メッキの厚さ試験方法
JIS H8501
この規格は,1.適用範囲の備考に示す対応国際規格を元に,対応する部分についてはこれらの対応国際規格を翻訳し,技術的内容を変更することなく作成した日本工業規格であるが,対応国際規格には規定されていない規定項目を日本工業規格として追加している。
1. 適用範囲
この規格は,金属素地上に施した電気めっき及び化学めっきの厚さ試験方法について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 1463 : 1982 Metallic and oxide coatings‐Measurement of coating thickness‐Microscopical method
ISO 2064 : 1996 Metallic and other inorganic coatings‐Definitions and conventions concerning the measurement of the thickness
ISO 2177 : 1985 Metallic coatings‐Measurement of coating thickness‐Coulometric method byanodic dissolution
ISO 2178 : 1982 Non-magnetic coatings on magnetic substrates‐Measurement of coatingthickness‐Magnetic method
ISO 2360 : 1982 Non-conductive coatings on non-magnetic basis metals‐Measurement of coatingthickness‐Eddy current method
ISO 3497 : 1990 Metallic coatings‐Measurement of coating thickness‐X-ray spectrometric methods
ISO 3543 : 1981 Metallic and non-metallic coatings‐Measurement of thickness‐Beta backscatter method
ISO 3868 : 1976 Metallic and other non-organic coatings‐Measurement of coating thickness‐Fizeau multiple-beam interferometry method
ISO 3882 : 1986 Metallic and other non-organic coatings‐Review of methods of measurement-of thickness
ISO 4518 : 1980 Metallic coatings‐Measurement of coating thickness‐Profilometric method
ISO 9220 : 1988 Metallic coatings‐Measurement of coating thickness‐Scanning electron micro-scope method
2. 引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの引用規格は,その最新版を適用する。
JIS B 0601 表面粗さ一定義及び表示
JIS B 7503 ダイヤルゲージ
JIS B 7519 指針測微器
JIS B 7520 指示マイクロメータ
JIS B 7533 てこ式ダイヤルゲージ
JIS B 7536 電気マイクロメータ
JIS H 0400 電気めっき及び関連処理用語
JIS K 0132 走査電子顕微鏡試験方法通則
3. 定義
この規格で用いる主な用語の定義は,JIS H 0400によるほか,次による。
a) 有効面 (significant surface) 被覆されているか又は被覆されるべきで,その被覆が主要な性能及び外観にかかわる製品の表面。
b) 測定面積 (measuring area) 1回の測定を行うために必要な有効面における一部分。
c) 指定面積 (reference area) 指定された回数の測定を行うために必要な面積。
d) 局部厚さ (local thickness) 指定面積内における指定された測定回数の平均値。
e) 最小局部厚さ (minimum local thickness) 製品の有効面上において確認された局部厚さの最低値。
f) 最大局部厚さ (maximum local thickness) 製品の有効面上において確認された局部厚さの最大値。
g) 平均厚さ (average thickness) 分析による試験方法によって得られた値又は指定された測定回数を有効面全体に均一に分散するように行ったときの平均測定値。
4. 試験方法の種類
試験方法の種類は,次による。
a) 顕微鏡断面試験方法
b) 電解式試験方法
c) 渦電流式試験方法
