鉄鋼材料は安価で、優れた特性を有しているので、多くの製品に用いられていますが、最大の欠点は錆やすいことです。腐食損失調査結果では、腐食のみによる損失は不明ですが、対策費を含めた腐食損失はGNPの2~4%に相当するといわれています。
防食用のメッキとして亜鉛メッキが一般に用いられています。
亜鉛メッキは鉄素材に対して、自己犠牲作用が働き、亜鉛自らが溶解し鉄の腐食を抑制します。
しかし、亜鉛メッキの表面には比較的短時間で白錆が発生するため、防止策として、亜鉛メッキ後に各種のクロメート処理が行われています。
防食用メッキである亜鉛メッキの割合はきわめて大きく、全鍍連調べで亜鉛メッキ液量は全メッキ液量の約4割、 2,000 トンであり様々なメッキの中で1番使用量が多いメッキとなります。
自動車用には、より耐食性の優れた亜鉛系の合金メッキ(Zn-Ni合金メッキなど)が用いられています。
最近の傾向ですが、亜鉛系合金メッキが加工費が高価なために、亜鉛メッキ+緑色クロメート処理が見直されはじめています。
【各種亜鉛メッキの特徴】
亜鉛メッキ浴の種類としてはアルカリ浴(シアン化俗、ジンケート浴)、酸性浴(塩化物浴、硫酸浴)があります。
硫酸浴は鉄鋼メーカーの連続メッキラインで用いられていますが、メッキ専業社ではあまり用いられていません。
各種亜鉛メッキ浴の特性
シアン化浴
シアン化亜鉛浴は他の浴に比べて素材との密着性が優れています。皮膜中の炭素量が他の浴に比べて1/5~1/10 と少なく柔軟性に優れ、ウイスカーがでにくいなどの理由で幅広く使用されています。しかし、シアン化物を使用するので、排水処理に注意が必要です。
ジンケート浴
ジンケート浴は排水処理が容易で、被覆力に優れ、均一電着性にも優れており、建浴費およびランニングコストが低い。
メッキ皮膜の柔軟性は他の浴に比べて劣ります。
塩化浴
塩化亜鉛浴は鋳物や高炭素鋼に直接メッキする事ができ、電流効率もよく、水素脆化を受けにくいという利点があるが、他の浴に比べ均一電着性が悪い、装置を腐食させやすいなどの欠点があります。
クロメート処理
亜鉛メッキは単独で使用されることはほとんどなく、亜鉛メッキ後にクロメート処理を施して使用されております。
クロメート処理には、光沢クロメート(ユニクロ)、有色クロメート(クロメート)、黒色クロメート、緑色クロメートの4種類があります。それぞれの外観と耐食性により、クロメート処理の種類が選択されています。
光沢クロメート処理(ユニクロ)
光沢クロメート皮膜は皮膜中に6価のクロムがほとんどなく、3価のクロムの皮膜であるため耐食性は他のクロメート皮膜に比べ耐食性が劣ります。
クロムメッキの外観に似ていることから、ユニクロム処理(ユニクロ)と呼ばれ、外観を重視する用途に用いられますが、クロムメッキと基本的に異なるため、耐食性の欠如によるトラブルが多い。
フッ化物を含有する光沢クロメート処理液は研磨作用が強く、青みを帯びた光沢外観が得られる。外観性向上目的のため光沢クロメート処理には青色染料が含まれているものもあります。
有色クロメート処理(クロメート)
有色クロメート処理は耐食性を向上させる目的で古くから行われている方法です。
皮膜の色調はクロメート処理液への浸漬時間により異なり、クロメート皮膜の厚さが厚くなるほど青→黄→紫→赤→赤緑→緑褐→茶褐色へと変化します。
これらの色調はクロム酸濃度、pH、処理温度、攪拌、乾燥温度にも影響されます。
黒色クロメート処理
黒色クロメート皮膜は独特の黒色の外観を有し、比較的耐食性にも優れています。黒色クロメート処理液は銀塩を含み、液中ではクロム酸銀として溶解しているが、亜鉛との反応でクロメート皮膜中に黒色の酸化銀が共析することにより、黒色を呈する方法です。黒色クロメート処理には耐食性の優れたりん酸タイプと漆黒調の外観の酢酸タイプとがあります。
黒色クロメート皮膜は乾燥後にしみが生じやすいので、無水クロム酸1g/L の液に浸漬した後に乾燥すると乾燥シミを抑えることが可能です。
緑色クロメート処理
緑色クロメート処理は最も耐食性の優れたクロメート処理であり、自動車工業を中心に高耐食性が要求される製品に対して用いられています。この優れた耐食性はクロメート皮膜中に含まれる6価のクロムの量が最も多いことと亜鉛素地近くにりん酸根を多く含む密着性の良い層があり、厚く緻密な層を形成し、クラックが亜鉛めっきまで達しないことに起因しています。
クロメート皮膜の性質と耐食性
クロメート処理された直後の皮膜は、多量の水分を含む柔らかいゼリー状である。このため、剥離したり、傷を生じやすい。この皮膜を適当な温度で乾燥させると皮膜が硬化する。
クロメート皮膜は1μm以下と薄い皮膜であるが、優れた耐食性を示す。皮膜に傷がつき亜鉛メッキが露出した場合、皮膜中の可溶性の6価のクロムが亜鉛と反応し、再びクロメート
皮膜が生成されることにより白錆を防止できる。これは自己修復作用と呼ばれている。
クロメート皮膜の耐食性は皮膜が厚く、6価のクロムが含まれている量が多いほど優れている。
各種クロメート耐食性比較
クロメート皮膜の耐食性は乾燥温度によっても大きく影響される。高温乾燥した皮膜は6価のクロムが不溶性となり、自己修復性が消失する。また、クロメート皮膜にクラックが入り耐食性が極端に低下する。
60℃と150℃で乾燥させた場合、乾燥温度が高いとあきらかに耐食性が低下することが分かる。
クロメート皮膜の乾燥温度の耐食性(テストピース)
6 価のクロムを用いないクロメート処理
クロメート皮膜中には6 価クロムが含まれており、この6 価クロムが傷等によりクロメート皮膜が壊された場合でも、クロメート皮膜が修復されます。
したがって、クロメート皮膜中に6 価クロムが多く含まれているほど、耐食性が優れています。
この有用な6 価クロムですが、人体に長期間6 価クロムが触れているとアレルギーや潰瘍を起こすといわれ、ひどい場合には発癌性の疑いがあるといわれています。
このことから、ヨーロッパ、アメリカなどの自動車メーカが6 価クロムによるクロメート処理が規制されています。
スウェデンのボルボ社は1992 年にいち早く6 価クロムの規制を行っています。
その規制の内容はめっきした部品を人口汗(塩化ナトリウム 5g/L、 尿素 1g/L、 乳
酸 1g/L アンモニア水でpH を6.4~6.6 に調整)溶液に20 分間浸漬して,1 ㎝ 2 あたり
0.3μg6 価クロムが溶出してはならないというものです。
6価クロムを用いないクロメート処理については,3価クロムによるクロメート処理、有機皮膜によるコーティング、モリブデン-リン酸塩処理など多くの方法が提案されています。
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