッケルやクロム等の特殊元素の含有量や熱処理の影響によりメッキの難易度も大きく異なりますが、メッキ現場のトラブルと対策という観点から素材別及びメッキ別の前処理方法が多く提案されています。


メッキし易い鋼と難メッキ素材である鋼を、見て判別することは不可能で、当然これらの対策としてどのような製造履歴や加工履歴を受けているのかを知ることが密着性の観点から極めて重要です。

このためにはユーザーからこの素材の加工履歴や鋼種が JIS のどれに相当するのか等を聞く事が大切です。


素材の鋼種や性状が不明の時には、試験や分析をしなければならない。

一般的には次のような方法により素材の種類や加工履歴等を調べることができます。


①硬度計(たとえばビッカース硬度計)による素材の硬さ測定

熱処理された素材は、未処理品に比較して硬くなるので、ビッカース硬度計等の硬さ測定により、素材が熱処理品かどうか判定できます。

熱処理品や浸炭、窒化処理されたものは、水素脆化が起こりやすいので注意が必要です。


②光学顕微鏡に金属組織の観察

顕微鏡組織観察により結晶粒の大きさ、フェライト組織・パーライト組織・マルテンサイト等の金属組織、介在物や析出物等の有無、浸炭・窒化処理等の有無など、熱履歴や加工履歴に関する多くの情報が得られます。


③化学分析や機器分析による素材の同定

グラインダーによる火花試験から鋼中の炭素量の多少が推測できますが、素材が何であるかを調べる最も確かな方法としては化学分析や蛍光X線、X線マイクロアナライザ(EPMA)等による機器分析法があります。


分析元素としてまず炭素量がわかれば、低炭素鋼か高炭素鋼であるかどうかがわかります。ニッケル及びクロムの量がわかれば、18-8 ステンレス鋼(SUS304)か18Cr ステンレス鋼(SUS430)であるかなどほとんどの鋼種が推定できます。


素材表面の詳細な情報については、走査型電子顕微鏡やEPMA、XPS 等による表面/断面からの観察及び分析が貴重な情報を与えてくれます。

これらの分析評価解析機器により素材の情報を得ることが出来ますが、測定機器に収まらない事や製品を切断する必要があるなどの縛りがあることから実際の製品では使用が難しい事から作業担当者の知識・経験に頼る部分となりそれらが各社の前処理方法の違いとなり、品質の違いとなります。





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