d) 磁力式試験方法
e) 蛍光X線式試験方法
f) β線式試験方法
g) 多重干渉式試験方法
h) 走査電子顕微鏡試験方法
i) 測微器による試験方法
j) 質量計測によるめっき付着量試験方法
5. 試料
5.1 試料の取扱い
試料の取扱いは,素手で行わず,手袋を用いる。
5.2 試料の採取
試料は,製品の有効面から採取するか又は製品そのものとする。ただし,製品についての試験又は判定が困難な場合は,これに代わる試料によってもよい。 なお,試料は,製品を代表(1)(2)できるものでなければならない。
注(1) 素材の組成,製造条件及びめっき前の仕上げの状態が製品と同様であることが望ましい。
注(2) 前処理及びめっきは,製品と同一の浴及び同一の条件で行い,作業条件の影響が試料に反映するように,製品と同時に行うことが望ましい。
5.3 試料の大きさ
試料の大きさは,受渡当事者間の協定による。
5.4 試験面の処理
試験面は,その汚れに応じて適当な溶剤(3)を用いて処理する。
注(3) エチルアルコール,ベンジン,揮発油などの使用が望ましい。
5.5 試料の状態調節
試料は,試験開始前に原則として温度23±2℃,相対湿度65%以下の室内又は恒温・恒湿槽に放置して状態調節を行う。ただし,試験に支障がないと認められるときは,受渡当事者間の協定によって省略してもよい。
6. 試験室の一般条件
6.1 試験場所
試験場所は,通常,温度23±2℃,相対湿度65%以下の室内とする。ただし,試験に支障がないと認められるときは,受渡当事者間の協定によって適宜の場所で行ってもよい。
6.2 試験装置の整備
試験装置は,堅固な実験台に正しく据え,かつ,試験に伴う異常な動きを生じないように安定にする。また,使用する器具類は,常に一定の条件で使用できるように整備しておかなければならない。
7. 局部厚さの決定
7.1 有効面が100mm2未満の製品
有効面が100mm2未満の製品の場合は,製品の有効面全面を局部厚さの決定に用いる指定面積とする。指定面積内で行われる測定回数は,受渡当事者間の協定による。
備考 特別な場合は,指定面積を小さくしてもよいが,その大きさ,数及び位置は,受渡当事者間の協定による。
7.2 有効面が100mm2以上の製品
有効面が100mm2以上の製品の場合は,製品の有効面のなかで,約100mm2の指定面積(望ましくは一辺1cmの正方形)を局部厚さの決定に用いる指定面積とする。採用する試験方法によって異なるが,この指定面積内において最高5か所の測定を分散して行う。
備考1. 指定面積内における測定数及び位置は,受渡当事者間の協定による。
備考2. 顕微鏡断面試験方法による測定の場合,指示された断面の長さにおいて5か所以上分散して測定を行う。
8. 平均厚さの決定
8.1 質量計測による方法
質量計測による方法によって平均厚さを決定する場合,用いるひょう量方法において,精度が十分確保できる質量減が得られるように測定面積を決定する。
備考1. 製品の有効面が,測定に必要な最小面積より小さい場合,製品の数を増やして最小面積を確保し,得られる測定結果を平均厚さとする。
備考2. 製品の有効面が,測定に必要な最小面積を大幅に上回らない場合,得られる測定結果を平均厚さとする。
備考3. 製品の有効面が,測定に必要な最小面積を大幅に上回る場合,指定された回数の測定を有効面上で分散して行い,結果を個々に表示する。
8.2 他の方法
a) 製品の有効面が,局部厚さを決定するために必要な指定面積を大幅に上回らない場合,得られた局部厚さを平均厚さとする。
b) 製品の有効面が,局部厚さを決定するために必要な指定面積を大幅に上回る場合,3〜5回の測定を有効面上で分散して行い,その平均値をもって平均厚さとする。
9. 顕微鏡断面試験方法
9.1 要旨
めっきの垂直断面を顕微鏡で観察して,めっきの厚さを求める試験方法である。
9.2 装置
装置は,接眼目盛を挿入したもの又は測微顕微鏡を用いる。装置の一例を図1に示す。
備考 図は,形状及び構造の基準を示すものではない。
図1 顕微鏡の一例
9.3 操作
試験片(4)は,合成樹脂又は低融点合金にめっき面が垂直になるように埋め込み,めっきを壊さないように注意しながら,めっき面に対し直角に研磨する(5)。素地とめっきとの境界が区別できるように表1に示す腐食液を用いて素地の腐食を行った後,測微顕微鏡によって適正に拡大し,めっきの厚さを測定する。図2に標線が移動する読取り方法の一例を示す。
なお,めっき厚さと顕微鏡の倍率との関係を表2に示す。
注(4) 金,銀,すずなどの軟らかいめっきでは,研磨によるだれを防ぐために,ニッケルめっきのような硬い皮膜をめっき面の上に少なくとも10μm以上施す。
注(5) 研磨は,試験片の断面を明りょう(瞭)にするために行う。研磨方向は研磨紙に対して試験片を垂直にして,だれを防止するために硬い金属から軟らかい金属に向かって行う。試験片の研磨紙上の作動角度は45°とし,研磨紙を変えるたびに試験片を90°変え,前の研磨紙による条こん(痕)が消えるまで研磨を行う。
備考1. 図は,形状及び構造の基準を示すものではない。
備考2. 測定に当たっては,測微ノブによって標線を目標の像の先端から末端まで移動させて,その距離を測微目盛で読み取り,厚さとする。
図2 標線が移動する読取り方法の一例
10. 電解式試験方法
10.1 要旨
定電流電解によって,めっきの微小な一定面積を陽極的に溶解し,除去されるのに要する時間が厚さに比例することを応用して,めっきの厚さを求める試験方法である。
参考 電解式試験方法は,単層めっき以外の多層めっきについても,測定箇所を変えずに各皮膜の厚さを測定することができる。この場合は,上層のめっきが完全に溶解して厚さが求められた後に使用後の電解液を取り除き,十分な水洗後,めっきと素地との関係から求めた電解液をセル中に入れて上層のめっきと同様な操作を行って皮膜の厚さを求める。以下,同様な操作によって順次多層皮膜の厚さを測定する。
10.2 装置
装置は,定電流発生装置(整流器),電解槽及びそれらの附属品によって構成される。その装置の一例を図3に示す。
図3 電解式測定用装置の一例
10.3 校正
装置の使用に当たっては,十分な校正を行わなければならない。校正に当たっては,次の点に注意する。
a) 装置は,使用前に標準の試料を用い,装置の特性に従って校正を行う。また,測定中でも適当な間隔で校正することが必要である。
b) 校正に用いる標準試料は,均一な厚さで,かつ,厚さ既知の同種のめっきで被覆されたものを用いる。
c) 校正を行う場合,校正標準の素地及びめっきの材質は,測定試料の素地及び皮膜と同じか又は類似のものでなければならない。
10.4 操作
操作は,次による。
a) 操作は,それぞれの装置の取扱方法の指示に従って行う。
b) 素地(又は下地),めっき及び電解液(6)(7)の組合せが,表3及び表4に適合しているかを調べる。
c) めっきが溶解して素地が露出すると,電位(又は電圧)が急激に変動する。そのときが終点で,それに要した時間又は積算電気量を記録する。
d) 試験後,ガスケットによって囲まれた部分のめっきが完全に溶解除去されていれば操作を終了する。
e) 装置の指示に従って,めっきの厚さを得る。
注(6) 電解液は,10.4の電解をしないときにはめっきを侵さないもので,電解したときには陽極電流効率がほぼ100%であって,終点における電圧変動が顕著であるものを用いる。
注(7) 電解液1回の注入による測定可能な限界は,一般的に耐食性のよいクロムめっきで20〜25μmである。測定精度から,各めっき皮膜とも25μmの厚さごとに電解を中止して電解液を更新することが望ましい。
10.5 測定精度に影響を及ぼす因子
次のような因子が,測定精度に影響を及ぼすので注意する。
a) めっきの厚さ
b) 電解液
c) 合金組成
備考 表中の数字は,表4の電解液の番号を示す。
表4. 電解液
11. 渦電流式試験方法
11.1 要旨
プローブ(測定子ともいう。)に高周波電流を流し,被測定めっきの表層部に渦電流を生じさせ,電導度,厚さ及び形状などによって変化する渦電流量を測定し,めっきの厚さを求める試験方法である。渦電流式試験方法の測定上の注意事項を附属書1(参考)に示す。
11.2 装置
装置の一例を図4に示す。
11.3 校正
装置の使用に当たっては,十分な校正を行わなければならない。校正に当たっては,次の点に注意する。
a) 装置は,使用前に標準試料を用い,装置の特性に従って校正を行う。また,測定中でも適当な間隔で校正することが必要である。
b) 校正に用いる標準試料は,均一な厚さで,かつ,厚さ既知のはく又はめっきで被覆されたものを用いる。はくの場合,素地との密着性に注意を払うことが必要である。
c) 校正を行う場合,校正標準の素地及びめっきの材質は,測定試料の素地及びめっきと同じか,又は類似のものでなければならない。
11.4 操作
操作は,次による。
a) 操作は,それぞれの装置の取扱方法の指示に従って行う。
b) 素地とめっきとの組合せが,測定可能な組合せであるかどうかを調べる。相互の電導度に十分な差がない場合には,精度が極めて悪いか又は測定不可能になる。
c) 素地及びめっきの厚さによって適当なプローブを選択する。
d) 選択したプローブごとに予備調整及び校正を行う。
e) 測定は,通常,同一箇所において3回以上行って,異常値を除いた3個の値を平均する。
f) プローブの押付け圧力は一定とし,測定面に垂直に接触させる。
g) 試料端及び湾曲部での測定は,誤差を生じやすいので,なるべく避ける。
11.5 測定精度に影響を及ぼす因子
次のような因子が,測定精度に影響を及ぼすので注意する。
a) めっきの厚さ
b) 素地金属の磁気的性質
c) 素地金属の厚さ及び形状
d) 表面粗さ
e) エッジ効果
図4 渦電流式測定装置の一例
12. 磁力式試験方法
12.1 要旨
磁性素地金属上の非磁性めっきの厚さの違いによって変化する磁石と素地金属との磁気的引力の変化量又はめっきと素地金属とを通過する磁束の磁気抵抗を測定し,めっきの厚さを求める試験方法である。磁力式試験方法の測定上の注意事項を附属書2(参考)に示す。
12.2 装置
装置の一例を図5に示す。
12.3 校正
装置の使用に当たっては,11.3に基づき十分な校正を行わなければならない。
なお,素地金属が既に磁化されているものには,この方法は適用されない。
12.4 操作
操作は,次による。
a) 操作は,それぞれの装置の取扱方法の指示に従って行う。
b) 測定は,校正を行った同じ位置で行う。また,プローブの押付け圧力及び方向は,一定とする。
c) 測定は,通常,同一箇所において3回以上行って,異常値を除いた3個の値を平均する。
12.5 測定精度に影響を及ぼす因子
次のような因子が,測定精度に影響を及ぼすので注意する。
a) めっきの厚さ
b) 素地金属の磁気的性質
c) 素地金属の厚さ及び形状
d) 表面粗さ
e) エッジ効果
図5 磁力式測定装置の一例
13. 蛍光X線式試験方法
13.1 要旨
蛍光X線厚さ測定装置を用いて,試料にX線を照射し,めっきから放射される蛍光X線量を測定して,めっきの厚さを求める試験方法である。蛍光X線式試験方法の測定上の注意事項を附属書3(参考)に示す。
備考 金属素地上又は非金属素地上のめっきの厚さを,非破壊的に測定することができる。
13.2 装置
蛍光X線厚さ測定装置は,波長分散形とエネルギー分散形の両形式の装置がある。この装置の構成の一例を図6 a)及びb)に示す。エネルギー分散形の場合には,備付けの検出器が比例計数管検出器か,半導体検出器かのいずれであるかによって,それぞれ測定可能な素地とめっきとの組合せが一部異なる。形式の差によって測定することができる素地とめっきとの組合せの代表例を表5に示す。
図6 蛍光X線厚さ測定装置の例
13.3 校正
装置の使用に当たっては,11.3に基づき十分な校正を行わなければならない。
13.4 操作
操作は,次による。
a) 操作は,それぞれの装置の取扱方法の指示に従って行う。
b) 素地とめっきとの組合せが,表5を参考にして測定可能な組合せであるかどうかを調べる。
c) めっきの厚さは,それぞれのめっきによる飽和厚さ(8)を超えてはならない。
d) 測定時間は,試料からの線量と,必要とする精度から決定される時間とする。
e) 測定は,通常,同一箇所を3回以上行って,異常値を除いた3個の値を平均する。
f) 試料端の測定や湾曲部での測定は,誤差を生じやすいので,なるべく避ける。
注(8) めっきが無限厚のときの蛍光X線量の90%値が得られる膜厚。
13.5 測定精度に影響を及ぼす因子
次のような因子が,測定精度に影響を及ぼすので注意する。
a) めっきの厚さ
b) 素地の材質及び厚さと下地めっきの厚さ
c) 表面粗さ
d) 試料の湾曲度
13.6 安全管理
蛍光X線厚さ測定装置の取扱いに当たっては,常にX線の漏えいのないように,安全管
理に留意しなければならない。
表5 測定可能な素地とめっきとの組合せの一例
備考:
波長分散形,エネルギー分散形の二つの装置に対して,Aはいずれの形式でも測定可能であることを,Cはいずれの形式でも測定不可能であることを示す。Bは波長分散形では測定可能,エネルギー分散形の場合には,半導体検出器を備えたものは測定可能であるが,比例計数管検出機器を備え付けたものは測定不可能であることを示す。
14. β線式試験方法
14.1 要旨
β線厚さ測定装置を用いて,試料にβ線を照射し,後方散乱したβ線量を測定して,めっきの厚さを求める試験方法である。β線式試験方法の測定上の注意事項を附属書4(参考)に示す。
備考 金属素地上又は非金属素地上のめっきの厚さを非破壊的に測定することができる。この方法は,測定原理上,素地とめっきとの原子番号が適当な数(通常3〜4以上)だけ離れていなければならない。
14.2 装置
装置の構成の一例を図7に,また,この装置を用いて測定することができる素地とめっきとの組合せの一例を表6に示す。
14.3 校正
装置の使用に当たっては,11.3に基づき十分な校正を行わなければならない。
14.4 操作
操作は,次による。
a) 操作は,それぞれの装置の取扱方法の指示に従って行う。
b) 素地とめっきとの組合せが,表6を参考にして,測定可能な組合せであるかを調べる。
c) めっきの種類及び厚さによって,表7から適当なβ線源を選択する。β線源の電圧の大きいほど,厚いめっきの測定が可能である。
d) 素地の厚さが飽和厚さ(9)以上であることを確認する。
e) めっきの厚さが,選択したβ線源に対して飽和厚さとなっていないことを確認する。
f) 測定時間は,試料からの後方散乱量と,必要とする精度から決定される時間とする。
g) 測定は,通常,同一箇所を3回以上行って,異常値を除いた3個の値を平均する。
h) 試料端及び湾曲部での測定は,誤差を生じやすいので,なるべく避ける。やむを得ず湾曲部を測定する場合には,該当湾曲部に適合した測定ジグを用いるようにする。
i) 測定中,試料と測定ジグとは,密接していなければならない。
注(9) β線源からの入射線に対して,吸収線と後方散乱線だけとなり,後方散乱量に変化のなくなる最小厚さ。
14.5 測定精度に影響を及ぼす因子
次のような因子が,測定精度に影響を及ぼすので注意する。
a) めっきの厚さ及びめっきの種類
b) 素地の材質及び厚さと下地めっきの厚さ
c) 表面粗さ
d) 試料の湾曲度
e) 試料とジグとの密着度
図7 β線厚さ測定装置の一例
表6 測定可能な素地とめっきとの組合せの一例
備考 表中の○は測定可能であることを,−は測定不可能であることを示す。
装置の使用に当たっては,6.2に基づき十分な校正を行わなくてはならない。
表7 β線源の一例
15. 多重干渉式試験方法
15.1 要旨
試料のめっきの一部を溶解はく離するか,又はめっき前に一部をめっき防止(マスキング)して段差を作り,多重干渉式厚さ測定装置を用いて,試料及び参照板に単色光光線を照射・反射させ,干渉しまのずれから,めっきの厚さを求める試験方法である。多重干渉式試験方法の測定上の注意事項を附属書5(参考)に示す。
15.2 装置
装置は,フィゾー多重干渉式厚さ測定装置を用いる。
15.3 校正
多重干渉式試験方法では,校正は必要である。
15.4 測定手順
測定手順は,次による。
a) 段差の作製 段差の作製は,1)又は2)による。
1) めっき前 試料の一部をあらかじめめっき防止(マスキング)してめっきを行い,その後,めっき防止の膜をはく離する。
2) めっき後 試料を取り,めっき面を清浄にした後,素地又は下地を傷めないように,めっきの一部分をはく離する。
b) 操作 操作は,それぞれの装置の取扱方法の指示に従って行う。
15.5 測定精度に影響を及ぼす因子
次のような因子が,測定精度に影響を及ぼすので注意する。
a) めっきの反射
b) 段差の作製及び形状
c) 試料の平面性
d) 表面粗さ
e) 試料の清浄度
16. 走査電子顕微鏡試験方法
16.1 要旨
走査電子顕微鏡を用いて,めっきの垂直断面を観察して,めっきの厚さを求める試験方法である。走査電子顕微鏡試験方法の測定上の注意事項を附属書6(参考)に示す。
16.2 装置
装置は,JIS K 0132に規定する走査電子顕微鏡を用いる。装置の一例を図8に示す。
16.3 校正
装置の使用に当たっては,十分な校正を行わなければならない。また,適当な間隔で校正することが必要である。
16.4 操作
操作は,それぞれの装置の取扱方法の指示に従って行う。
16.5 測定精度に影響を及ぼす因子
次のような因子が,測定精度に影響を及ぼすので注意する。
a) 表面粗さ
b) 試料及び断面の傾き
c) コントラスト
d) 倍率
e) 顕微鏡写真の安定性
図8 走査電子顕微鏡試験装置の構成例
17. 測微器による試験方法
17.1 方法の区分
この方法は,金属又は非金属素地上のめっきの厚さを測微器を用いて測定する試験方法で,次のように区分する。
a) めっき破壊法
b) 素地破壊法
c) 非破壊法
d) 触針走査法
17.2 めっき破壊法
a) 要旨 測微器を使用して,試料の厚さを素地ごとに測定し,次いでめっきをはく離後,同一箇所の厚さを測定し,両者の値の差からめっき厚さを求める方法である。
b) 装置 装置は,測微器を用いる。その精度を表8に示す。
c) はく離液及びはく離方法 めっきはく離液及びはく離方法の一例を表9に示す。
d) 操作 試料のめっき面を清浄にした後,測微器を用いてそれぞれの使用方法に従って,試料のめっき面に対して垂直な方向の厚さを測定する。次に,厚さ測定を必要とするめっき層だけを,はく離液に浸せきするか又は電解によって素地(又は下地)を侵さないように溶解し,十分に洗浄,乾燥し,再び先に測定した位置の厚さを測定して,その厚さ変化の絶対値をめっきの厚さとする。
備考 ダイヤルゲージ又は指針測微器のプローブにガラスなどの耐食性材料を用いた場合には,測微器を設置したままで,測定点だけのめっき層を溶解して,厚さの変化を正確に測定することができる。やむを得ず,測定面だけのめっき除去ができず,試料の表裏両面のめっきの厚さの合計が厚さの変化として測定される場合には,その値の1/2をもって,めっきの厚さとする。
備考1. 表中のものは,それぞれのJISの定めるところに従って使用する。
2. 測定範囲は,それぞれの精度によって,下限を引き下げることができる。
3. 硬さ200HV以下のめっきを測定する場合には,測微器のめっき面との接触面(マイクロメータにあっては,スピンドルの測定面,ダイヤルゲージ,指針測微器にあっては測定子)は直径の大きいものを用い,それぞれのJISに規定された測定力で行って,誤差を防ぐ。
4. 試料の表裏両面のめっきの厚さを合わせて測定した場合の許容誤差は,受渡当事者間の協定によって決める。
17.3 素地破壊法
a) 要旨
測定するめっきを損なわないように,試料の素地及び下地のめっきを溶解又は機械的な方法で分離除去し,残っためっきの厚さを測微器を用いて測定する方法である。
備考 この方法は,めっきが素地に比較して,化学的及び機械的に強いもの(例えば,貴金属めっき,ニッケルめっきなど)に適用する。
b) 装置
装置は,測微器を用いる。その精度を表8に示す。
備考 ダイヤルゲージを指針測微器として用いる場合には,測微器のスピンドルに対して水平であり,JIS B 0601に定める1μmRmax以下の測定台に測定するめっきを載せて測定する。
c) 溶解除去液及び除去方法
試料のめっきの違いによる素地(又は下地)の溶解除去液及び除去方法の一例を表10に示す。
d) 操作
試料又はその一部を溶解除去液に浸せきし,素地を溶解してめっきを得る(10)。めっきの厚さは,マイクロメータなどの測微器を用いて測定する(11)。
注(10) めっきが強固なために容易に素地が溶解しない場合には,めっきの厚さ測定に支障のない程度に,めっき面に素地まで達するきずを付けて溶解を促進してもよい。
注(11) ダイヤルゲージ及び指針測微器などを用いる場合には,めっきを水平な測定台の上に載せ,スピンドルをこれに垂直な方向にして測定する。マイクロメータの測定面は,原則として平面のものを使用する。ダイヤルゲージ及び指針測微器などを用いる場合の測定面は,それぞれの装置における最低限とする。
表9 めっきはく離液及びはく離方法の一例
備考1. 素地がプラスチックの場合には,溶解しにくいので,溶剤の中で軟化後に機械的にひきはがす。
備考2. 下地めっきがある場合には,更にめっきを洗浄し,続いて下地の溶解液に浸せきし,除去する。下地めっきが厚い場合には,直接下地めっきの溶解液に浸せきして,めっきをはく離する。
表10 素地(又は下地)の除去方法の一例
17.4 非破壊法
a) 要旨
測微器を使用して,めっき前の試料の厚さを測定し,次いでめっき後に同一箇所の厚さを測定し,両者の値の差からめっき厚さを求める方法である。
備考 この方法は,試料が破壊できない場合に適している。
b) 装置
装置は,測微器を用いる。その精度を表8に示す。
c) 測定面のめっき防止法
めっきの厚さの測定を容易にする目的で,次の二つの方法で試料の一部をめっき防止(マスキング)することができる。
1) めっき面の測定点に隣接する位置の一部をめっき防止して,めっき面との段差をめっきの厚さとして測定する。
2) 試料の表裏両面のめっきの厚さを合わせて測定することを避けるために,測定面に対する裏面の一部をめっき防止する。
d) 操作
めっき前に試料の表面を清浄にした後,測定点を定め,測微器を用いて,試料がめっきされる面に対して垂直な方向の厚さを測定する。めっき後,再び同じ場所の厚さを測定し,先の測定値との差の絶対値をめっき厚さとする。ただし,試料の表裏両面のめっきを測定した場合には,その値の1/2をもってめっきの厚さとすることができる。
備考 めっき防止する場合には,めっき前に,めっき防止塗料などであらかじめめっき防止の処置をし,めっき後防止に用いた材料をはく離して,隣接するめっき面と,その防止した部分との高さの差を,測微器を用いて測定し,めっきの厚さとする。
17.5 触針走査法
a) 要旨
試料のめっきの一部を溶解はく離するか,又はめっき前に一部をめっき防止(マスキング)して,めっきのない部分を残して段差を作り,表面走査形の測微器の触針を用いて,この表面状態を側面描写し,その記録に表された高さの差からめっきの厚さを求める方法である。
備考 この方法は,平面及びあらかじめ適切な措置を施せば,曲面ないし円筒面においても0.01〜1 000μmの厚さの測定ができる。
b) 装置
装置は,電子的触針装置又は誘電起電力比較計形触針装置を用いる。
1) 電子的触針装置 表面粗さ計として一般に用いられるもので,表面分析機及び側面記録計から成り,その測定範囲は,0.005〜250μmである。
1.1) 触針受感部 球状の先端をもつ円すい形又は四角すい形とする。円すい形の頂角及び四角すい形の対面角は60°又は90°とする。先端曲率半径の標準値は,2μm,5μm,,10μm及び50μmの4種類とし,試料に接触させたときの圧力は,表11に示す値を超えてはならない。
1.2) 走行部 触針受感部を支えて走査させる部分は,基準となる走行状態に従って滑行するか,又はその走行状態が基準表面と照合できるものでなければならない。
1.3) 増幅部 増幅は,めっきの側面の垂直方向での拡大で,100〜100×104倍の間に取る値を標準とし,水平方向の走行距離に対しては,10〜5×103倍の間に取る値を標準とする。
1.4) 記録部 側面描写の記録計は,次の性能をもつものとする。
1.4.1) 水平方向の走行距離 1〜100mm
1.4.2) 厚さ測定範囲 0.005〜250μm
1.4.3) 分解能(測定の厚さの範囲による。) 0.005〜 1μm
1.5) 精度 測定位置は,その精度がめっきの厚さの10%以内又は±0.005μmのいずれか大きい方の範囲にとどまるよう,補正及び操作に注意しなければならない。
注(12) すず,鉛などの軟らかい金属に用いられる値。
2) 誘導起電力比較計形触針装置 触針に誘導起電力比較計を取り付けて段差を記録できるようにしたもので,装置は次による。
2.1) 触針の直径 250μm
2.2) 触針の静圧 0.12 N
2.3) 最高倍率 5×104倍
2.4) 水平方向の走行距離 100mm
2.5) 厚さ測定範囲 1〜1 000μm
2.6) 分解能力(測定の厚さ範囲による。)0.02〜20μm
c) 操作
1) 段差の調製 段差の調製は,次のいずれかによる。
1.1) 試料を取り,めっき面を清浄にした後,素地又は下地を傷めないように,めっきの一部分を図9のようにはく離する(13)。残った他の部分のめっきは,損傷しないようにする。
めっきのはく離方法の一例を表12に示す。
注(13) はく離する部分は,適当なはく離液を用いてはく離するか,電解式のめっき厚さ測定と同様の電解セルを用いてめっき部分をはく離する。
1.2) 試料の一部をあらかじめめっき防止してめっきを行い,その後めっき防止の膜をはく離する。段差の加工後は,試料の腐食が起こらないよう十分に洗浄乾燥する。
図9 段差の試料
表12 めっきはく離方法の一例
2) 校正 装置の校正に当たっては,次の点に留意する。
2.1) 装置は,使用前に校正用の標準試料を用い,装置の特性に従って校正を行う。また,測定中も適当な間隔で校正することが必要である。
2.2) 校正用の標準には,均一な厚さ及び粗さで,かつ,段差量既知の段差のある試料が用いられるが,段差量が小さいものほど測定誤差が大きくなるので注意する必要がある。
2.3) 校正を行う場合,素地の材質,形状が測定精度に影響するので,校正標準の素地と測定試料の素地とは同じか,又は類似の材質でなければならない。
3) 描写の記録及びその測定 試料を装置に確実に取り付け,それぞれの装置に定められた取扱方法に従って操作し,段差の状態を記録紙に描写する。描写の記録から段差の上段と下段それぞれの水準線を求め,二つの線の間の距離をめっきの厚さとする。
段差の境界付近のだれ(14)や盛り上がり(15)及び水準線の傾斜や平行度の不良,平面の荒れによる波状の曲線の乱れなどは,測定の誤差を大きくするので十分注意する。
試料の位置によってめっきの厚さにばらつきが予測されるものは,位置を変えて繰り返し測定を行うことが必要である。
注(14) めっきの硬さ,触針の直径などに注意して,できるだけだれを起こさないようにする。
注(15) 試料にあらかじめめっき防止(マスキング)してから,めっきをして段差を調製した場合には,段差の周辺部に盛り上がりが生じるので,この部分の記録を除去して判定する必要がある。
d) 測定精度に影響を及ぼす因子 次のような因子が,測定精度に影響を及ぼすので注意する。
1) めっき及び素地(又は下地)の材質,形状,特にめっきの厚さ及びそれらの清浄度,温度,平滑度,表面粗さ,硬さ,湾曲度など。
2) 使用装置及びその操作の精度,特に側面描写の記録精度,垂直方向の倍率,適用圧力,触針の直径,振動基準,走行面の精度など。
3) 段差の構成
18. 質量計測によるめっき付着量試験方法
18.1 方法の区分
この方法は,金属又は非金属素地上のめっきの付着量を質量計測によって測定する試験方法で,次のように区分する。
なお,この付着量から,めっきの厚さの平均を求めることができる。
a) めっき破壊質量法
b) めっき破壊分析法
c) 素地破壊法
d) 非破壊法
18.2 めっき破壊質量法
a) 要旨
面積既知の試料を,化学天びんを用いてめっきした試料ごとにその質量をひょう量し,次いでめっきをはく離した後,同一試料をひょう量し,両者の値の差を試料の面積で除して,単位面積当たりの付着量を求める方法である。
参考 単位面積当たりのめっき付着量をそのめっきの密度(比重)で除して,めっきの厚さの平均値とすることができる。
備考1. この方法は,貴金属などのめっきの付着量を求める場合に用いられる。
備考2. 試料の質量が200gを超えるもの及び形状・寸法がひょう量に適さないものには適用できない。また,めっきの厚さが薄いものには誤差が大きくなるので使用できない。
b) 装置,器具
1) 化学天びん(自動はかりを含む。) ひょう量範囲は200g以内,精度は±0.001g以内とする。ただし,ひょう量の許容誤差は,試料のめっき付着量全量の1%以内となるよう試料を採取する(16)。
注(16) めっき付着量の全量が0.1g以上となるよう試料を採取することが必要となる。
2) 面積測定用器具 測定する長さの1/100以内又は±0.1mm以内の精度をもった寸法測定用の器具又
は面積を直接測定できる器具であって,精度±0.1mm2以内のもの。
c) はく離液及びはく離方法
試料の素地(又は下地)の種類によるめっきはく離方法の一例を表13に示す。
d) 操作
1) 適当な質量(17)及び寸法(18)の試料又はその一部分(19)のめっき面の面積を長さの1/100以内又は±0.1mm以内の精度をもった寸法測定器又は±0.1mm以内の精度をもった面積計を用いて正確に測定する。
2) めっき以外の付着物のないよう十分に清浄にして化学天びんを用いて正確にひょう量する。
3) この試料をはく離液に浸せきするか又は液中で電解して,めっきだけをできるだけ完全(20)にはく離し,十分に清浄乾燥して再び先と同様にひょう量し,先の質量からの減量をめっき質量とする。
4) めっき質量を,先に測定した面積で除して単位面積当たりのめっき付着量を求め,mg/dm2で表す(21)。
注(17) 化学天びんのひょう量範囲は,200g以内とする。
注(18) 寸法は,化学天びんのひょう量皿に載せて正確にひょう量の操作が可能な範囲とする。
注(19) 試料の一部分を採取する場合には,めっき面積が正確に測定できるように注意する。
注(20) 素地や下地の溶解をできるだけ避けるように十分に注意する。特に,試料の一部分を採取した場合には,必要なめっき以外が溶解しないように,溶解防止などの処理をする。
注(21) めっき付着量からめっきの厚さを求める場合には,付着量をめっき金属の密度(比重)及び面積で除してめっきの厚さの平均とし,μmで表す。
表13 めっきはく離方法の一例
18.3 めっき破壊分析法
a) 要旨
面積既知のめっき試料を適当なめっきはく離液を用いてめっきを完全に溶解し,次いで溶液中の当該めっき金属の濃度を定量分析してめっきの質量を求め,試料の面積で除して,単位面積当たりの付着量を求める方法である。
参考 めっき付着量から,めっきの厚さの平均値を定めることができる。
備考 この方法は,めっきの厚さが薄くて質量の測定が難しいもの,異種金属の積層のめっき,合金又は複合のめっきなどに用いられる。
b) 装置及び器具
この寸法に用いられる装置は,次による。 定量分析装置(22)分析の許容誤差は,めっき付着量として5%以内となるようにする。
注(22) 一般の化学分析用の器具のほかに,吸光光度分析,分光分析,原子吸光分析などの分析用装置も含まれる。
c) はく離液
試料の素地の種類によるめっきはく離液の一例を,表14に示す。
d) 操作
1) 18.2 d)に従って試料の面積を測定する。
2) めっき以外の付着物がないように十分に清浄した後,適当な量のはく離液を用いて,めっき層を完全に溶解し,溶液及び洗浄水全部をまとめ,最小限必要な容量の全量フラスコに入れ,水を加えて標線まで満たす。
3) 十分に混合した後,金属をそれぞれの一般的な定量分析の手法に従って,この溶液中のめっき金属の濃度を測定する。
4) その濃度 (g/l) に先の全量フラスコの容量 (l) を乗じて,めっきの質量とする。めっきの質量を先に測定した面積で除して,単位面積当たりのめっき付着量とし,mg/dm2で表す(19)。
めっき付着量の許容誤差は,5%以内とする。
表14 めっきはく離液の一例
備考 市販のはく離剤は,分析の障害となることがあるので用いない。
18.4 素地破壊法
a) 要旨 面積既知の試料を素地及び下地のめっき層を溶解などの方法によって除去し,残っためっきの質量をひょう量し,試料の面積で除して単位面積当たりの付着量を求める方法である。
備考 この方法は,貴金属めっきやニッケルめっきなどめっきが素地に比較して化学的に強いものに用いられる。
参考 めっき付着量から,めっきの厚さの平均値を求めることができる。
b) 装置,器具及びその精度 17.3 b)による。
c) 溶解除去液及び溶解除去方法 試料のめっきの種類による素地(又は下地)の溶解除去液及び溶解除去方法の一例を表15に示す。
d) 操作
1) 試料又はその一部分のめっき面の面積を18.2 d)と同様にして正確に測定する。
2) 試料又はその一部を溶解除去液に浸せきし,素地を溶解してめっきを得る。
3) 残っためっきを十分に洗浄乾燥し,化学天びんを用いて正確にひょう量する。
4) 得られためっき質量を先に測定した面積で除して,単位面積当たりのめっき付着量とし,mg/dm2で表す。
備考1. 素地がプラスチックの場合には,溶解しにくいので,溶剤の中で軟化後に機械的にひきはがす。
備考2. 下地めっきがある場合には,更にめっきを洗浄し,続いて下地の溶解液に浸せきし,除去する。下地めっきが厚い場合には,直接下地めっきの溶解液に浸せきして,めっきをはく離する。
表15 素地(又は下地)の除去方法の一例
18.5 非破壊法
a) 要旨 面積既知のめっき前の試料の質量をあらかじめひょう量し,所定のめっきをした後,再びひょう量し,両者の値の差を試料の面積で除して,単位面積当たりの付着量を求める方法である。
備考1. 貴金属などの付着量や,精密部品などの質量・寸法の変化が問題とされる場合などに用いられる。
備考2. 試料のめっき後の質量が200gを超えるもの及び形状・寸法がひょう量に適さないものには適用できない。
参考 めっき付着量からめっきの厚さの平均値を求めることができる。
b) 装置,器具及びその精度 18.2 b)による。
c) 操作
1) 適当な質量(17)及び寸法(18)のめっき前の試料を取り,18.2 d)と同様にめっき面の面積を正確に測定する。
2) めっきに必要な前処理又は下地めっきの終了後に十分に洗浄,乾燥し,化学天びんを用いて正確にひょう量する。
3) 測定結果が最終的に許容誤差を超えない範囲で,活性化及び洗浄を行いめっきする。
4) めっき後,十分に洗浄,乾燥して,再び同様にひょう量し,先に測定した質量を減じてめっきの質量を求める。
5) このめっき質量を先に測定した面積で除して,単位面積当たりのめっき付着量とし,mg/dm2で表す(21)。
出典:JISハンドブック